【海外技術情報】フラウンホーファー研究所:産業検査プロセスの品質を新しいレベルに引き上げる『AutoInspect』を発表

In the AutoInspect demonstrator, the car body is transported to the inspection stations on a conveyor system. The picture shows the deflectometry portal: The software can detect surface defects based on the reflection of the striped patterns displayed on the monitors.
工業生産プロセスの品質は、センサーベースの多数の個別検査によって保証されており、これにより大量のデータが生成される。しかしこれまで、個々のセンサーからの情報は、個別にしか見られていなかった。フラウンホーファー研究所が発表する『AutoInspect』ソリューションは、これらのデータをリンクして統合された概要を作成することで、インテリジェントな評価と隠れた障害の検出が可能になる。これにより効率が向上し、最終的に製品の品質が向上する。
TEXT:川島礼二郎(KAWASHIMA Reijiro)

 品質検査は、工業生産において不可欠な工程である。世界中の工場の検査ステーションのセンサーが、テスト対象の特性と品質特性を測定している。自動車製造では、ギャップの寸法、塗装の品質、特定の部品の強度など、があげられる。センサーベースで、あるいは手作業により大量のデータと測定値が生成され、測定された特性に関する情報が提供されます。ただし一つ問題があった。これらのデータは通常、それぞれが独立して保存されていた。

 そこでフラウンホーファー研究所の研究者チームは、さまざまな検査結果を一つのシステムに組み合わせ、すべての結果をリンクするソリューションである『AutoInspect』を開発した。それは、様々なセンサー、インターフェイス、ソフトウェアを組み合わせて、簡単に適応できるオール・イン・ワン・ソリューションである。『AutoInspect』プロジェクトマネージャーのヘニング・シュルテ氏は、以下のように述べた。

「センサーベースの検査ポイントで生成されたデータ群は、隠された情報の宝庫です。それらをリンクすることで、この宝物を発掘することができます」

『AutoInspect』は統合された概要を提供して、関連するすべての検査データと測定値のインテリジェントな評価を可能にする。そして製造工程でこれまで認識されていなかった相互関係が明らかになる。これにより障害の原因を特定しやすくなり、生産プロセス全体をより効率的にする。そして最終的には、製品品質をも向上させる。

センサーデータと位置情報

『AutoInspect』のハイライトは、検査結果をそれぞれの位置情報と組み合わせる機能である。最初のステップとして、製品の既存のCADモデルに基づいてテストオブジェクトの3Dメッシュを作成する。ただしソフトウェアでのこの描写は、オブジェクトの従来の3DCGよりも遥かに進んでいる。それはすべての測定値がこの3Dメッシュを参照して、つまりテストオブジェクト上の測定位置の正確な位置とともに保存されるためである。これにより関連する位置情報を含むすべての関連センサーデータに加えて、使用される材料のバッチ番号や検査時間などのメタ情報を含むデジタルツインが作成される。

 こうしてすべての検査データの統合された概要が作成され、それは生産プロセス全体をカバーしている。たとえば、板金の最初のクランプからシートの成形、そして様々な接着および溶接プロセスから、塗装まで、である。『AutoInspect』ソフトウェアで測定値をリンクすることにより、たとえば、前の加工ステップで特定の温度制限値を超えた場合に、特定のポイントでギャップ寸法が常に大きすぎることを識別できるようになった。製造現場の検査チームは、このヒントをフォローアップして原因を分析して、最終的に問題を修正することができる。これは3Dメッシュの変更されたデータと測定値に反映される。

「このようにして、プロセス全体を通じてリンクされたすべての検査データをインテリジェントに分析できるようにすることで、産業界のユーザーが複雑な生産品質の問題をよりよく理解し、より迅速に把握できるように支援します」と、シュルテ氏が語った。

センサーの標準インターフェイス

 フラウンホーファー研究所の研究者チームは、3Dスキャン、デフレクトメトリ、エリプソメトリー用のセンサーを使用して、開発およびテストを行った。たとえば、エリプソメトリーは、反射光の偏光状態を記録することにより、表面コーティングの厚さを決定できる。デフレクトメトリは、塗装された板金などの鏡面あるいは光沢のある表面の形状を測定および検査する。これらの測定技術のさらなる開発は、フラウンホーファーでの別の研究対象となっている。

 このフラウンホーファー研究所が開発したソリューションは、特定のセンサーに関連付けられておらず、オープンOPC UA(OPCユニファイドアーキテクチャ)インターフェイスに依存している。つまり、OPCUAと互換性のあるセンサーや測定デバイスは、プラグアンドプレイを介して『AutoInspect』に簡単に統合できる。さらに、拡張現実の助けを借りて、作業者が手動検査を実行することも可能である。

機械や車両の検査に最適

 測定結果の評価は、現在の製造工程や完成したばかりの製造工程に限定されない。『AutoInspect』内の検査履歴は、現在のバッチまたは製造プロセスを超えて分析できる。これによりメンテナンスや検査の間隔を超えて、機械や車両の製品ライフサイクルを観察できる。たとえば、最新の測定値をよりよく理解するために、ICEトレインのシャーシとホイールタイヤを検査する際に、過去の検査における測定データを考慮に入れることができる。

 特に安全関連のコンポーネントを検査する場合、『AutoInspect』のすべてのデータを含むすべてのメンテナンスサイクルを考慮することができるため、欠陥の原因をより迅速に追跡できる。AIベースのデータ分析を使用して問題を事前に検出することもでき、それぞれの機械またはプラントの安全性を迅速に回復できる。

著者プロフィール

川島礼二郎 近影

川島礼二郎

1973年神奈川県生まれ。大学卒業後、青年海外協力隊員としてケニアに赴任。帰国後、二輪車専門誌、機械系…