世界のBEV分野をリードしてきたリーフをはじめ、現在BEV3モデルを展開中の日産! 電動化モデルを総点検  

BEVだけでなくe-POWERもやっぱり気になる! 日産の電動化モデルシリーズ総点検  #そこが知りたいEVのこと PART9(4)

現在3モデルのBEVを販売する日産ですが、e-POWER車にも注目します。

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【BEV】ARIYA

日産が満を持して投入した上級BEVです。2019年10月の第46回東京モーターショーで、コンセプトモデルとして登場。「日産ブランドを再定義し、日産を新しい時代に導きます」と紹介されました。

時はまさに、コネクテッド・自動運転・シェアリングなどの新サービス・電動化というCASE(ケース)によって自動車産業全体が大きな転換期を迎えていました。さらに、日産はゴーン問題の余波により、会社全体を立て直さなければならない時期でもありました。そうしたさまざまな時代背景の下で、日産がアリアにかける思いは並々ならぬものでした。

そのため、「コンセプトモデルだが、ほぼ量産の形」(デザイン担当者)と言い切るほど、先進的かつ日本の美を感じさせる大胆な外観や、「ラウンジのような空間」というインテリアなど、日産のデザイン技術の総力を結集した形に、アリア量産車を仕上げていったのです。

さらに、初代リーフ登場以来、10年間以上に渡り蓄積されたBEV関連技術を応用し、まったく新しいプラットフォームを採用。そして、車体の前後にモーターを備えて四輪それぞれでの駆動力を巧みに制御するe-4ORCE(イーフォース)を初採用しました。自動運転技術をベースとした、運転支援システム・プロパイロット2.0も標準装備としています。

現在発売されているB6グレードでは、FFベースの2WDで電気容量は66kWh。満充電での航続距離は470km。今後、e-4ORCEと2WDも含めた90kWhバッテリーパック仕様が市場導入される予定です。

【BEV】SAKURA

日産が「軽の可能性を再定義するゲームチェンジャー」と呼ぶ新作BEV。軽自動車の常識とBEVの常識それぞれ大きく変えようという大胆な試みです。つまり、日本の社会状況や多くの人の生活パターンにマッチする形で、さらにリーズナブルに購入できて維持費も安いことを狙ったということです。

全長3395㎜×全幅1475㎜×全高1655㎜、ホイールベースが2495㎜。室内空間を犠牲にしないようなバッテリーパック形状で床下に電池容量20kWhを確保しています。 

モーターの出力は、軽の「デイズターボ」と同じ47kWですが、最大トルクはデイズターボの約2倍となる195Nmなので、出足が素早く力強く、さらに滑らかな加速感。しかも、車内の静粛性が高いことに驚きます。また、ワンべダル操作で加減速がコントロールできるe-Pedal Stepの使い勝手も好評です。満充電での航続距離は180km。ベースグレードのSの価格は233万3100円。国や自治体の購入補助金を利用すると、実質購入費用は200万円を切ることになります。

【BEV】LEAF

世界のBEV分野をリードしてきた、日産史上で極めて重要なモデルです。筆者は2010年の初代登場時、デザインや技術担当者らとさまざまなシーンで意見交換しました。そのなかで「これまでは特殊なクルマというイメージが強かったBEVを“普通のクルマ”にしたい」という日産の思いが具現化されたことに感銘を受けました。それほどまでに、大手メーカーによるBEVの大量生産にはさまざまなハードルがあったのです。

BEVのキモとなる電池の技術についても初代リーフから2代目リーフにかけて、段階的に改良されていきました。また、走行性能についてもコーナーリング中のブレーキ制御により、雪道でも走行安定性が向上したことが実感できます。電気容量はGとXグレードが40kWh(航続距離322km)、また上級グレードの「e+G」では60kWh(450km)となっています。

リーフは、日産が提唱する「インテリジェント・モビリティ」という考え方を多くの人に分かりやすく紹介する、日産BEVの真髄なのです。

【e-POWER】X-TRAIL

日産がリーフを軸足として開発してきたBEV技術を応用した日産独自のパワートレインです。エンジンを発電機として使い、そこで作った電気でモーターを駆動させるという仕組みです。一般的にはシリーズハイブリッドと呼ばれる方式で、最初に導入されたe-POWERは2代目ノートのマイナーチェンジで2016年から一部のグレードで導入されました。使用するエンジンは排気量1.2Lの直列3気筒ガソリンエンジンで、「セレナ」にも採用されています。

2020年6月にはコンパクトSUV「キックス」向けに、大幅改良した第2世代e-POWERを搭載。次いで登場した新型ノートや新モデル「オーラ」でも第2世代e-POWERのみを採用しています。

そして、2022年7月に日本仕様が発表されたSUV「エクストレイル」では、排気量を1.5Lとしてターボチャージャーを装着、さらに圧縮比が可変するVC機能を兼ね備えた、進化した第2世代e-POWERを投入しました。今後、1.5Lのe-POWER搭載車が増えていく可能性は高くなりそうです。

BEVの課題●電気の作り方

カーボンニュートラルを考えた、電気の作り方はどうなるのか。BEVでは、カーボンニュートラルというキーワードが必ずといってよいほど出てきます。地球全体で進んでいるとされる温暖化の原因として、二酸化炭素などの温室効果ガスの影響が指摘されています。そこで、国連を主体として世界の国や地域がCOPなどの会議体でさまざまな話し合いが行われているところです。理論的には、社会活動の中で発生する二酸化炭素の量を抑制する一方で、二酸化炭素を吸収する森林などの伐採を抑えたり植林するなどして、地球全体で二酸化炭素の排出量を相殺(ニュートラルに)するという考え方です。

具体的には、BEVや燃料電池車のような、排気ガスが出ないZEV(ゼロエミッションビークル)をグローバルで普及させるため、国や地域で法律としてZEVを義務化する動きがあります。

こうしたカーボンニュートラルの議論の中でよく出てくるのがLCA(ライフ・サイクル・アセスメント)です。これはBEVなどの完成品だけではなく。その部品や原料、さらに輸送過程など完成品となるまで、さらに使用されて廃棄されるまで、といったBEVの一生を見据えてカーボンニュートラルをどのように実現するのかということです。

その上で、電気の作り方についてもLCAが深く絡んでくるのは当然でしょう。原油や天然ガスなど化石由来の火力発電ではなく、太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギーの活用が重要になってきます。また、水素については、例えばオーストラリアでの埋蔵量が豊富な褐炭(かったん)から水素を精製し急速冷蔵して液化水素として日本に輸送する水素火力発電や、水素を水素燃料車や燃料電池車で使うという方法についても、国が民間企業と連携した大規模な実証試験が始まっているところです。

今後、原子力発電所の再稼働の問題を含め、エネルギーのベストミックスの議論とBEV普及のバランスについて、自動車ユーザーの関心がさらに高まるでしょう。

BEVの課題●充電インフラ

BEVと充電インフラは、鶏と卵。そんな表現がこれまで、長きに渡り使われてきました。

BEVの普及を進めるためには、充電インフラの数が増えることが必要で、その逆の発想もアリだということです。

地図情報分野の大手であるゼンリンによりますと、2021年2月時点で、全国にある自宅や事業所以外での充電インフラ数は約3万基あると発表しています。そのうち、交流6kWなどで行う普通充電器が2万1700基、また直流で行う急速充電器が7950基あるといいます。

日系メーカーの場合、戸建て住宅での普通充電を「毎日の生活の中でルーティーン化」し、週末などの少し遠出の時には急速充電を計画的に使うことを推奨しています。

また、課題となっているのは都心部での充電インフラ問題です。多くの場合、充電器が有料駐車場内に設置されているため、充電するために駐車料金も発生してしまうのです。

そのほか、マンションなど共同住宅の場合、BEVを所有する一部の住民だけのために充電器を設置することに対して管理組合での了承を得ることが難しい場合もあります。こうした状況を解決するため、比較的導入のコストが低い電圧200Vの専用コンセントをスマートフォンのアプリを使って利用できるシステムなどを、ベンチャー企業などが考案しているところです。

一方で、欧州メーカーの中には日本市場で150kWという高電力型の急速充電器を自社のディーラー網の中で普及させる動きも出てきています。

その筆頭はドイツのアウディで、同じくフォルクスワーゲングループ傘下のポルシェとプレミアム・チャージング・アライアンスを組んで、2024年までに全国で50基の150kW急速充電器を備えると発表しています。

充電インフラ大手のeモビリティパワーによりますと、日本でもっとも多く使われている自宅や事業所以外の充電設置場所は、カーディーラー、高速道路SA/PA、コンビニ、道の駅という順です。今後は日系メーカー各社ディーラーでもさらに、高出力型充電器の設置が進みそうです。

著者PROFILE●桃田健史
1962年8月、東京生まれ。日米を拠点に、世界自動車産業をメインに取材執筆活動を行う。インディカー、NASCARなどレーシングドライバーとしての経歴を活かし、レース番組の解説及び海外モーターショーなどのテレビ解説も務める。日本自動車ジャーナリスト協会会員。

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[スタイルワゴン・ドレスアップナビ編集部]

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