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GMがデトロイトのハムトラミック工場に22億ドルの巨額投資をして全面改修し、さまざまな全電動ピックアップ・トラックやSUVを製造すると発表してから2年足らずで、「ファクトリー・ゼロ」での生産が開始される。GMの会長兼CEO・メアリー・バーラ氏は「GMの米国における製造専門技術こそ、私たちが全車電動化の未来を実現する鍵となります。今日はGMチーム全体にとって記念すべき一日です。私たちはお客様にとって最高品質のEVを製造するために、世界で最も優れた最先端の技術を駆使して『ファクトリー・ゼロ』を改修し、完成させました」と述べている。
「ファクトリー・ゼロ」では、ピックアップ・トラックの2022年型「ハマーEV(GMC HUMMER EV)」、2024年型「ハマーEV SUV(GMC HUMMEREV SUV)」「シボレーシルバラードEV」「クルーズオリジン」のほか、未発表のEVの生産が予定されている。フル稼働時には、2,200名以上の雇用を創出する見込み。
「ファクトリー・ゼロ」で導入が開始される「アルティウム(Ultium)」バッテリープラットフォーム
「ファクトリー・ゼロ」で製造されるすべてのEVは、GMのEV商品戦略の中心である「アルティウム」バッテリープラットフォームをベースに生産される。「アルティウム」バッテリープラットフォームには、共通の車両アーキテクチャに加え、バッテリーセル、モジュール、パック、ドライブユニット、EVモーター、統合パワーエレクトロニクス等の推進コンポーネントが含まれ、EV生産工場の基盤となっている。
GMは、「アルティウム」バッテリープラットフォームを通じて、機械、工具、組立工程の共通化と合理化を図ることで、車両組立工場のネットワーク全体でバリューチェーンの戦略的シフトを実現。このような柔軟性によって、組立工場でさらに改修が行われた場合でも、設備投資を抑え、より効率的な対応が可能になる。
GMの競争力の証しである「ファクトリー・ゼロ」
GMは、更地に新工場を建設する費用の3分の2で「ファクトリー・ゼロ」をEV専用工場に転換した。これは今後、GMが工場を改修する際のモデルとなる。GMは全車電動化の未来へ向けての移行を進めており、新たに工場を建設せずに既存の工場を改修することで、2030年までに資本コストを最大150億ドル削減。低減できる資本コストは200億〜300億にのぼる。この資金は、顧客に対応した商品やサービス、技術に対して、より戦略的に再投資することができる。
資金面でのメリットに加えて、GMのEVへの移行期間中に既存の生産工場ネットワークを刷新するGMの取り組みは、時間の短縮にもつながる。立ち上げと生産開始を早めることで、新しく革新的なEVをより短い期間で顧客に届けることが可能。ピックアップ・トラックの2022年型「ハマーEV」は今秋に「ファクトリー・ゼロ」で試作車両の製造が開始され、「ハマーEV(GMC HUMMER EV)」の生産第1号車は、年内に顧客に納車される予定。
GMグローバル・マニュファクチャリング・サステナビリティ担当エグゼクティブ・バイス・プレジデントのジェラルド・ジョンソン氏は「私たちのEVへの野心的な移行を実現するため、北米におけるEV生産能力は2025年までに20%、2030年までには50%に達する見込みです。『ファクトリー・ゼロ』は、今後世界中の工場で実施されるEV工場へのシフトのモデルになるでしょう」と述べている。
バーチャルツールを活用し、生産技術部門と連携することで、GMは生産開始までの期間を2年から1年未満に短縮し、競争上の優位性を確立した。これに対して、組立工場を新たに計画・建設する場合、用地の選定から車両の生産開始まで最大で4年かかる。
GMは、EVの組立工程の80%が従来の車の組立工程と同じだと見込んでいる。これもGMのスピードの原動力。GMは過去数十年にわたり、独自の標準化された生産工程を改良し、完成させてきた。今後はより早く、高品質・低コストでEVラインアップの拡充に推進していく。
「ファクトリー・ゼロ」最大の資産は人材
「ファクトリー・ゼロ」を支えているのは、GMのグローバル製造部門で自動車産業の問題解決に当たってきた9万人以上のチームスタッフであり、彼らの経験年数は合わせて140万年にも及ぶ。彼らは年平均11件も内燃エンジン(ICE)車とEVの両方に携わっている。その結果、GMはICE車と同じ労働時間でEVを生産することが可能だ。
ジェラルド・ジョンソン氏は「人材こそがGMの真の優位性であり、これは買うことも、素早く構築することもできない強みです。『ファクトリー・ゼロ』では、ユニットあたりのコストを抑えながら、EVとAV(電動自律走行車)のローンチを安全、高品質、迅速に成功させるためのトレーニングを行い、経験を積み重ねていきます」と述べている。
「ファクトリー・ゼロ」:持続可能性への取り組み
「ファクトリー・ゼロ」はEV組立工場として、GMが発表している2035年までに新型小型商用車からの排出ガスを全廃し、2040年までにグローバルな製品と事業活動においてカーボンニュートラルを実現するという取り組みにおいて直接的な役割を果たす。またGMは、すでにEVとAVに350億ドルを投資し、2025年までに30車種以上のEVモデルを世界市場に投入する計画。「ファクトリー・ゼロ」は、GMが持続可能な方法でビジネスを行っていくことを立証していく。
「ファクトリー・ゼロ」のハイライトは以下の通り。
・GMは旧工場の床の破砕コンクリートを工場周辺の仮設道路で再利用するなど、工場の改修で発生したほぼすべての資材をリユースまたはリサイクル
・雨水をリサイクルすることで排水コストを削減し、飲料水コストを相殺
・雨水を処理し、冷却塔や工場の消火システムに活用
・工場内にはDTEエナジー社製のソーラーカーポート(30kW)と地上設置型ソーラーパネル(516kW)を設置
・「ファクトリー・ゼロ」の敷地内にはオオカバマダラ、キツネ、シチメンチョウのすみかとなる約16.5エーカーの野生生物生息地を確保
GMは「ファクトリー・ゼロ」を通じて、製造業のリーダーとしての手腕と、全車電動化の未来への移行に伴うモビリティの根本的な変化への対応力を示している。