無人機が屋内外ルートで車両エンジンを運搬。三菱ふそうが、川崎製作所で無人自動けん引車(AIT)の実証試験を実施。

無人自動けん引車(AIT)「TractEasy」
三菱ふそうトラック・バス(以下MFTBC)は、2022年10月から11月の間、川崎製作所の屋外エリアにおいて、無人自動けん引車(Autonomous Intelligent Tugger、以下AIT)による車両運搬の実証試験を行なったことを発表した。

実証試験では1台のAITが使用され、車両エンジンの運搬を想定して、エンジン製造工場から約900メートル離れた車両組み立てラインまでのルートを走行した。今回の実証試験では、AITがあらかじめ決められたルートに沿って移動できるか、生産スケジュールから遅れは出ないかなどの実用性と、周囲の人や物と衝突しないかの安全性が確認された。

AITは通常、空港のような面積が大きく障害物が少ない場所において、貨物の運搬に用いられる。日本では、物が不規則に配置され、人や車両が縦横無尽に行き交う製造工場のような場所でのAITの使用例は多くない。今回は、仏EasyMile社のAIT「TractEasy」が使用された。

EasyMile社のAITは、MFTBCの親会社であるダイムラートラックの独ヴェルト工場でも導入に向けた準備が進められている。「TractEasy」は最大けん引重量25トンで、搭載したセンサーやカメラでリアルタイムに情報を認識し、自動で走行。常時数センチメートル単位の正確さで移動でき、広範囲を認識して障害物に対処する。また車両からの無線通信(V2X)機能や予測制御、交差点や横断歩道での発進・停止の判断機能を備えており、電力で稼働するため、生産活動における二酸化炭素(CO2)排出量の削減にも貢献する。

今回の実証試験において、MFTBCはAITの無人自動走行に伴って生じるリスク回避の仕組みや、本環境下における最高速度である時速11キロメートル*での走行時も安定して稼働することなどが確認された。また、経路を塞ぐ複雑な障害物など自動走行が困難なシーンを想定し、遠隔管制センターから遠隔監視・操作を行い、ダウンタイムの発生を抑えたシームレスなAITの運用も検証された。遠隔管制システムにはパナソニック ホールディングスの「X-Area Remote」が使用された。

*TractEasyの仕様上の最高走行速度は時速15キロメートル

MFTBCは2017年に開始した「Factory of the Future(未来の工場)」プロジェクトで、最新の技術によって工場の効率と安全性を向上させるべく、生産技術に積極的な投資を続けてきた。プロジェクトの注力分野の一つが、多くの人員が必要で身体的負担も大きい、車両部品などの運搬業務である。これまでに、屋内での部品運搬については、自動運行ロボットを実証の上、導入が実現された。しかし、屋外のルートを通る建屋間の運搬は、天気の影響や人や物が不規則に行き交うことで複雑な制御が要求されることなどから、より難易度が高く、MFTBCは有用なソリューションを模索している中で、このたびAITの実証につながったとされる。

遠隔操作の様子
遠隔管制システム

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