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サスペンション・ウォッチング | 日産GT-R(MY2011)普段はFR、牙をむくとAWD

  • 2020/10/01
  • Motor Fan illustrated編集部
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普段はFR、旋回後期などではAWD。ユニークな四輪駆動の使い方はR32の時代から引き継がれる。高出力を細大洩らさず使い切るための懸架装置を眺める。
STORY:國政久郎(KUNIMASA Hisao) TEXT:松田勇治(MATSUDA Yuji)

アウディ・クワトロが道を切り拓いた「ターボ+4WD」によるロードカーのパフォーマンス向上策には、多くの自動車メーカーが追随し、さらなる高みを目指して改善が進められた。特に競技の世界では先鋭化が進み、その過程で得られたノウハウは一般市販車にも応用、ハイパフォーマンスカーを作る上での定石のひとつとなっている。1989年に市場投入されたBNR32型スカイラインGT-Rも、そんな流れの中にあった1台だ。

ただし、スカイラインGT-Rが採用した4WDシステムは、他車とは異なった発想だった。前後の駆動力配分は0対100、つまり後輪駆動を基本として、状況に応じて50対50までリニアに配分する。トルク配分比を変更する仕組みには、当初は油圧制御のクラッチを、途中から湿式多板クラッチと電磁石を使った電子制御式カップリングを採用し、R35型でも踏襲する。

このような4WDシステムを採用した理由は、コーナーへの進入からクリッピングポイントにかけて、フロントタイヤの能力をすべて旋回に使うことだ。だから、その行程では前輪には駆動力をかけない。クリッピングポイントを過ぎたら、大きなトラクションを効率良く路面へ伝えるために前輪でも駆動する。もしくは、リヤタイヤの能力の限界付近で車体横すべり角が大きくなりすぎたら、フロントから引っ張ることで車体を安定方向に導く。低μ路面でのトラクション確保を前提としなければ、4WDに期待される役割は十分に満たせるだろう。

そして注目すべきは、歴代のスカイラインGT-Rとは異なり、前後で異なるサイズのタイヤを採用したことだ。歴代の標準車のタイヤサイズは、R32型が225/50-16、R33型が245/45-17、R34型は245/40-18だった。4WDシステムに不具合が出るので、前後異サイズはご法度と言われていたが、さすがに後輪駆動を基本に530psという大出力を路面に伝えるためには、リヤタイヤをサイズアップせざるを得なかったと考えるのが合理的だろう。「FRとして当然の姿」に戻ったわけだ。

実車をリフトアップして観察すると、日産GT-Rはやはり「FR」基本なのだと実感させられる点があった。典型的なのはアンチロールバーの設定だ。フロントは極端に太く、中空構造ながら肉厚もかなりのものだ。対してリヤは中実構造とはいえ非常に細く、ごくわずかなアンチロール効果しか得られない。フロントはロールを抑えて挙動の安定性を高め、リヤは早い段階からしっかり動かしてトラクションを確保するという、FRのハイパワー車では定石の構成だ。歴代のGT-Rでは、ここまで極端な差は付いていなかった。つまりR35型GT-Rは、車両運動における前輪ならびに4WDシステムの使い方について、従来とは根本から発想を変えている。

スポーツカーにとって「制御」は諸刃の剣だ。さまざまな制御技術の進歩によって、車両運動においても「なんとかなってしまう」ケースが増えた。ただし、それは「いったん制御が入ったら、ドライバーの思ったようにクルマが動かない」ことをも意味している。高出力の代償として「意のままには操れない」のだとしたら、まさに本末転倒だ。その意味で、FRという原点に回帰し、4WDは最低限の介入に留めたGT-Rの構成は「正論」と言える。

試乗してみても、挙動はFRそのものだ。普通に運転している限りでは、前輪に駆動力が伝わっていないのだから当然なのだが、もはや4WDはウェット路面やサーキット走行時などの「保険」でしかないように思えた。しかし、GT-Rが「530psのFR車」なのだとしたら、その構成には少々疑問もある。

フロントにはV36型スカイラインなどFR-Lプラットフォーム採用車との共通性が多く見られるが、重量と速度域が高まることへの対応は手堅くなされている印象だ。一方のリヤは完全に新規設計であり、「究極の精度」と「軽量化」をテーマとして開発されたと聞いている。

象徴的なのがクロスメンバーだ。発想と構造の刷新によって、通常は肉厚3.6~4.0mm程度のパイプを使うところを1.6mmに低減し、軽量化とコスト低減に貢献しているという。また、サスを構成するリンク類もアッパーアーム以外は中空構造品だ。もちろん、設計上は問題なしと判断しての措置だろうが、車重1700kg超で出力500ps超の後輪駆動車、かつ20インチのタイヤ/ホイールを支える脚周りとして、本当にいかなる場合でも必要な剛性が確保できているのか、どうしても疑問が生じる。たしかに軽量化は重要な課題だが、「骨格」や「基礎体力」レベルにおいて、もう一段上の「説得力」が欲しい。

フロントサスペンション(マルチリンク)

FR-Lプラットフォーム(FMパッケージ)用コンポーネンツをベースに、クロスメンバーなど専用開発品によって強度・剛性ならびに部品配置の精度を高めた構成。ロワーアーム後側ピボットにアルミ引き抜き材のブラケットを使っている点や、ステアリングラックケースのマウントを左右対称位置とし、また前後2点ずつの計4点で留めている点など、マウント部の構造と剛性にも配慮していることが見て取れる。「動かしたくないもの、動かしたくない方向へは動かさない」という、ハンドリングへのこだわりが感じられる。

ダンパーはビルシュタインと共同開発のモード設定型電子制御式減衰力調整機構「ダンプトロニック」を備える。モードは「R」「NORMAL」「COMFORT」の3種類で、センターコンソール上のスイッチ操作によって選択。セッティングのベースは最も減衰力の高いRモード。NORMALとCOMFORTでは、横方向加速度、操舵角、エンジン回転数など8種類のパラメーターをもとに車両の状態を判断し、状況に応じて最適な減衰力に連続可変制御を行なうことで車体の安定性を高め、快適性の確保にも寄与する。

アッパーアームは微妙な3D形状。スカイラインやZなど、FR-Lプラットフォーム採用車との間で特別な相違点は見当たらない。ロワーアームは変形のL字型で、やや複雑な3D構成。これもV36型スカイラインなどとの大きな相違点は見当たらない。ピボットの方向は前側が路面に水平、後側が垂直(いわゆる「目玉」)。アーム上にダンパーのロワー側マウント点を設けているが、場所の関係でレバー比が約0.7程度に留まり、入力効率がスポイルされている点が気になる。アンチロールバーは目を引く大径の中空構造品。フロントのロール剛性を高めておき、コーナリングの早い段階から「舵の効き」を確保する、との意図がうかがえる。

ブレーキはブレンボとの共同開発品。ローターは外径380mm、内径243mmの2ピース・フルフローティング構造で、ベルはアルミ製。キャリパーはアルミのモノブロック構造で、ピストン径が入口側から30mm+34mm+36mmの6ポット式。 

フロントクロスメンバー

クロスメンバーはスチールのプレス+溶接構造。赤く着彩されているU字型の部分がメインパイプで、前方の左右連結部がセンタークロスメンバー。車体中心線から後方に向けてA字型配置となっているのがサブパイプ。車体前方のマウントをメインパイプと一体構造とし、またサブパイプはメインパイプを貫通しながら後端のマウントまで直線的に通す構成で、結合剛性を高めている。

リヤサスペンション(マルチリンク)

トランスアクスルレイアウトを採用したため、リヤ周りは完全に新規開発となった。フロントと同様、パイプと鋼板を巧みに組み合わせて構成するクロスメンバーが特徴的。非常に複雑な形状と構造ながら、ボディ取り付け点から各リンクの取り付け点までの位置公差が±0.1mmという高い精度を保って製造されており、各パーツが計算通りに力を受けることで、リンク類の動きやホイールの位置決めへの悪影響や作動中のフリクションを大きく低減している。

V36型スカイラインなど、2世代目までのFR-Lプラットフォーム(FMパッケージ)採用車種はコイルスプリングをロワーアーム上に置く別マウント式だったが、GT-Rではコイルオーバー式に変更。ちなみに、後に登場したY51型フーガもコイルオーバー式を採用している。リンク配置の見直し、システム全体の軽量化、作動行程のフリクション低減などが目的と推測される。

アッパーアームはA字型アームの△部分にも肉を盛った構成。FR-Lプラットフォーム採用車と大きな相違点は見当たらない。アンチロールバーは中実構造。このサイズでは、ロール抑制効果はほとんど期待できない。左右輪間に最低限の連結を保つことと、バンプ時の共振低減といった程度の役割がねらいか。

ローターは外径380mm、内径267mmの2ピース・フルフローティング構造で、ベルはアルミ製。キャリパーはアルミのモノブロック構造で、ピストン径が入口側から30mm+30mmの4ポット式。

リヤクロスメンバー

クロスメンバーは、リヤもスチールのプレス+溶接構造。トランスアクスルレイアウト採用のため、専用に新規設計されたもの。赤く着彩されている部分がメインパイプで、上下2段構造となっている。左右間は前端と後端を角断面のクロスメンバーで強固に橋渡しする構成。パイプ部の肉厚は1.6mmと非常に薄いが、上下2段構えの立体構造で入力を分散する設計などによって必要な剛性を確保しつつ、軽量化に貢献している。リヤもマウントは6点を確保し、ボディ側との結合剛性を高めることで、システム全体の位置決め精度向上を図っている。

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