充電施設がないマンションではBEVを断念するしかない!? これからの課題も知っておこう!

集合住宅や立体駐車場で新たな課題も!? BEVの充電プランについて、日産を例に解説します!【後編】 #そこが知りたいEVのことPART 7

日産サクラや三菱eK クロス EVが好調な出足を見せている。となれば、今後はお出かけ先での急速充電器の混雑が心配。メーカーは自宅での充電をススメているが、家庭での充電環境は、まだ十分とはいえない。今回は、充電プランについて解説します。

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再生可能エネルギー電力メニュー

充電器タイプに加えて、日産は、MCリテールエナジー、出光興産、ENEOS、LoooP、ミツウロコなど、新電力や大手インフラ事業者が提供する再生可能エネルギー100%電力プランを推奨しています。これらの申込サイトでは、日産が参加しているキャンペーンコードが使えます。

集合住宅ではどうなるの?

先日、テレビ朝日「報道ステーション」で、筆者がBEV充電についてコメントした際、同番組のキャスターが「実は、私もBEV購入を考えたことがあったのですが、自宅マンションの管理組合での協議がまとまらずBEV購入を断念した」というエピソードを紹介しました。こうした集合住宅問題は全国各地に存在します。マンションの敷地や駐車場施設はマンション住民が共同で管理する規定である場合が多いため、一部住民向けに普通充電器を常設するコストを管理組合として捻出することに対し「住民負担として公平性が損なわれる」として反対意見を唱える人が少なくないのが実情です。

そうした中、最近ベンチャー企業が新しいビジネスモデルを提案しています。それは充電機器の設置についてのすべてのコストを企業側が負担し、スマホなどで利用者確認をすることで簡単に充電できるシステムです。こうした企業にとっての収益は、システム全体のマネージメント費用から捻出します。これは利用者から直接受け取るため管理組合には費用の負担がないという考え方です。使用した電気量に応じた電気代は、これら企業から管理組合側に返金される仕組みです。

この手のビジネスを手がけるベンチャー企業はすでに複数存在します。そのうちの1社の関係者に直接聞いたところ「全国各地から問い合わせが多く、対応でとても忙しい」という状況だと言います。今後、集合住宅充電の課題解決が進むことを期待したいと思います。

立体駐車場で新たなる課題!?

集合住宅での普通充電で、これまであまり認識されてこなかった課題が浮彫りになってきました。それが立体駐車場での問題です。同領域の日本市場で大きなシェアを持つIHI運搬機械が直面している問題だというのです。同社関係者によりますと、同社でタワーパーキングと呼ぶ立体駐車場では、世の中でのEVシフトに対応するため、2022年4月から販売を始めたのが「省電力・EV全台充電システム」です。

全台とは駐車しているすべてのクルマを置く駐車台を指します。つまり、駐車している間に普通充電で駐車している全車を満充電してしまうのです。ただし、一般的なタワーパーキングである32台全部を同時に充電するとなると、1台4kWでも128kWという普通充電としてはかなり大きな出力が必要となります。そこで考え出されたのが、例えば4台ずつ分けて充電する方法です。人によっては週末しかクルマを使わない場合もあるでしょうからから、まずは日常的に使用する人のクルマから充電するなど、さまざまなアレンジで充電に対応します。

ところが、想定外の問題が出てきました。それは車幅に関してです。最近のクルマは車幅1800mm超えも珍しくなく、さらに充電口の蓋が車体の横についているクルマで実質的な車幅がさらに広がることになります。そうなると充電装置が車台からはみ出すケースがあるのです。そのため、同社では充電不可能なモデルを自主的に調べてリスト化していると言います。さまざまな課題が出てくるものです。

MINIファミリー初のクロスオーバーBEV

MINI Concept Aceman(コンセプト・エースマン)は、MINIファミリー初のクロスオーバーBEVであり、3ドアHBとクロスオーバーの間を埋めるプレミアム・スモール・コンパクト・セグメント向けのコンセプトモデルだ。全長4.05×全幅1.99×全高1.59mというサイズを持つ5人乗りで、4つのドアとリアゲートを備えたショートオーバーハングの2BOXスタイル。コンセプトモデルながらそのエクステリアは伝統的なデザインを残しながらもクロスオーバーモデルの特徴と、フロントグリルなどにひと目でBEVとわかるアレンジが加えられている。パワートレーンは未発表だが、8月23日、ケルンで開催される「ゲームズコム 2022」で一般公開される予定だ。

カートリッジ式バッテリーで充電時間のロスを低減

トヨタやスズキ、ダイハツなどの5社によるCJPT(コマーシャル・ジャパン・パートナーシップ・テクノロジーズ)とヤマト運輸では、「カートリッジ式バッテリーの規格化・実用化に向けた検討を開始する」と7月27日に発表した。着脱・可搬型の電池にすることで充電時間を削減できることをはじめ、充電施設の電力ピークの低減などが可能になると期待される。商用BEVのネックになる長い充電時間によるクルマや荷物が止まる時間を無くすことができ。スムーズな物流が確保される。またCJPTではBEV軽バンからBEV小型トラックまでカートリッジ式バッテリーや充電システムを共通化することで商用BEVのコスト低減や普及を図っていくという。

著者PROFILE●桃田健史
1962年8月、東京生まれ。日米を拠点に、世界自動車産業をメインに取材執筆活動を行う。インディカー、NASCARなどレーシングドライバーとしての経歴を活かし、レース番組の解説及び海外モーターショーなどのテレビ解説も務める。日本自動車ジャーナリスト協会会員。

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[スタイルワゴン・ドレスアップナビ編集部]

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