エンジンマウントの難しさ。硬くてもダメ、柔らかくてもダメ。[内燃機関超基礎講座]

好き勝手に暴れまわるパワートレーンを制御しないと、市販車の商品性は成立しない。エンジンマウントにはどのような役目と仕組みが与えられているのだろうか。

上の図はペンデュラムマウント(後述)でエンジンの気筒数による防振特性の違いを示したもの。4ストロークエンジンエンジンの場合、4気筒ではクランク1回転で2回の燃焼が起きる。つまりエンジン回転振動の2次成分が燃焼加振力=トルク変動となる。これが3気筒では1.5次となり加振力は増え、特にアイドル付近の振動が問題となるため、同じマウントを使うとすればエンジン回転数を高くしなければならない。コスト面でバランサーを使わないことが多い廉価車では、1次振動にも対処しなくてはならない。逆に6気筒では3次成分となって振動成分が人間に感知されにくくなるため、回転数を下げても問題がなくなる。慣性主軸に拘らなくて済むので、マウントの位置や素材の硬さにも自由度が高くなる。

パワートレーンのマウントシステム

ペンデュラムマウント

Pendulum(振り子)の名のごとく、エンジン上部を前後方向から吊るように弾性支持する横置き特有の方式。駆動反力に対抗するため下部をトルクロッドで支える。アイドル振動と駆動反力の抑制バランスがよいとされる。実質2点支持のため大きな質量のエンジンには不向きだと言われる。

3点+トルクロッド支持マウント

ペンデュラムがボディ骨格からエンジンを「吊る」のに対し、クロスメンバーに「置く」方式。慣性主軸に対し重心主軸ともいえる方式で、縦置きFRマウントの多くはこの手法(エンジン左右とトランスミッション左右の4点支持)。FF用では小数気筒エンジンの振動は吸収しにくい。

慣性主軸十字マウント

エンジンの慣性主軸上の前後左右で支持する方式。前後方向を主支持とするタイプと左右方向を主とするタイプがある。ペンデュラムも慣性主軸方式の一種だが、主軸に対しマウント位置が上にずれる。十字マウントでは主軸と一致させることができる。

FR車のマウント

エンジン両脇にマウントをひとつずつ、トランスミッション後端に一カ所の、合計3点でサブフレームに留める例。一般的に縦置きパワートレーンは横置きに比べて振動対策に余裕がある。

マウント部材の種類

・支持機能 パワープラントをボディに繋ぎ質量や駆動反力を支える。
・防振機能 パワープラントの振動がボディに伝わるのを抑制する。
・制振駆動 反力や路面入力により発生する振動を抑える。
ソリッドマウント:他の構造より低コストで容積が少なくできる。ロスファクターを高く採りたいエンジンシェイクと、バネ定数を低くしたいアイドル振動と2要素のバランス確保が難しい。
流体マウント:ゴムマウントの中に液体を封入し、別室とされた副液室とを隔てるオリフィスを液体が通過する際の抵抗で振動を抑制する、サスペンションダンパー同様の構造。
切替式流体マウント:オリフィス下部の負圧弁でオイル流路を変えて、走行時はバネ定数を高く、停車時は低くし、エンジンシェイクとアイドル振動という相反する振動抑制を両立させる。
ACM:切替式流体マウントに電磁アクチュエーターを付加し、エンジンからの振動入力と逆位相の振動を発生させて車体へ伝わる振動をキャンセルする。
トルクロッド:「支持」「防振」「制振」というエンジンマウントの3大機能のうち、制振、それも駆動反力の抑制に特化した部品。エンジンの変位規制と音振性能を両立させる。

防振ゴムに求められる特性

エンジンマウントの防振ゴムの硬度は、タイヤの駆動力が反力としてエンジン側に伝わる大きさ=前後揺動と、サスペンションが規定する最大ロール角=左右揺動とのバランスを考慮して決定される。横置きFFと縦置きFRを比較した場合、最大ロール角に違いはないが、駆動力がデフを含めて後輪に回されるため、FRでは反力が小さくなる。その分防振ゴムを柔らかくすることができ、防振への対処は相対的にFRの方が有利といえる。

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