「軽自動車の200馬力仕様は現実的なのか!?」HA36S型アルトワークスの可能性に賭けたチューナーの挑戦

R06Aチューニングの次なる一手!

大型タービンを回し切ることで200馬力の大台を達成する

熟成が進み、排気量アップせずとも200psオーバーが当たり前になりつつある令和の軽自動車パワーウォーズ。その中でも、アルトワークス(HA36S)チューニングの第一人者として、その先頭を走り続けるのが大阪府に店舗を構える“キャドカーズ”だ。

「当社のチューニング方針は、パワーを上げてそれで壊れるところを対策する…というのが基本。その上で、パーツを交換したことで起こりうるバランスの悪化を整えていく。デモカーでこの行程を繰り返しているわけですね」とは、キャドカーズ石川さん。

軽自動車での200ps仕様は20年以上前から存在していたが、当時のベースエンジンやチューニング技術では、耐久性を犠牲にした扱いやすさ度外視の“ドッカン型”が関の山だった。対してR06A型を含む最新のエンジンでは、可変バルブタイミング機構を活かした高精度なセッティング技術により、低中速の扱いやすさを維持しながら高出力化が狙えるようになっている。

具体的にR06Aエンジンで200psを狙う場合、キャドカーズでは定番の三菱TD03L(レスポンスと馬力のバランスに優れる)ではなく、より高風量のGCG製GBCシリーズを選択することが多いそうだ。現在は、小型のGBC14タービン(画像左)からGBC22タービン(画像右:R34GT-Rと同じサイズ)までのマッチングをテスト中だ。

170ps以上のハイブースト仕様は吸気温度が厳しくなるため、オリジナルのインタークーラーは大幅にサイズアップして対応。コアの面積を倍まで増やしつつ厚みを抑えた設計だ。

開発中のピストンは、アメリカのドラッグレースなどにパーツを供給している2輪メーカーに製作を依頼した鍛造削り出しのスペシャル。形状は純正(画像右)に似ているが、トップランドは落ち込みが深く、ピストン/オイルの両リングは純正と比べて幅広になっている。さらに、ピストンの裏にはクーリングチャンネルを設けるなど、高出力に対応する工夫が見られる。

なお、現在の主要エンジンの大半はシリンダーが肉薄化され、コーティングすることで摩耗/フリクションを抑えている。そのため、エンジン本体のチューニングはボーリングをしないのが基本だ。そこで新たなピストンは、ピストン側の径を変えることによってシリンダーとの最適なクリアランスを検証している。ちなみに、純正ピストン/コンロッドの強度限界は160ps前後とのことだ。

I断面形状のコンロッドは、アメリカのキャリロに製作を依頼。コンロッドも太めのボルトでしっかり締結されている。一方のカムは、GBCタービンに合わせて新たなプロフィールを採用。VVTをフル活用するべく、掃気干渉を避けながら充填効率を引き上げることで中速域のトルクを増強させる狙いだ。

なお、クランクシャフトは初期型こそスラストメタルの落下などのトラブルが多発したが、現在は対策されており新品を組み込めばハイブーストでも問題ないそうだ。

ヘッドガスケットは純正もメタル製だが、シリンダー部分のシートリングが片側しかないため、シール性は低く、特にブロックに歪みが出た時などには水漏れ(ガスケット抜け症状)が起こりがち。

以前は1.5mm厚が最適と考えていたが、その後のテストで馬力を出すためにはカムチェーンがかかるギリギリの1.8mm厚がベストという結果が出た。ただし、新品ではチェーンの張りがきついため常用は不可(ブロックの歪み修正の面研を行っている車両は装着可能)とのこと。

現在、キャドカーズでは200ps仕様の熟成とバグ出しを進めており、さらなるブラッシュアップを経て近い将来メニュー化される予定だ。格上を蹴散らせる圧倒的な戦闘力を求めるHA36Sオーナーは、今後の動向に注目すべし!

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●問い合わせ:キャドカーズ 大阪府和泉市納花町406-4 TEL:0725-58-1323

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【関連リンク】
キャドカーズ
http://www.cadcars.info

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