日産・新型セレナに車椅子を載せる:LVシリーズのテクノロジー

C28型セレナにもLV:ライフケアビークル仕様が用意される。注目点はe-POWER車でも2列目に車椅子が固定できること。これまでなぜできなかったのか、なぜ可能になったのか。
モーターファン・イラストレーテッド vol.195号より一部転載

まきあげる

e-POWER車は一列目シート下にバッテリーを置くためフロアが隆起している。先代までのウィンチはここに収められるサイズでなかったのを、C28型LVはウィンチを小型化、前席シート下に完全に隠れなかったものの、ここにウィンチを置くことに成功している。これにより、車椅子を2列目シートのポジションまで引き上げることができるようになった。昇降能力は120kg。

e-POWER車の一列目シート下の様子(通常仕様の運転席側)。フロアに対してバッテリー搭載スペースが大きく盛り上がっている。巨大な電池に頼らないのがe-POWERの美点のひとつであり、上手に収めている印象。
同じ部位を床下から眺めたところ。クロスメンバーの間にパンを設け、バッテリーパックを収めている。荷室やシートレイアウトの自由度を追求すると、ここに収容するのがいちばんの解決だったのだろうと推察する。

ひっぱる

ウィンチのコントローラーはバックドア開口部左側に備わる。車椅子をセットするのが2列目なら左列のシーソースイッチを緑に、3列目なら青に切り替えると、ベルトの巻き上げトラベルが調整される。ウィンチは前席下に左右2カ所設置され、2本のベルトで車椅子を引っぱる格好。ワイヤレスリモコンも付属する。

フロアには4本のベルトが2セット、色分けされて備わる。緑が2列目固定用、青が3列目用。写真は車椅子を引き入れ固定する後方のベルト。ウィンチの2カ所で前向きの、写真の2カ所で後向きのテンションをかける仕組み。
車椅子の固定位置は、フロアの三角マークとアクスル位置が一致したかを目安とする。固定位置はかなり前方で、これは介助者が乗る運転席と近づけることを目的としたから。この位置でBピラーの3点シートベルトの装着も可能。

のせる

乗車状態の車椅子を載せるのは、やはり難儀。少しでも負担を軽減するために、スロープは低く長くするとともに、リヤの車高を80mm下げられる(右の写真)構造とすることで、スロープ角を11度まで小さくした。車重はe-POWERXVグレード比較で、車椅子1名セカンド仕様が10kg/車椅子2名仕様が100kgの増加。

スロープはアルミ合金製で、3枚テレスコピック構造。ワンハンドルでスピーディに引き出すことができる手動式。一気に滑り落ちることのないよう、上重ねの配置としている。耐荷重量は介助者を含めた想定の200kg。
80mmの車高ダウンは、リヤサスペンションのダンパーを油圧制御することで実現した。スロープを収め緩やかな勾配を作るためにリヤバンパーも切り欠いている構造で、開口部の高さは1360mmを確保している。

しまう

アルミ合金製のスロープは、従来、荷室後端に立った状態で収納されており、荷室へのアクセスがしにくかった。そこで、使わない際には荷室フロアに収められるように前倒しできる構造とし、さらにはサードシートもセットできるようにキャッチホールを設けた。ミニバンの美点である多人数乗車とユーティリティの高さを損なわないところは見事。

スロープをたたみ、直角に起こした状態で収容したところで、いわば第一段階。車両後端に上側にあるふたつの四角いホールは樹脂製のグリルでふさがれていて、車椅子の乗降時には段差とならないようにしてある。
スロープはさらに前に倒すことができる。こうすることで、荷室をフルに使える状態となる。加えて、樹脂製のグリルパーツをたたむとサードシートのキャッチが現れ、3列目の座席を使えるようになる。すばらしい。

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