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開発の背景
本製品は超急速充電が可能であり、バスやトラックなど特定ルートを高い稼働率で運行する大型商用電気自動車では、ルート内の特定箇所で高頻度に急速充電することで電池搭載量を減らすことができる。さらに、長寿命性能を備えているため、劣化による電池交換の頻度を減らし、総所有コスト(TCO:Total Cost of Ownership)の低減が期待される。
また、LFP電池に代表される炭素系リチウムイオン電池は、高いエネルギー密度が得られるが、急速充電を繰り返すことで、負極で金属リチウムが析出して内部短絡が起こるリスクがあり、電池が劣化すると発煙・発火につながる可能性がある。一方、本製品に搭載している負極材NTOは、「SCiB」の負極材であるチタン酸リチウム(LTO)と同様、内部短絡の要因となる金属リチウムの析出が原理的に起こらないため、急速充電を繰り返しても、長期間安心して使うことができる。
東芝は戦略的パートナである、世界一位のニオブ生産量と販売量を誇るCBMMの日本市場向けの総代理店として、安定的な原料供給体制の構築や用途開拓を進めてきた双日と連携し、高い稼働率が求められるバスやトラックなどの大型商用電気自動車を中心に、高いエネルギー密度と急速充電かつ長寿命を備えた本製品の導入を進めていく。
製品の概要

本製品は、電気自動車などに使用されている、正極にリチウムリン酸鉄を用いた炭素系リチウムイオン電池(以下、LFP電池)に匹敵する体積エネルギー密度と、東芝「SCiB」の特長である「急速充電」「長寿命」の両立を実現している。10分間の充電で約80%の超急速充電が可能で、実用的な部分急速充電※1と放電を15,000回以上繰り返しても80%以上の電池容量を維持する長寿命性能を有している。
東芝は、2021年にCBMMおよび双日とNTOを用いた次世代リチウムイオン電池の商業化に向けた共同開発契約を締結し、2024年から約10分で超急速充電が可能な電気バスの試作車をCBMMが権益を所有するアラシャ鉱山で走行させる実証実験を開始するなど、事業化およびサプライチェーン構築に向けた実証・営業・マーケティング活動を積極的に推進している。今般サンプルの提供を開始する50Ahラミネートセルは、商用電気自動車はもちろん、船舶や定置用蓄電池などへの応用も期待されている。
定格容量 | 50 Ah |
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公称電圧 | 2.3 V |
出力性能 | 1000 W (SOC 50%, 10s, 25 ℃)※2 |
入力性能 | 2000 W (SOC 50%, 10s, 25 ℃)※2 |
体積エネルギー密度 (タブ・シール部を除く体積エネルギー密度) |
350 Wh/L (307 Wh/L) |
重量エネルギー密度 | 130 Wh/kg |
寸法 (タブ・シール部を含む寸法) | 98 x 280 x 12 mm (102 x 310 x 12 mm) |
質量 | 約860 g |
急速充電性能 | 5C充電可能(10分、SOC80%) |
使用温度範囲 | -30 ~ +60 ℃ |
【注釈】
※1 25℃環境下、3C充電(20分充電)にてSOC (State of Charge) 0-80%相当による寿命試験。
※2 内部抵抗値からの計算値。