大同特殊鋼が低周波における磁気ノイズ抑制効果を有したパーマロイ箔を販売開始。電動車・自動運転で使用される機器などの軽量化・薄型化に貢献

大同特殊鋼は通信技術やIoT機器の高周波化、自動車の電動化に伴い発生するEMCノイズ(主に磁気ノイズ)の抑制効果を有した同社のパーマロイ箔 STARPAShに、新たに約100kHz以下の低周波において優れた特性を誇るSTARPAS-50PC2Sをラインナップに追加、1月から販売を開始したことを発表した。

STARPASには、高透磁率材MEN PC-2Sを用いた弱いノイズを高感度に抑制できるPC2Sシリーズと、高飽和磁束密度材DF42Nを用いた強磁界ノイズに対応したDF42Nシリーズがある。これらはいずれも30μm厚以下のシールド材となっており、主にMHz帯までの中周波帯ノイズの抑制効果がある。

今回の新製品では、高感度用のPC2Sシリーズで厚みを50μmとし熱処理を工夫することで、特に低周波でのシールド性の向上に成功した。曲げや打ち抜きなどの加工性に優れ、機器への貼り付けが容易なパーマロイで低周波向けのシールド材が開発されたことで、低周波における最適なシールド設計が実現し、電動車や自動運転技術で使用される機器などの軽量化や薄型化に貢献する。

背景

近年、車の電動化や自動運転技術などの進化により、EMCノイズへの対策が重要となっている。EMCノイズは、電子機器の正常な動作の妨げとなり、場合によっては機能の停止や誤動作を引き起こす原因となってしまう。

EMCノイズの軽減には、その周波数帯に応じた対策材料が用いられる。大同特殊鋼では、低周波用にパーマロイを提供するとともに、それを箔化することでMHz帯までの中周波帯にも対応可能な製品をラインナップしてきている。一般的に、低周波ではEMCノイズに対してシールド効果を得るために一定の厚みの材料を使用する。その一方で、過剰なシールドとなり機器の軽量化の妨げになる場合や、ナノ結晶などでは、製品への貼り付け時に曲げや打ち抜きなどの加工により性能が低下するケースも存在する。このため、低周波において軽量化が可能で加工性に優れたシールド材が求められていた。今後、車などの移動体では、金属材料から炭素繊維複合材料などへの置き換えで軽量化が進む中、ノイズの強度に対して最適な厚みのシールド材を選択するなどEMC対策との両立が求められる。
大同特殊鋼は約100kHz以下の帯域で軽量でありながらシールド性を有する部材として、従来材に対し性能の高い製品を開発した。(図1参照)

図1 新製品の磁気シールド性結果(シミュレーションによる)

製品の特長

低周波におけるシールド性

図2は、車載用機器のEMC試験として知られるISO11452-8による磁界イミュニティ※6試験結果を示している(材料に対して垂直に磁界を印加する最も厳しいシールドの配置方法で検証されている)。今回の製品は、磁界強度が低い試験レベルⅠでは、従来の高感度シリーズ(30PC2S)よりもシールド性は高く、また、磁界強度が高い試験レベルⅣにおいても、従来の強磁界シリーズ(30DF42N)より優れた性能を示している。
一般的に、シールド性能は厚みによって向上するが、必要以上の厚みの対策材では過剰なシールドとなる。このため、本製品により適切な効果と厚みが提供されることで機器の軽量化に貢献する。

図2 ISO11452-8磁界イミュニティ試験の実測結果(左:試験レベルⅠ、右:試験レベルⅣ)

加工性

また、本製品は従来通り加工性に優れており、曲面への貼り付けが可能で、従来材と併せてラミネートなどによる積層にも対応している。
今回、STARPASにシート厚のバリエーションが増やされたことで、多様化するEMC対策の設計部材の提供が可能となった。ノイズの特徴に応じた最適なシールド設計で、機器の軽量化や薄型化に貢献する。

また、2023年1月25日から27日にかけて東京ビッグサイトで開催されるネプコンジャパンに本製品が出展される。

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