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NA用の2JZをベースに1000馬力オーバーのフルチューンを構築!
JZS147はいまだ現役のチューニングベースだ!
今回紹介するJZS147アリストは、千葉県のシードレーシングが手がけたナンバー付きドラッグスペシャルだ。エアコンなど快適装備を残したストリート仕様ながら、ゼロヨンで10秒196を記録する俊足マシンである。

オーナードライバーの安室さんは、すでに30年以上のキャリアを持つベテランドラッガー。これまでにも30ソアラをベースにしたドラッグマシンや、RX-7などで競技に参戦してきた経歴を持つ。
そんな安室さんだが、一時期は走行から離れていた。しかし10年ほど前、復帰を決意し、2JZ-GTEを搭載したMT車を探していたところ、このアリストに出会ったという。

購入当初、すでにMT化は施されていたが、エンジンはほぼノーマルの状態だった。そこからブーストアップ仕様を皮切りに、過去に所有していた30ソアラで使用していたT88-34D仕様へと順調にステップアップしていった。
しかし、約3年前にオイルポンプトラブルによってエンジンがブロー。現在は予算の都合から、NA仕様(2JZ-FE)のブロックに純正ターボ用ピストンを組み合わせて再生された。カム以外のヘッド周りやクランク、コンロッド、ピストン類は、ブローしたターボエンジンからの流用である。
なお、NA用とターボ用のブロックには、オイルジェットの有無やオイルライン設計などに違いがある。そのため、通常はターボ仕様に準じた加工を施して使用するのが一般的だ。しかし安室さんのアリストは、ゼロヨンという短時間勝負の競技特性と、緻密なセッティングの成果により、これまでトラブルなくベストタイムを更新し続けている。現状のベストは10秒196(終速226.42km/h)という驚異的な記録だ。



現在のタービンは、GCG製エキマニにギャレットG42を組み合わせた仕様。制御系はHKSのF-CON Vプロで、レブリミットは8500rpmに設定。1000ps超のパワーを引き出している。スロットルはインフィニティ純正を流用し、点火系はHKSの試作品コイルで強化されている。

現在は車検を切り、クローズドコース専用マシンとなっているが、公道復帰を見据えてダッシュボードやエアコンなどの装備はそのまま維持されている。ミッションはホリンジャー製の6速シーケンシャルが組み込まれている。

取り外されたリアシートなども、復元できるように保管しており、自走でドラッグイベントに参加していた際は、このスペースに工具やタイヤを積んで出走していたという。セダンならではのリヤドアからアクセスできる点も、使い勝手の良さとして語ってくれた。

ABSも残しているため、ラインロックは2系統でセットアップされている。このあたりも、ストリート走行を意識した仕様と言える。

高出力にさらされるリヤメンバーには補強が施され、デフマウントもリジッド化。これにより、パワーをしっかりと路面に伝える構成となっている。
サスペンションは、フロントをあえてノーマルに戻し、リアのみHKSのハイパーマックスに変更。外径28インチのドラッグスリックを履くための車高調整や、トラクションを確実に伝えるためのしなやかな動きを狙ったセットアップだ。
現在リヤタイヤは、フージャーのDR2ドラッグラジアル(P325/50R15)を使用。ホイールは定番のパナスポーツG7-C5Rが選ばれている。

「アリストは車重が重いぶん、どうしても不利な部分も多いんですが、そのハンデを背負って戦うのが楽しいんです。逆にフェンダー内が広いので、外径28インチのドラッグタイヤも無加工で履けるのは大きなメリットですね」と安室さんは語る。
不利を承知で挑み、それでも結果を出す。その姿勢こそが、彼にとっての誇りであり、アリストで勝つことこそが、何よりの歓びなのだ。
●取材協力::シードレーシング 千葉県柏市藤ヶ谷562-8 TEL:04-7138-6340
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