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究極のGS-Rを追い求めた男の物語
シビックSiが搭載するK20Z3エンジンをスワップ!
90’sに輝きを放った日本車として、日本以上に海外での評価が高いのがホンダ。NSXやシビックと並ぶ人気を誇るのがインテグラで、2代目のDA型が89年、3代目のDC型が93年にデビューした。
アキュラから発売された北米仕様のDC2にもタイプRは設定されたが、日本仕様より最高出力とレブリミットが若干下げられていた。そのため、一部のマニアの間では「北米仕様をベースに日本仕様のタイプRを超越する」ことが、激しく官能を呼び起こす行為として共有されている。その好例であり「究極のインテグラGS-R」宣言をぶち上げたのが、今回紹介するマシンだ。
DC2型のホンダ・インテグラは日本仕様の場合、初期型のみ丸目4灯デザインを採用していた。95年に角形ヘッドライトに改められ、同時にタイプRも発売されたことから、多くの人がDC2と聞いて思い浮かべるのは後者のイメージだろう。
一方、北米仕様のDC2(アキュラ・インテグラ)は最後まで丸目4灯デザインで、後に登場したタイプRも同様。それ故、実際には丸目の日本仕様もごく少数存在するとはいえ、なんとなく丸目=北米仕様というイメージが定着している。
今回紹介する小林さんが所有する丸目のDC2も、正真正銘左ハンドルの北米仕様。「GS-R」というグレードで、ノーマルのエンジンは1.8LのB18C1型直列4気筒を搭載した。最高出力は172psと、北米仕様では198psとなるタイプRに次ぐ存在。オプションでレザーパッケージが選べたことから、役付きのタイプRは別として、豪華仕様の最上級グレードと捉えることもできる。
元々、CW2型のアコードツアラーでUSDMを極めるカスタマイズを行ない、Wekfestジャパンなどのショーでアワードも獲得してきた小林さん。アコードツアラーではやり切った想いがしたので、今度は90年代ホンダの2ドア車に乗りたいと思っていたところ、北海道の知人からGS-Rを譲ってもらうことになったそうだ。そして、再びショーでトップの成績を取れるクルマに仕上げようと、「究極のGS-Rを作る」というテーマを立ち上げたのである。
まずエンジンは、同じく北米仕様の08年式シビックSiに搭載されていた2.0LのK20Z3型直列4気筒へとスワップ。最高出力は期せずして日本仕様のDC2型インテグラタイプRと同じ200psで、載せ替えと同時に同じ土俵に立つ禁断のパワーアップ術を召喚したわけだ。
さらに、アコードツアラーで使用していたCTエンジニアリング(旧コンプテック)のスーパーチャージャーも搭載し、ドーピングによるタイプR超えもアッという間に実現。エンジンの載せ替え作業と始動させるまでの作業は岡山県のライコンで行ない、「純正で最初からそうなっているような載せ方をして欲しい」という小林さんからのオーダーに応えた。
M62というルーツ式スーパーチャージャーはK20Z3にボルトオン可能なキットが市販されており、ブースト圧0.35〜0.42キロでプラス50〜70psのパワーアップが見込める。スロットルボディはK-Tunedの90φ仕様。その両者を繋ぐアダプターはオーナーの小林さんが本業の技術を活かして削り出しで作った逸品だ。
HASPORTのKスワップ用エンジンマウントを使用するが、ボディ側のブラケットは敢えて付属品を使わず、ノーマルと同形状でワンオフ製作。「できるだけ純正っぽくしたい」という小林さんのオーダーに応えた。
KOYORADをベースにしたタックドラジエターとファンシュラウドは、Kスワップ専用の作り物を多く手がけているアメリカのTrac Tuffから調達。エンジンの横に備わるスワールポット(ブリーザータンク)とオーバーフロータンクも同様で、機能性とすっきりした見た目の両立に貢献している。
純正のレザー内装を活かしたインテリアにはレナウンの130Rというレザーステアリングを装備。トランスミッションがCL7の6速MTに変わっているため、位置合わせとリンケージにはアキュラTSX純正のシフターボックスとケーブルを利用した。
シートは電動リクライニングとシートヒーター、手動のランバーサポートが備わるレカロのスポーツスターを装備。リヤシートも同じタイプのレザーで張り替えを行ない、統一感を生み出している。
アンダーボディもサファイヤブルーメタリックで塗装。リヤサスにはComptechのリヤサブフレームとスタビライザー、FCRのロワアームのほか、PCIのトレーリングアーム、トーアームなどが組まれ、アライメント調整に対応する。
トランクルームにエアリフトのコントロールユニットやエアタンク、コンプレッサーをインストール。ダンパーは静岡県のシビック専門店であるサウスサイドが開発した、細身のエアバッグがついたものを使用している。
ちなみにワイヤータックやシェイブドベイ、エアサスを使用した足回り、排気系のワンオフ製作など、メインビルダーとして数多くの作業に関わったのが栃木県のグルービーラインだ。
ホンダアクセスのサイドステップとリヤスポイラー、アキュラ純正オプションのアンダーボディスポイラーを装着。ゴムモール類はすべて新品に交換されている。
アメリカのタイムアタック系プロダクトメーカーであるSpecial ProjectsのP1フロントリップを装着。クリアのサイドマーカーはUK仕様にコンバートされている。
ホイールはアメリカの鍛造ブランド、タイタン7のT-R8を装着。タイタン7は車種専用の削り出しワンピースホイールを提供しているが、DC2用はないためNDロードスター用として展開されている9.0Jプラス45×17インチを履かせている。フロントブレーキは4ポットのStoptech STR40と328mm2ピースローターの組み合わせ。
ボディの塗装は同じく栃木県のマーヴェリックによる仕事で、実は下回りに至るまでポルシェ純正色のサファイヤブルーメタリックでペイント。まるでホットロッドのような徹底したボディワークを実現している。宣言通り究極を極めたGS-Rは、そこいらのタイプRが霞んで見える迫力と美しさを我が物とした。
●取材協力:MAVERICK 栃木県下都賀郡野木町佐川野1894-7 TEL:0280-23-4488
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