一般的な電気やディーゼルと、クリーンエネルギーは何が違うの?

水素、電気、クリーンディーゼル、クルマとクリーンエネルギーの関係を知る! #そこが知りたいEVのこと PART4

クルマの燃料と言えばガソリンやディーゼルが当たり前…、だった時代が今や大きく変わりつつある。電気に水素、タクシーなどに使われているLPG(液化石油ガス)、植物などバイオマス(生物資源)を原料とするバイオ燃料などなど。4時限目の今回は、クルマを動かす燃料に注目してみた。

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(1)水素

究極のエコカー。そんなフレーズが、燃料電池車に対して使われることがあります。その根拠は、排出するのが「水だけ」という解釈だからです。燃料電池とは、水素と酸素の化学反応によって電力を得る仕組み。つまり、水素と酸素が結びついた後にできるのが、H2O(水)になります。では、水素はどうやって作るのでしょうか。方法はさまざまあり、アルコールなどの原料から改質して行う方法、大型製鉄所などから出る水素を高純度として精製する方法、また太陽光などによる電力で水を分解して水素を精製する方法などです。

一方で、電気を水素にして貯めるという考え方もあります。電気を貯めるには蓄電池が必要ですが、電気容量が大量になる蓄電池で対応することが大変になります。そこで、先に紹介した太陽光や風力発電で得た電気で水を分解する方法で水素という気体で貯蔵するという方法もあります。コストや手間を踏まえて、クリーンな水素のあり方が問われています。

(2)電気

クリーン電力という表現があります。これまで長い間、電力といえば、石油、石炭、または天然ガスを原料とする火力発電によって生み出すことが一般的でした。こうした化石燃料を原料とする発電ではなく、水力発電や地熱発電など地域の地理的な条件を活用する発電、または風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギーで作る電力を、クリーン電力と呼びます。

さらにクリーン電力について深堀りしてみますと、発電する場所とクリーン電力を使う場所が近いことによる地産地消が理想的だと言われています。そうした、地域社会におけるクリーン電力を使う社会形式を、マイクログリッド(小規模なエネルギー網)と呼びます。スモールグリッドの中に、BEV(電気自動車)が組み込まれることが、クリーンエネルギーを効率的に移動に使う方法のひとつです。ただし、スモールグリッドは社会全体を根本的に見直すことであるため、コストと住民の皆さんの理解が必要となります。

(3)クリーンディーゼル

「ディーゼル車は社会にとって有害だ」。故石原慎太郎氏が東京都知事の時、ディーゼル車から排出される微粒子をつめたペットボトルを振った、ディーゼル車規制の記者会見の場面を覚えている方も多いと思います。これを機に国内の乗用ディーゼル車は次々と姿を消しました。一方で、次世代のクリーンディーゼルを目指して、日産とマツダが研究開発を続け、なかでも2012年に登場したマツダのSKYACTIV技術はディーゼルの常識を覆す発想だとしてグローバルで注目が集まりました。

ただし、ディーゼル乗用車の普及率が高かった欧州市場では近年、欧州委員会(EC)の欧州グリーンディール政策の強い影響力により、BEV(電気自動車)シフトが鮮明になり、クリーンディーゼルの生産計画が大きく見直されています。こうした状況で、マツダは有機物を使ったバイオマス・ディーゼル燃料の研究開発を産学官連携で進めており、次世代クリーンディーゼル量産に向けた準備に入っています。

(4)アルコール

日本ではあまり耳にしなくなったアルコール燃料。実は、南米ブラジルでは庶民にとって欠かせないクルマの燃料になっています。対応するクルマはE100と呼ばれます。Eはアルコールの種類のひとつであるエタノールのこと。サンパウロなど大都市圏の周辺のトウモロコシを原料として精製されます。このエタノールをガソリンと混ぜて使うのです。

そもそもブラジルでは70年代後半からエタノールのみで動くクルマを国策として研究開発してきました。その後、ガソリンとの混合燃料が普及します。混合の比率は、ガソリンとエタノールそれぞれの比率が0から100%まで対応するという点が面白いところですが、50/50で入れる人が多いようです。E100対応エンジンは、エンジン始動時にエタノールのみを噴射する機能が必要なため、エタノール専用の小さな燃料タンクが装着されているのが特長です。このほかアメリカでE85がありますが、これはエタノール含有率85%で固定されています。

著者PROFILE●桃田健史
1962年8月、東京生まれ。日米を拠点に、世界自動車産業をメインに取材執筆活動を行う。インディカー、NASCARなどレーシングドライバーとしての経歴を活かし、レース番組の解説及び海外モーターショーなどのテレビ解説も務める。日本自動車ジャーナリスト協会会員。

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[スタイルワゴン・ドレスアップナビ編集部]

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