三菱重工:ジョージア・パワー、米国電力研究所と共に、世界最大の水素燃料混焼実証

三菱重工グループの米国現地法人である三菱パワーアメリカ(Mitsubishi Power Americas, Inc.)は今般、米国の電力会社であるジョージア・パワー(Georgia Power)および電力研究所(The Electric Power Research Institute:EPRI)とともに、ジョージア州スミュルナ(Smyrna)市にあるマクドノフ・アトキンソン(McDonough-Atkinson)発電所で、M501G形天然ガス焚きガスタービンを使い、部分負荷および全負荷の両条件下において、水素と天然ガスの混合燃料による燃焼実証試験に成功した。

この一連の実証試験は、高効率・大型ガスタービン・コンバインドサイクル(GTCC)発電設備で初めて行われた20%(注)の水素混合燃料による燃焼実証であり、この種の試験としては史上最大規模のものとなる。20%の水素混合燃料を使うことで、天然ガス燃焼時に比べてCO2排出量は約7%削減される。

ジョージア・パワーは、サザン・カンパニー(Southern Company)グループ最大の電力子会社で、2007年と比較して既に60%以上のCO2排出削減を実現している。今回の画期的な実証試験には、未来のエネルギーグリッドを構築して運営発電施設全体のCO2排出削減を強化する取り組みの一環として、三菱重工との協力により臨んだものである。

マクドノフ・アトキンソン発電所は、州都アトランタの中心街から約15kmの距離に位置し、過去80年あまりにわたり電力を供給してきた。2012年には天然ガス焚きに全面転換され、170万世帯に電力供給できるように拡張されている。現在、1系列あたりM501G形ガスタービン2台と蒸気タービン1台から構成されるGTCCユニット3系列が稼働中。

三菱重工は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業を通じた成果を活用して、26万5,000kW のM501G形ガスタービンの水素混焼実証試験を完了した。ドライ式低NOx (Dry Low NOx:DLN、NOx:窒素酸化物)燃焼器による水素混焼では、天然ガスと同等のタービン入口温度を維持し、エミッションも規定範囲内、かつメンテナンス間隔への影響を及ぼさずに水素20%の混焼に成功したものである。また、水素20%混焼により、エミッション規定を遵守しつつ運転できる最低負荷を下げる効果も確認された。

三菱重工は、このプロジェクトにおいてエンジニアリング、計画立案、水素混合燃焼装置・機器の提供、運転制御、試運転、ならびにリスク管理を担った。本プロジェクトは、三菱重工がこれまで培ってきた水素燃焼の経験に加え、高砂製作所(兵庫県高砂市)にてDLN燃焼器による100%水素専焼に向けた技術開発をたゆまず推進している成果の結集で成り立っている。高砂製作所では、ガスタービンの開発、設計、製造および実証が行われ、三菱重工はこのほど、世界初の水素関連技術の実証設備である「高砂水素パーク」を整備することを発表した。この総合力を活かし、信頼性の高いカーボンフリー発電技術・製品の実用化に取り組んでいる。

このプロジェクトの技術コンサルタントは、業界で主導的地位にあるサザン・カンパニーの研究開発組織が務めた。同チームは、低炭素水素発電、生産、輸送、インフラ、エネルギー貯蔵に焦点を当てた研究に国内外で取り組んでいる。サザン・カンパニーは、米国エネルギー省と協力して水素経済のバリューチェーン全体をカバーする実証を主導しており、水素技術が持続可能なエネルギーの未来を実現するための絶好機を到来させるとの確信を抱いている。

今回のプロジェクトを支援したEPRIは、世界有数の独立した非営利エネルギー研究開発組織で、このようなプロジェクトや低炭素資源イニシアティブのようなプログラムを通じて、思想的リーダーシップと技術的専門知識を提供している。EPRIの研究者らはこの試験に参加しており、同組織はこの夏、試験およびその結果に関する詳細なレポートを公開する予定。

三菱パワーアメリカおよびジョージア・パワー関係者による集合写真

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