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D1GP2003年シリーズ“最強”の称号を手にしたFD3S
初期のD1GPを大いに盛り上げた名チューンドの登場だ。アペックスFD3S、2002年の第4戦(筑波ラウンド)から実戦投入され、その翌年にシリーズチャンピオンを獲得した最強のロータリースライダーだ。ここでは、今村陽一選手のドリフトスタイルに合わせて進化を続けた至宝のマシンメイキングに迫っていく。(OPTION誌2004年2月号より抜粋)
優勝の秘訣は絶対に壊れないマシンメイク
蓋を開けてみればワークス勢初のシリーズチャンピオン獲得。ポイントランキング初の100ポイントオーバー達成。D1初のシリーズ3勝という、前人未踏の記録を連発することになった今村選手擁するアペックスワークス。
その走りを支えるFD3Sは、徹底した耐久性重視のメイキングがポイントだ。D1GPでトップクラスの成績を収めるマシンの中には、戦闘力はあるが耐久性に難ありというマシンも少なくない。「走り続けなければ勝てないですからね。戦闘力が多少落ちてでも壊れない方が良い」と今村選手は愛機を眺めながら語る。細部を見ていこう。
バンパーを外すと、ワンオフパイピングによってVマウント化されたラジエターとインタークーラーが現れる。オイルクーラーは純正2基がけだが、効率を重視してマウント位置を変更している。エンジン本体はサイドポート拡大加工とシール類のWPC加工のみで特別なことは特に行っていないという。
タービンはアペックスのAX75F82キットをそのまま装着。ノーマルポートではブースト1.0キロが限界で440psほどの出力だったそうだが、ポートチューンを施した現在のエンジンでは1.2キロまでブーストを上げることが可能となり、その最高出力は500psに到達した。
ロータリーエンジンの泣き所とも言える中低速でのトルク不足を解消するべく、導入されたのはNOSのウエットショット。最高出力こそ変わらないものの、中低速域での爆発的なトルクアップを実現している。
足回りは一般ユーザーレベルと言っていい。N1ダンパープロは完成度が高く、今シーズンはバネレートすら前後16kg/mm固定のままだったという。ブレーキに至っては純正の16インチ用キャリパーとローターをそのまま使用している。フロントにはアペックスの調整式スタビライザーも装備。
FRPリヤゲートを開けると、追加燃料ポンプとコレクタータンクが納められたカーボンボックスとNOSボンベが顔を出す。パーコレーションを防止する燃料クーラーも装備。
ワンオフ製作のアンダーカバーは、空力のためというよりもVマウント化したラジエターの保護がメインの目的だ。
インテリアはセッティングに必要なメーター類をセットした程度で、ほぼストック状態。シフトレバーの側には、ブレーキバランサーとスタビ調整の油圧コントローラーをセット。ロールケージはサイドバー付きの6点式で、さらに各開口部にはスポット溶接増しを行ない剛強ボディを作り上げた。
エアロパーツはVERTEXのフルエアロ。フロントフェンダーはサンアイワークスで、リヤフェンダーは20mmの叩き出し加工を実施。ホイールはグラムライツ57F-PROの18インチでフロントが9.0J+18、リヤが10J+22というサイズ構成だ。
「ワークスの看板車である以上、トラブルで走行できないなどということは絶対に許されません。マイナートラブルが起こらないよう徹底的に拘って製作しています」とはアペックスメカニックの弁。実際、そこから生まれるマシンとドライバーの信頼関係こそが、アペックスワークスの強さの秘密なのかもしれない。
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アペックス
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