日立金属が鉄鋼冷間圧延用鋳造高性能ロールCR²を開発。耐摩耗性3~5倍、破壊じん性2倍、耐クラック性5倍を実現。

日立金属は、鉄鋼冷間圧延*3用として、高性能な鋳造ロール CR2(シーアールツー、Cast Roll for Cold Rolling、以下 CR2)を開発、販売を開始したことを発表した。CR2は、冷間圧延工程に求められる高い耐摩耗性(粗度維持性)や耐事故性*4を有しており、冷間圧延工程に導入されることで生産性の向上に貢献する。

1. 背景

日立金属は、薄板、厚板、形鋼などの生産工程である熱間圧延*5で使用される高性能なロールを、多くの顧客に供給する、熱間圧延用鋳造ロールの国内トップメーカーである。これまで高い開発力と技術力で高性能な熱間圧延用鋳造ハイスロール*6を始め、さまざまな鋳造ロールを供給し、顧客のニーズに応えてきた。

近年、カーボンニュートラルの流れから、自動車用鋼板の分野では軽量化のニーズが高まり高張力鋼(ハイテン材)*7の使用比率拡大が進んでいる。また、xEV*8の増加に伴い、駆動モーターに使用される電磁鋼板*9の生産量が増加している。これらの鋼板はいずれも強度が高く、その生産に使用される圧延用ロールは、耐摩耗性や耐クラック性といった高い性能が要求されている。今後も、高張力鋼板は軽量化のために、電磁鋼板はモーター効率化のために、いずれも組織制御や高合金化*10などによる高性能化が進み、さらに硬く伸びにくくなることが予想されている。また、それが鋼板圧延中のスリップ*11や板破断*12といった製造トラブルの増加にもつながることが懸念される。そのため、圧延ロールに求められる性能はさらに高くなっていくと考えられている。

古くから、冷間圧延用としては鍛鋼ロールが使用されているが、近年のハイテン材や電磁鋼板を圧延する上でのニーズである耐摩耗性向上などについて、大幅な性能向上は確認されていなかった。また、冷間圧延には金属組織の均一性と高い硬度が要求され、これまで一般的には鋳造ロールは冷間圧延には使用されていなかった。 そこで、日立金属では、この課題を解決すべく鍛鋼ロールではなく、得意とする鋳造ロールで、新分野である冷間圧延への供給を目標として開発が行われてきた。

2. 概要

日立金属は、これまで熱間圧延で使用されるロールの研究開発で培ってきたノウハウと、鋳造欠陥の発生を防止する鋳造技術、精度の高い製造技術で、冷間圧延用鋳造ロールの実現に取り組んできました。その結果、今般、CR²の開発に成功した。

CR2は、鍛鋼ロールと比べ、耐摩耗性3~5倍、破壊じん性2倍、耐クラック性5倍の性能を実現した。これにより、鋳造ロールとしては新しい分野である冷間圧延のワークロール*13としての使用が可能となり、提供が開始された。


製品ラインナップ

CR²は、遠心鋳造複合ロール材「NCW10」と連続鋳掛肉盛複合ロール材「NCW20」の2材質を持ち、ロール使用状況にあわせて選択することが可能。

CR²ロール(Cast Roll for Cold Rolling)

NCW10 ・・・ 遠心鋳造製複合ロール
耐摩耗性に優れた外層 + 強靭なダクタイル鋳鉄の内層

NCW20 ・・・ 連続鋳掛肉盛複合ロール
更に耐摩耗性に優れた外層 + 更に強靭な鍛鋼の内層


現在、冷間圧延用の鍛鋼ワークロールとしては、5%Cr材が主に使用されているが、CR2の高い耐摩耗性(粗度維持性)と耐事故性は、顧客の生産性向上に貢献する。顧客にて実施される圧延後の研削に使用される砥石や研削条件等についてもソリューションとして提供が可能である。

販売拠点
日立金属若松(日立金属株式会社 100%子会社、福岡県北九州市若松区)

販売目標
10 億円/年(2030 年度)

※1 鍛鋼ロール:鋼の素材を高温に加熱し、鍛造プレスにて鍛錬・成形することにより製造されたロール。

※2 鋳造ロール:溶かした鉄を型に流し込むことにより、圧延ロール形状に成形されたロール。

※3 冷間圧延:基本的に常温や室温で行われる圧延工程。圧延により材料が変形する際に発生する熱により材料の温度は上昇する。

 ※4 耐事故性:圧延中のロール表面に、急激な熱負荷などにより、クラック、焼付きが生じることを圧延事故と呼び、その圧延事故への耐性を、クラック、焼付きの程度、破壊じん性の数値から総合的に評価したもの。

※5 熱間圧延:材料を加熱して軟らかくし、加工しやすい状態で行われる圧延工程。鋼材の場合は900~1200℃に加熱される。

※6 ハイスロール:工具鋼における高温下での耐軟化性の低さを改善した材質によるロール。ハイスはハイスピードスチール(high-speed steel,高速度鋼)を縮めた呼称。

※7 高張力鋼:一般の鋼材よりも引張強さ(抗張力)が高い鋼材、ケイ素やマンガンなどを添加すると共に焼入れ、焼戻しなどの熱処理を加えたもの。490MPa 以上の引張強さのものをいう。俗称ハイテン。

※8 xEV:電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)の総称。

※9 電磁鋼板:電気エネルギーと磁気エネルギーの変換効率が高く、電気部品に使用した時の鉄損の低い鋼材。用途により無方向性と方向性の 2 種類がある。無方向性は主にモーターの鉄心や発電機、方向性は変圧器の鉄心などに使用される。

※10 高合金化:主な添加元素の含有量が増えること。

※11 スリップ:圧延条件の不適により、圧延する板とロール間で発生するすべり現象。圧延条件には圧延荷重、圧延スピード、摩擦係数、張力などが含まれる。状況によってはロールを交換する必要がある。

※12 板破断:圧延中に板が切れる現象。切れた板がロールに巻き付いたり焼付いたりするため、ロール表面には大きな損傷を受ける場合がある。

※13 ワークロール:圧延する対象と直接接するロール

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