【海外技術情報】ルノー:オンラインカンファレンス(前編)『Renault Eways ElectroPop』でEV戦略を発表

ルノーが先月末、電動化ビジョンを披露するオンラインカンファレンス『Renault eWays ElectroPop(ルノー・イーウェイズ・エレクトロポップ)』を開催した。今回と来週の二つの記事で、そこで発表された内容を翻訳・要約しつつ、公開されたパーツ群の技術図面を紹介しよう。
TEXT:川島礼二郎(KAWASHIMA Reijiro)

 2021年6月30日、ルノーはオンラインカンファレンス『Renault eWays ElectroPop』を開催して、EV戦略を発表した。ルノーのCEOを務めるルカ・デメオ氏は以下のように述べた。

「フランス北部にコンパクトで効率的なハイテクなエレクトリックエコシステムであるRenault ElectriCityを、ノルマンディーにe-powertrainのMegaFactoryを建設することで、国内での競争力を高めています。そしてSTMicroelectronics、Whylot、LG Chem、Envision AESC、Verkorといった、それぞれの分野ですでに確立されたトップクラスの企業群を鍛え上げ、投資し、提携します。
 そして2030年までに、コスト効率の高い都市型コミューターからハイエンドのスポーツカーに至るまで、10もの新しいEVを考案して、最大100万台を製造する予定です。EV普及促進を目指して、当社では多くの人々に愛されている『ルノー5』を当社らしいタッチでEV化して、それを象徴的なデザインとします」

87kWバッテリー

バッテリー:2030年までにアライアンス全体で100万ユニットを生産

 過去の10年のバリューチェーンにおける経験を活用して競争力を更に高めるため、アライアンス内における大胆な標準化を選択します。NMCに基づく化学(Ni;ニッケル、Mn;マンガン、Co;コバルト)と独自のセルの実装により、ルノーはすべてのセグメントで将来BEVの発売の100%をカバーする。2030年にはアライアンス全体で、すべてのレンジで最大で百万台の電動車をカバーする。この選択により、キロメートルあたりのコストで極めて競争力のある比率が実現して、他のソリューションと比較して最大20%長い航続距離が得られ、リサイクル性能が大幅に向上する。

 EV戦略の一環として、ルノーグループはEnvision AESCと提携して、2024年に9GWhの容量を持つギガファクトリーをドゥアイに建設する。2030年までに24 GWhに到達することを目指す。またグループのパートナーであるElectriCityは、将来の『ルノー5』を含む、EVモデル向けの最新技術と、コスト競争力のある低炭素で安全なバッテリーを生産する。

60kWバッテリーモジュール

 また20%以上の株式を保有するフランスの新興企業Verkorの株主になるための覚書に署名した。両社はルノーシリーズのC以上のセグメント、それとアルパインモデルに適した高性能バッテリーを共同開発する。このパートナーシップには、2022年からのバッテリーセルとモジュールのプロトタイピングのためのフランスにおけるパイロット生産ラインの開発が含まれる。2026年から始まる第2のステップでは、Verkorはフランス初の高性能バッテリーのギガファクトリーを構築することを目指す。ルノーグループのバッテリー生産能力は、2030年までに20GWhに上昇する可能性がある。

 ルノーグループは10年以内に、パックレベルで段階的にコストを60%削減して、2025年には100ドル/ kWh未満、さらには80ドル/ kWh未満を目標として、全固体電池を準備する。

パワートレイン:自社のe-パワートレインの調達から製造まで

Whylotの巻線界磁形同期モーター
DC/DCボックスとOBCのモジュール

 ルノーグループは独自の電子モーターを開発することで、競争の一歩先を行く。それが希土類フリーの巻線界磁形同期モーター(EESM)である。既にほとんどの投資を行っているため、グループは過去10年間でバッテリーコストを半減したが、今後10年間で再び半減させる予定である。2024年からはEESMに、ステーターヘアピン、接着モータースタック、ブラシレスおよび中空ローターシャフトといった新しい技術的改善を組み込んで行く。これによりコストを削減して、モーターの効率を向上させる。

 また革新的な軸方向磁束型電動機を製品化するため、フランスのスタートアップ企業であるWhylotとパートナーシップを結んだ。この技術はWLTP(B / Cセグメント乗用車用)で最大2.5gのCO2を節約しつつコストを5%削減するハイブリッドパワートレインに最初に適用される。ルノーグループは2025年から大規模に軸方向磁束型電動機を生産する最初のメーカーになる。

 パワーエレクトロニクスについては、インバーター、DC-DCと車載充電器(OBC)を自社生産の独自ボックスに統合することで、バリューチェーンの制御を拡大する。このワンボックスプロジェクトはコンパクトな設計であり、800Vに準拠して、コスト削減のため部品点数が減らされる。そしてすべてのプラットフォームとパワートレイン(BEV、HEV、PHEV)で使用されることで、スケール効果が得られる。このパワーモジュールには、STMicroelectronicsとの戦略的パートナーシップに基づいて、炭化ケイ素(SiC)と窒化ガリウム(GaN)が使われる。

 これらの新技術に加えて、グループはオールインワンシステムと呼ぶ、よりコンパクトなe-パワートレインにも取り組んでいる。これは、モーター、減速機、パワーエレクトロニクス(ワンボックスプロジェクト)を1つのパッケージに統合することで構成される。合計で45%の容量(現行Clioの燃料タンク容量に相当)を削減する。パワートレイン全体では30%のコスト(モーターのコストと同等)削減、さらにエネルギーロスを45%削減することで、航続距離が最大20km延長される。

著者プロフィール

川島礼二郎 近影

川島礼二郎

1973年神奈川県生まれ。大学卒業後、青年海外協力隊員としてケニアに赴任。帰国後、二輪車専門誌、機械系…