デンソー、「人とくるまのテクノロジー展2025」に出展。モビリティの進化や新価値創造、基盤技術の強化について展示

デンソーは、2025年5月21日~23日までパシフィコ横浜(神奈川県横浜市)で開催される「人とくるまのテクノロジー展2025」に出展することを発表した。また、5月14日~6月4日にオンラインで開催されるONLINE STAGE1にも出展する。 なお、7月16日~18日までAichi Sky Expo (愛知県常滑市)で開催される同展示会、および併催されるONLINE STAGE2にも出展する。

デンソーは、「環境・安心の軸で社会課題を解決する」ことを目指し、「モビリティの進化」「新価値創造」「基盤技術の強化」の3つのチャレンジに取り組んでいる。本展示会では、これら3つのチャレンジに関わる各種技術と製品が紹介される。

1. 「モビリティの進化」

デンソーはカーボンニュートラルと安全・安心な移動を実現するモビリティの進化に向けて取り組んでいる。主な展示物は、以下の通り。

(1) eAxle内蔵インバーター

インバーターケースとトランスアクスルケースの一体化による体格低減やパワーモジュール(素子)の性能向上で電力損失の削減に取り組み、車室空間拡大と航続距離向上が実現された。また、コア部品を標準化しつつ、パワーモジュールの段数やパワー半導体のサイズ等のカスタムが可能なため、専用投資を極限まで減らしながら出力要求や航続距離の向上に対応することができる。このような特長により、要求仕様に合わせた柔軟な開発を短期かつ低コストで実現する。

(2) 車載用輻射ヒーター

急速昇温可能な赤外線ヒーターにより、従来の暖房に比べて速やかに温かさを感じることができる省エネ暖房が実現された。また、人体が接触すると瞬時に表面温度を下げる構造と、接触を検知してヒーター出力を下げる技術が採用され、安全性が確保されている。デモ機によるヒーターの利用体験もできる。

(3) 次世代AIモデル開発環境

デンソーグループのJ-QuAD DYNAMICSが、NTTデータ オートモビリジェンス研究所と共同で開発しているAIを活用した自動運転の開発環境について紹介される。AIが学習データを自動生成し、学習・結果分析のサイクルを回す。さらに新たなシナリオからも学習サイクルが回される。これにより、学習データ量を格段に増加させることができ、品質向上および開発スピード向上が実現される。

※J-QuAD DYNAMICS は、2019年4月にデンソー、アイシン、ジェイテクト、アドヴィックスの共同出資により設立された、自動運転の統合制御ソフトウェアを開発する会社。

(4) 乗員モニターソリューション

車内への幼児の置き去りによる事故を防ぐために、デジタルキーシステムで使われているUWB(超広帯域無線通信)という電波を使って、車内に残された幼児を検出し車両オーナーや周囲の人への警報を実施するシステム。

2. 「新価値創造」

街や社会と一体となったモビリティを軸とした新価値の創造が進められている。本展示会では、サーキュラーエコノミー、モビリティ技術の応用の取り組みが紹介される。主な展示物は、以下の通り。

(1) プロダクトパスポートに向けたトレーサビリティ技術 

QRコード・ブロックチェーン技術を活用し、製品のライフサイクルに関わる情報を、高い信頼性をもって連携・記録するプロダクトパスポートシステムが紹介される。本システムは、今後施行される欧州電池規則で制定される車載バッテリーをはじめとした様々な製品の管理データを対象に、サプライチェーン企業間で安全に連携し、パスポートとして記録することを支援する。

https://www.denso.com/jp/ja/driven-base/project/qr-traceability

(2) 電池診断、グレーディング技術によるサーキュラーエコノミーソリューション

限られた資源を有効活用するため、電動自動車の電池のリユース促進が求められている。デンソーは、電池2次利用の用途ごとの寿命の推定とそれに基づいた性能ランク分類の技術を開発している。そして、2次利用に関するガイドライン作成などの取り組みを推進している。

https://www.denso.com/jp/ja/driven-base/project/baas

(3) 使用済み自動車の精緻解体ロボット技術

自動車リサイクルにおける再生材の大幅な利用拡大を通じて、新たな天然資源の投入量を削減するため、デンソーは使用済み自動車を材料ごとに分別・再利用できるように、ロボットを活用し精緻に解体する技術を開発している。

https://www.denso.com/jp/ja/driven-base/project/circular-economy

(4) ドライブエージェント くるまのJullie

Jullieは、生成AIや、音声認識・合成技術を活用したロボット。人との会話に合わせた動作判断を行うことができ、これまでも各種イベントに参加している。本展示会では、ドライブエージェント「くるまのJullie」とのドライブをシミュレーターで体験することができる。

https://gen-ai.robot.service-dn.com

(5) 進化をつづけるQRコード

デンソーは、1992年の発表以来、社会ニーズに対応したさまざまなQRコードを開発している。今回は、狭いスペースに印字可能なQRコードや、QRコードの複製を防止することで情報のセキュリティ性を高めたQRコードなどが紹介される。

3.「基盤技術の強化」

デンソーがモビリティの進化と新価値創造に取り組む上で、今後のカギとなる半導体とソフトウェアといった基盤技術の強化に取り組んでいる。主な展示は以下の通り。

(1) 車載半導体

デンソーは、半導体素子からモジュールやインバーターに至るまでを一貫して開発している。車載の知見と内製半導体の独自技術を最大限活用することで、環境にやさしく、安全で安心なシステムを提供し、持続可能な社会に貢献する。今回は、インバーター向け内製SiCパワー半導体および、SiCパワー半導体の性能を存分に引き出すゲート駆動ICが展示される。

(2) UXに基づくSDV(Software Defined Vehicle)

UX(User Experience)起点のアプローチにより、モビリティサービス視点で新たな価値を創出し、SDVで体現していくというコンセプトが紹介される。

(3) ソフトウェア領域の人材育成

デンソーは、ソフトウェア技術者のキャリア開発支援に向けた、独自の「Career Innovation Program」に取り組んでいる。この取り組みは、自身の能力を把握する「SOMRIE認定制度」、必要な知識を獲得する「リカレントプログラム」、最適な活躍機会を獲得する「アサインプロセス」、実践スキルを獲得する「バディ制度」の4つで構成されており、本展示会では「SOMRIE認定制度」について紹介される。

https://careers.denso.com/graduate/growth/CIP_SOMRIE
https://aee.expo-info.jsae.or.jp/ja
「人とくるまのテクノロジー展 2025」公式ウェブサイト

キーワードで検索する

著者プロフィール

Motor Fan illustrated編集部 近影

Motor Fan illustrated編集部