【海外技術情報】ダイムラー:BEV商用車「eActros」が搭載する主要コンポーネントの量産が開始された

Mercedes-Benz Werk Mannheim: Ein Mitarbeiter montiert das Steuergerät an das Batteriepaket Battery packs from the Mercedes-Benz plant in Mannheim
ダイムラーは今秋よりBEV商用車「eActros」の量産を開始すると発表しているが、いよいよ同車が搭載する主要コンポーネントの量産が開始されたという。本稿では、最大400kmの航続距離を誇るとされる同車の技術概要と、量産の進捗についてご紹介する。
TEXT:川島礼二郎(KAWASHIMA Reijiro)

BEV商用車「eActros」は航続距離400kmを誇る

 ダイムラーは2021年6月、BEV商用車「eActros」を世界初公開して、今秋より量産を開始することを発表した。「eActros」の技術的中心は、2つの統合された電気モーターと2速トランスミッションを備えた高剛性なeアクスルから構成されるドライブユニットだ。

 セントラルモーターの設計に比べて、この2モーターには多くの利点がある。よりコンパクトな設計が可能だから、追加のバッテリーを設置するためのスペースを確保し、車両の航続距離にプラスの影響を与えることができる。またセントラルモーターよりも伝達効率が高い。2モーターは印象的な乗り心地と優れたドライビングダイナミクスを提供する。

 バージョンに応じて「eActros」は3つまたは4つのバッテリーパックから電力を引き出す。それぞれの容量は約105kWhである。最大420kWhというバッテリー容量により、その航続距離は400kmを誇る。そして最大160kWで充電できる。通常の400AのDC充電ステーションに接続した場合、3つのバッテリーパックを20~80%充電するのにかかる時間は、1時間強である。

 さらに、静かで排出物のない電気駆動システムは、夜間の配達作業に適しており、ディーゼル車が禁止されている都心部へのトラックの進入も可能にする。バージョンによっては、eActrosは最大160kWで充電できる。充電電流が400Aの従来のDC急速充電ステーションでは、3つのバッテリーパックが容量の20%から80%まで充電するのに1時間強。したがって、可用性とパフォーマンスの点で、eActrosは日常の流通業務に最適である。

BEV商用車「eActros」用主要コンポーネントの生産が開始された

 ドイツ各地にあるメルセデス・ベンツ工場において、「eActros」の主要コンポーネントの生産が開始された。それらのコンポーネントは2021年10月7日にヴェルト工場で開始された「eActros」の量産に使用される。ダイムラートラックのグローバルパワートレインオペレーション責任者、ヤリス・ピュルスン氏は以下のように述べた。

「当社のバッテリーパック、eアクスル、それに駆動システムコンポーネントは、「eActros」をメルセデスベンツ品質の車両にすることに幅広く関与しており、路上におけるカーボンニュートラルを実現します。メルセデスベンツからの最初の量産BEVトラックは、主要なコンポーネントが最高の品質基準に従ってドイツの場所で生産されます。これはドイツのパワートレインプラントの生産および技術ネットワークの新時代の到来を告げるものです」

マンハイム工場のバッテリーパック生産

 マンハイムの無排出モビリティコンピテンスセンター(KEM)では、バッテリーモジュールを完全なパックに組み立て、機能テストを実施している。量産している「eActros」のバッテリーパックは、6つの個別のバッテリーモジュールで構成されている。組み立てられたパックは、長さ約2.20m、幅75cm、高さ55cmである。ただし、モジュールがパックの一部になる前に、モジュールは金属製ハウジングに取り付けられ、次にバスバー、制御システム、ワイヤといった他のコンポーネントに接続される。続いて、それらは高電圧ケーブルセットに配線され、最高の安全基準を満たす絶縁層が適用される。最終段階では、組み立て済みの金属製ハウジングに電気/電子ボックス(E / Eボックス)が取り付けられる。これにより、後にバッテリーと車両との間のインターフェースが形成される。E / Eボックスは、マンハイム工場でも事前に組み立てられている。バッテリーパック全体の最終機能と漏電テストの後、コンポーネントはヴェルト工場に出荷される。

カッセル工場ではeアクスルの生産が開始

 カッセル工場では、車軸ブリッジ、電気モーター、それにシフト可能なトランスミッション要素で構成されるeアクスルの組み立てが開始された。コアアクスルは最初に組み立て済みである。この組み立てには、ホイールハブとブレーキディスクとをアクスルブリッジに取り付ける作業が含まれる。2速トランスミッションを含むドライブユニットは、並列に事前に組み立てられている。ガゲナウ工場は、このステップで搭載されるトランスミッションコンポーネントを供給している。コアアクスルが事前に組み立てられた後、2ステージトランスミッションを含むドライブユニット全体がアクスルに結合される。eアクスルの出荷前に、機能および高電圧テストが実施され、特に電気的安全性とノイズ特性が検査される。

 eアクスルは従来の車軸と同じ基準で取り付けられている。そのため従来品の生産と並行して、つまりeアクスルの製造・組立工程を既存の生産ラインに統合することが可能となっている。これにより製造プロセスは非常に柔軟であり、コスト効率が高くなる。eアクスルの統合に関する主な焦点は、eアクスルの製造に適合した、またはeアクスル生産のために新たに購入した機械の試運転であった。

ガゲナウ工場ではeアクスルのトランスミッション関連コンポーネントを生産

 ガゲナウ工場では、最先端の製造技術を使用して、トランスミッション関連の機械部品とハウジングを製造している。ここでの主な課題は精度である。トランスミッション部品とスチールおよびアルミニウムのハウジングは、非常に厳しい公差で指定されている。可能な限り正確に生産する必要がある。これはeアクスルが機能し、優れたノイズ特性を備えるために必要である。

 ガゲナウ工場で生産される部品は、外径57 mmの小さな遊星歯車から、外径365 mm、原材料重量40kgを超える駆動輪まで、多岐にわたる。カッセル工場に、合計10個のトランスミッション部品と3個のハウジングコンポーネントが供給される。

著者プロフィール

川島礼二郎 近影

川島礼二郎

1973年神奈川県生まれ。大学卒業後、青年海外協力隊員としてケニアに赴任。帰国後、二輪車専門誌、機械系…