【海外技術情報】シトロエン:『ベルランゴ』をベースにイタリアのカロッツェリアが『2CVフルゴネット』をモチーフに制作した『ベルランゴ 2CV フルゴネット』を発売。

イタリアのカロッツェリアであるCaselani(カゼラーニ)がシトロエンのデザインチームと協力して、『ベルランゴ』を『2CV フルゴネット』にカスタマイズした。『2CV フルゴネット』とはシトロエンの象徴的なモデルの1つであり、今回のコンバージョンは時代に足跡を残した『2CV フルゴネット』への敬意を表している。こうして誕生した『ベルランゴ 2CV フルゴネット』は、シトロエンの公式ライセンスを取得したカゼラーニから市販される。
TEXT:川島礼二郎(Reijiro KAWASHIMA)

『2CV フルゴネット』をモチーフに、『ベルランゴ』をベースに。

モチーフとされたのは『2CV フルゴネット』である。生産が開始された1951年から1987年までの間、多くの支持を集めた伝説的なモデルである。前半分は『2CV』、後ろ半分は箱、という、昔風に言うライトバンである。

コンバージョンのベースは『ベルランゴ』。グローバルでの初代モデル登場は1996年であり、以来330万台以上を超える販売を記録している。日本では2019年10月にオンライン予約モデルとしてデビュー。2020年8月にはカタログモデルとして発売が開始された。ルノー『カングー』キラーとしても注目されたが、早くもシトロエン(ジャパン)の屋台骨を支える人気モデルとなっている。

シトロエン・スタイルの責任者であるピエール・ルクレール氏は以下のように述べた。

「当社のベストセラーの『ベルランゴ』が、アイコニックな『2CV フルゴネット』からインスピレーションを得て、カセラーニによって再生されたことを非常に誇りに思います。彼らのスタジオで設計作業が始まりました。その後、私達は手を取り合い協力しました。当社のデザイナーはオリジナルの『2CV フルゴネット』が”解釈”されすぎず、シトロエンのDNAを備えていることを確認するために注意を払いました。

『ベルランゴ』が時間の旅に出た!

カゼラーニはイタリアの自動車文化に定着しているヴィンテージトレンドを活用するカロッツェリアだ。この手法のメリットは、過去の伝説的なモデルに新しい命を吹き込み、そこに最新装備と高性能を組み込むことが可能である、ということ。

カゼラーニでは、2017年にシトロエン『ジャンパー』をベースにした『タイプH』を、そして2020年には『ジャンピー/スペースツアラー』を『タイプHG』として市販した経験を有している。今回の『ベルランゴ 2CV フルゴネット』のデザインは、その2車を担当したデビッド・オベンドルファーが行った。

「厳密にフォルムをコピーしたわけではありません。私達は時間を遡り、そのユニークな魅力を21世紀の車両にもたらすことを目指しました。オリジナルのバンとはプロポーションがまったく異なるので、これはエキサイティングな挑戦でした。オリジナルは非常に短いフロント・オーバーハング、素敵な長いボンネット、視覚的に独立した荷室など、『ベルランゴ』とは大きく異なる特徴を備えていました。そのため個々のデザイン要素を無理に『2CV フルゴネット』のように見せるのではなく、オリジナルが持つ全体的な、そして刺激的な部分を表現することに重点を置きました」

ベルランゴのフロントエンドパネルは完全に作り替えられた。グリル、バンパー、ホイールアーチは、フレームに適合した新しいグラスファイバーコンポーネントに置き換えられた。これらコンポーネントはすべて、北イタリアのロンバルディア州にあるケースラニのワークショップで組み立てられている。

V字を成すドーム型ボンネットは下部に向かって狭くなっている。デザイナー自身の用語を使用すると「ピンチ」している。エンボス加工の縞模様がフロントエンドパネルの中央にあり、ほぼ全体に広がっている。

丸型のヘッドライトはボンネットから部分的に飛び出す形とされた。完全に飛び出していたオリジナルとは異なり、後端はボンネットに収まる。

上部が凹状にカットされたグリルは魅力的であり、『2CV AU』の象徴でもある。大きなクロームメッキのシェブロンがグリルの中央に配置された。印象的なグリルはフロントエンドと一体化しており、大きなアーチを形成している。

サイド、リヤドア、ルーフはすべて2番目のスキン=グラスファイバーコンポーネントで覆われ、『ベルランゴ』のボディワークを消し去っている。それらはすべて『2CV』の特徴でもあった波形シートに敬意を表している。本車両での波形シートは装飾であるが、オリジナルでのそれらは構造全体に剛性を与えるために付与されていたものである。

車両後部では、上下が丸みを帯びた小さなウィンドウが、ベルランゴの後部ドアに搭載された。これもまた『2CV』 へのオマージュである。ストップライトとバックライトは完全に丸い形状とされた。それらは赤いトリムで囲まれているため、より目立ち、より現代的な雰囲気を醸し出している。

最新モデルをベースとするメリット

発売が開始された当時、『2CV フルゴネット』は、その外観と性能により、セグメントに衝撃を与えた。小さな商用バンは平均速度40~50km/hに達し、有効容積は1.88m³。最大 250kgの荷物とドライバーを運ぶことができた。

新しいバージョンからは、2気筒エンジンのノイズと、エンジンをクランク始動させるために開けられたフロントグリルの穴が取り除かれている。『ベルランゴ 2CV フルゴネット』は、時代最新の快適性、スペース、安全性を享受できる。

乗車定員は、バン仕様は3人、プライベートパッセンジャー仕様は5人。積載量は4倍に、有効容積は実質的に3倍になった。

コンパクトで機敏で扱いやすいにもかかわらず、十分なスペースがあり、このユーティリティビークルはトレーダーや職人にとって理想的なツールとなっている。Extensoキャビンのおかげで、車両の有効長は助手席を格納することで最大3.09m(サイズM)まで延長できる。

カゼリーニのシトロエン愛が『ベルランゴ 2CV フルゴネット』を生み出した

デザインから生産までを担当したカゼリーニは前述のように、2017年に『タイプ H』の 70周年を祝うために、『ジャンパー』をベースにしたボディワークキットを開発した。そして2020年には『ジャンピー/スペースツアラー』に手を付けた。そして今回の『ベルランゴ』である。これを実現できたのは、カロッツェリアのディレクターであるファブリツィオ・カゼリーニ氏の嗜好と深く関係している。

「私は『2CV』と『HYバン』の熱烈なファンであり、古いシトロエンのモデルを全でコレクションしています。妻は私と同じくらい熱狂的でして、2000年代には『タイプH』をキャンピングカーに改造してヨーロッパを旅行しました。その後、家族が増え始めたとき、より広々とした快適な『HY』を作る、というアイデアが浮かびました。現行モデルのアーキテクチャを使用して、グラスファイバーパネルをボディワークに取り付ける、という発想です。
すべては順調に進みました。プロトタイプをシトロエンのデザインチームに提示したところ、彼らはそのアイデアを受け入れてくれました。そして最初のモデルの生産を2017年に開始したのです。
そして私は今、『2CV フルゴネット』キットを発表しました。このデザインはカゼラーニとシトロエンとの共同開発の結果です。1950 年代に名を馳せた伝説的なモデルの親しみやすい顔を再び見られることを嬉しく思います」

受注開始は2022年10月1日、生産開始は2023年1月を予定している。

キーワードで検索する

著者プロフィール

川島礼二郎 近影

川島礼二郎

1973年神奈川県生まれ。大学卒業後、青年海外協力隊員としてケニアに赴任。帰国後、二輪車専門誌、機械系…