【海外技術情報】ミシュラン:IAA2021で遂にあのコンセプトタイヤ『アプティス』が車両に搭載された

ミュンヘンで開催されたIAA2021において、ミシュランは未来のモビリティを構築する計画について具体的なビジョンを示した。筆者が注目したのは、エアレスタイヤのコンセプトモデル『アプティス』の進捗である。
TEXT:川島礼二郎(KAWASHIMA Reijiro)

 ミシュランは、持続可能なモビリティのリーダー、またサポーターとして、モビリティに特化したIAA2021に参加・出展した。ミシュラングループのゼネラルマネージャーであるイヴ・チャポット氏は、以下のように述べた。

「ミシュランの戦略は持続可能なモビリティに焦点を合わせています。2050年までに、タイヤに100%持続可能な素材を使用することが当社の目標です。『VISIONコンセプト』は、この課題に対応するミシュランの能力と、ライフサイクル全体を通じて環境に配慮した製品とサービスを提供するという私たちの取り組みを示しています」

 過去の当連載で記載したように、ミシュランは2017年に、『VISIONコンセプト』をその象徴として、同社の考えるタイヤのあるべき姿を示してきた。『VISIONコンセプト』が体現する重要な技術的な特徴は4つ。「エアレス」「リチャージャブル」「コネクテッド」「100%持続可能」であった(詳細は過去記事参照 https://car.motor-fan.jp/tech/10018506)。

ミシュラン『アップティス』が車両に搭載された

 ミシュランが考える未来のタイヤの象徴が『VISIONコンセプト』なら、この『アプティス』は、それを製品化に向けて一歩進めたプロトタイプと言える。上記の4つの重要な技術のうちの「エアレス」実現に向けて開発が続いているもので、世界初公開は2019年6月に開催された「Movin On Summit」である。

『アプティス』は、アルミホイールと、ミシュランのハイテク素材に関する専門知識の産物であるガラス繊維強化プラスチック(GFRP)で作られた柔軟な耐荷重構造を組み合わせることで、高レベルの性能品質を保証し、乗用車のニーズに完全に適合する。エアレスだから車両が突然使えなくなるリスクを軽減し、タイヤ関連のメンテナンスを軽減する。環境に対しては、エアレス技術がパンクにより廃棄されるタイヤの数を大幅に削減することで、フットプリントを小さくする。そしてミシュランとGMとのパートナーシップにより、2024年に市場に投入される。共同研究契約の一環として『ボルトEV』等でテストされており、現在は実際の運転条件下での動作に関するテストが続けられている。

 今回のIAA2021では、この『アプティス』が遂に車両に搭載され、来場者の市場体験が行われた。驚いたことに、搭載した車両はミニである。ミシュラングループの技術・科学コミュニケーションディレクターであるシリル・ロジェ氏は以下のように述べた。

「この革新的なタイヤに乗ってテストしてくださった来場者様にとって、特別な体験だったことでしょう。最初は少し警戒していた多くの来場者様が『従来のタイヤと何の違いも感じない』と言ってくださいました」

 この経験によりミシュランは、2024年に製品版『アプティス』を市場に投入するために、着実に歩みを進めていることを示した。

持続可能な素材を46%使用した最初の競技用タイヤ

 また『VISIONコンセプト』に体現させた技術的特徴の一つである「100%持続可能」に関連するのが、このレーシングタイヤだ。2021年6月に開催された『Movin’ On Summit』で初公開された、46%の持続可能な材料で作られたミシュランの最初のタイヤである。こちらは、性能を損なうことなく持続可能な材料を多く使用するミシュランの能力を示している。

キーワードで検索する

著者プロフィール

川島礼二郎 近影

川島礼二郎

1973年神奈川県生まれ。大学卒業後、青年海外協力隊員としてケニアに赴任。帰国後、二輪車専門誌、機械系…