東レがシリコーンコートタイプエアバッグ由来のリサイクルN66樹脂を開発。バージン原料由来の射出成形グレードと同等レベルの流動性を実現

東レがシリコーンコートタイプのエアバッグ端材からリサイクルナイロン66(N66)樹脂を開発したことを発表した。本開発品は、再資源化事業者のリファインバースがエアバッグ端材からシリコーン樹脂を剥離、洗浄工程を経てリサイクルした再生樹脂に対し、東レが特定の添加剤を複合することで達成されたもので、バージン原料由来の射出成形グレードと同等レベルの流動性、機械物性を有する。

開発の背景

エアバッグには、N66基布にシリコーン樹脂をコーティングしたシリコーンコートタイプと未加工のシリコーンノンコートタイプがある。従来、シリコーンノンコートタイプの製造工程で発生した端材はリサイクルされており、シリコーンコートタイプの製造工程で発生した端材を再利用するにはシリコーン樹脂を剥離、洗浄する必要があり、日本国内ではリファインバースの事業化により初めて量産的にリサイクルされている。しかし、剥離、洗浄工程を経てリサイクルされた原料であっても、シリコーン樹脂が少量残存してしまい、射出成形した際に物性低下、金型汚れを引き起こす場合があった。また、エアバッグの糸は高粘度であり、薄肉成形品など高い流動性を必要とする射出成形用途への適用には制約があった。

新開発エアバッグの特長

東レは、特定の添加剤を複合することで、残存するシリコーン樹脂の成形品表面への移行を抑制し、金型への付着を大幅に低減することに成功した。本技術を適用したシリコーンコートタイプエアバッグ由来のリサイクルN66樹脂は、バージン原料由来の射出成形グレードと同等レベルの流動性、機械物性を有しているという。また、2023年4月以降には本格的にサンプルワークが開始され、将来的には、海外拠点でリサイクル原資を調達してグローバル供給体制を整える計画とされている。また、廃車から回収したエアバッグからつくる再生樹脂を原料にした商品化も検討が進められている。

本開発品は、リサイクル素材・製品の全社統合ブランドである「Ecouse」に初めて「“Ecouse”AMILAN」として樹脂製品がラインナップされ、環境配慮型樹脂材料「Ecouse」シリーズの展開が加速される。

「Ecouse」ブランド

「Ecouse(エコユース)」は、東レが2015年からグローバル展開しているリサイクル素材・製品の全社統合ブランドである。今回、「“Ecouse”AMILAN」をラインナップしたことで、環境配慮型樹脂材料「Ecouse」シリーズの展開が加速される。これまで、自社の生産工程で発生する端材を中心にマテリアルリサイクル樹脂製品が展開され、使用済みのエアコン部品を再度エアコン部品にリサイクルする水平リサイクルの取り組み等が行われているが、今後は使用済みの自動車部品や各種産業機器においてもリサイクルの取り組みが強化、拡充されていく。

また、バージン材料並みの物性を有するケミカルリサイクル樹脂製品として、PBT(ポリブチレンテレフタレート)樹脂「“Ecouse”TORAYCON」の上市が予定されている。今後、自社ポリマーのマテリアルリサイクル、ケミカルリサイクルの検討を進め、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)樹脂「“Ecouse”TOYOLAC」、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂「“Ecouse”TORELINA」も含めた環境配慮型樹脂材料「Ecouse」シリーズが拡大されていく。

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