KOBELCOグループ:液体水素利活用システム 「ハイブリッド型水素ガス供給システム」の実証試験開始について

KOBELCOグループは、2050年のカーボンニュートラル達成に向け、「ハイブリッド型水素ガス供給システム」の実証試験を2023年3月頃からKOBELCOの高砂製作所(兵庫県高砂市)内で実施する予定としている。尚、本システム実証の一部は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による「水素社会構築技術開発事業」における調査委託および助成事業に採択されている。※1

KOBELCOグループが提案するハイブリッド型水素ガス供給システムは、中小規模の事業者様にとって導入のカギとなる「安定かつ安価な水素づくり」に対するソリューションを提供するもので、同社グループが持つ次の三つの製品・技術より構成されている。

① 機械事業部門の気化器※2の要素技術を活かし開発中の極低温液化水素気化器
② 神鋼環境ソリューションの再生可能エネルギーを活用した水電解式水素発生装置※3
③ エンジニアリング事業部門の技術資源がベースとなる“創る・使う”を監視制御する運転マネジメント※4

具体的には、水素利活用に向け、液化水素気化プロセスと再生可能エネルギーを活用した水電解式水素発生装置をパラレル配置したハイブリッド型とすることで、コストミニマイズと再生可能エネルギー特有の供給不安定性の解消の両立を図る。また、運転状況が時々刻々と変化する工業炉やボイラー等の水素使用量(使う)を遠隔監視し、常に安定的かつ効率的な水素供給となるようにハイブリッド型水素ガス供給装置を最適制御(創る)させることも可能にする。加えて、液化水素の気化時に発生する冷熱については、工場内の製造設備の冷却や空調、ヒートポンプ等に利用するなど、顧客のプロセス効率向上・省エネルギー化にも対応可能。

実証後は、水素ガス中規模利活用のモデルケースとなるKOBELCO高砂製作所で以下の項目に取り組む。

① 各設備のスケールアップと製品・システムの改良・開発
② 水素ユーザーのバリエーションの追加検討
③「創る」側と「使う」側、両サイドの課題に対するKOBELCOらしい両睨みの最適ソリューションの創出・提供

そして、KOBELCOグループを含めた各事業者の水素利活用の拡大による脱炭素化への移行(水素社会へのトランジション)に貢献していく。特に、安価・大量のグリーン水素が流通するまでのトランジション期間においては、液化水素と小規模な地産型水素(小規模な再生可能電力を用いた水電解による水素)の併用を促すことが重要である。

今回の実証試験は、機械事業部門とエンジニアリング事業部門の経営資源の相互活用並びに神鋼環境ソリューションとの連携により、水素社会の実現に向けたソリューションを提供するものである。

中間媒体式気化器(IFV)
水電解式水素発生装置(HHOG)

※1:新エネルギー・産業技術総合開発機構 「水素社会構築技術開発事業」採択案件
※2:中間媒体式気化器(IFV:Intermediate Fluid Vaporizer)
気化熱源として海水や工業用水を用い、プロパンなどの中間媒体を介して、液化天然ガス(LNG)などの低温流体を気化させるタイプの気化器。気化熱源に海水を用いる場合は、浸食や腐食に強いチタンを伝熱管に採用し、大量の砂や重金属イオンを含んだ悪質な海水にも対応できる点が特長。中間媒体を用いることで、気化熱源の工業用水の凍結を避けられ、LNGなどの低温流体の冷熱の有効活用にも適している。
※3:水電解式水素発生装置(HHOG:High-purity Hydrogen Oxygen Generator)
固体高分子電解質膜(PEM)を用いて水道水から高純度の水素ガスをオンサイトで供給する装置。
※4:運転マネジメントシステム
水電解式水素発生系統、液体水素気化系統のプロセス制御システムならびに系統連携制御システムに加えて、需要変動に対して最適コストでの水素提供を実現する水素需要予測システムにより構成される。

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