「手組みSTIエンジンが感動的!」過激すぎる初代レガシィRSタイプRAに緊急試乗!!

素のEJ20とは明らかに違う、キメの細かい回転フィール

絶妙なギヤ比のクロスミッションがパワー以上の加速力を見せる!

初代レガシィの登場は1989年。セダンには当初から、EJ20ターボ+5速MT搭載のスポーティグレード、RSがラインナップされていた。

同年秋、RSの装備簡略化と足回り強化を行った競技用ベースモデル、RSタイプRが登場。その2ヵ月後、タイプRをベースとして、STIが各部にチューニングを施すことで誕生したのがRSタイプRAだ。

まず注目はタイプRA専用エンジン。220ps、27.5kgmというスペックはRSやタイプRと変わらないが、STIのスペシャリストがファインチューン。吸排気ポートの段付き研磨修正やムービングバランスの最適化などにより、エンジンレスポンスのシャープさを増している。

また、後のパワーアップを見据えて鍛造ピストンや銅と鉛の合金であるケルメット材を使った高耐圧コンロッドメタルが採用された他、デュアルタイプのラジエター電動ファンで冷却性能も高められる。ちなみに、インタークーラーは水冷式だ。

そんなスペシャルエンジンは見た目も特別。エンジンルームからチラリと覗くヘッドカバーがゴールドで彩られているのだ。これこそ、職人の手作業で組み上げられたタイプRA専用エンジンの証となる。

また、ミッションは100台限定の最初期モデルA型のみRS/タイプRと共通で、後のB~D型は専用レシオを持つ5速フルクロスMTを搭載した。

足回りはタイプRで強化済みだったが、市販状態での国内競技参戦を視野に入れたタイプRAは、より実戦的なセッティングに。バネレートはタイプR比で前22%(2.63→3.2kg/mm)、後34%(2.17→2.9kg/mm)高められ、ダンパー減衰力も全面変更。さらに、可変ギヤレシオを持つバリアブルクイック・パワーステアリングも装備する。

同時に、軽量化も徹底。タイプRで省かれたパワーウインドウ、集中ドアロック、リヤワイパー&スポイラーや、ルーフトリム&サンバイザーの塩ビ化に加え、タイプRSではラジオ、スピーカー、アンダーコート、トランクマットを廃止。RS比マイナス40kgの1290kgという車重を実現していた。

取材車両は最終モデルD型のRSタイプRA。オーナーO氏宅から撮影場所まで往復約150kmを一般道~高速道路~ワインディングと、およそ考えられる全ての状況で試乗した。

純正MOMO製ステアリングも含め、見事なまでにオリジナル状態を保ったインテリア。パワーステアリングはエンジン回転数感応型で、直進時15:1~最大転舵時13:1とギヤレシオが変化するタイプRA専用バリアブルタイプが搭載される。

メーターパネルのデザインは後のGC系インプレッサにも通じるもの。7500rpmから始まるレッドゾーンが、タイプRAであることを物語る。ちなみに、5速巡航時のエンジン回転数は100km/hで3200rpm、120km/hで3800rpm。ギヤレシオの低さを実感するが、スムーズ極まりないエンジンフィールのおかげでストレスフリーだ。

空調操作パネルは設けられるが、エアコンは装備されない。「元々シフトノブは革巻きでしたが、乗っているうちに取れてこうなってしまいました」とオーナーO氏。

サポート性に優れるのはもちろん、座面、シートバック共にゆとりのサイズとされたフロントシート。全面で身体を支えてくれるため、長距離ドライブでも疲れ知らずだ。

走り出してまず感じたのはボディのしっかり感。20年落ち、走行17万kmとは思えない。「グループA仕様でも定評ある高剛性ボディ」とうたった、当時のカタログの一文に偽りなしだ。

エンジンは、エキゾーストサウンドこそ不等長EXマニを採用する初期EJ20のそれだが、普段の足として乗るGC8に比べて、遥かに吹け上がりが軽い。元々、水平対向は回転バランスに優れるが、エンジン回転数の上下に伴う振動は皆無に等しく、実に緻密で濃厚なフィーリング。型式はEJ20…でも、タイプRA専用エンジンは別格だ。

さらに、ノンオーバーホールにして絶好調を保つのは、3000km毎のオイル交換を欠かさず、プラグや点火コイルなども自ら交換するという、O氏のマメなメンテの賜物と言える。

片側2車線の国道に出てペースアップ。220psというパワーは決して驚くほどではないが、絶妙に割り振られたギヤ比を持つクロスミッションが、パワー以上の加速力を見せてくれる。

足回りは「これでノーマル?」と思うほど締め上げられている。一般道では路面の凹凸を逐一拾っては細かなピッチングに見舞われ、お世辞にも乗り心地が良いとは言えない。

が、高速道路に入ると印象が一変。ドライバーに衝撃を感じさせることなく、継ぎ目を越えてもタンッ…と一発でいなし、フルタイム4WDと相まって盤石の操安性を披露。剛性感抜群のボディも含めれば、その走りはドイツ車に匹敵すると言っても過言ではない。

タイプRAで走って最も楽しかったのは、エンジン特性とギヤ比、足回りセッティングが1点でピタッとバランスするワインディング。7000rpm+αを目安にシフトアップしていけば、パワーバンドを外すことなく、右足の動きに直結した鋭いダッシュが繰り返される。

コーナーでの身のこなしも軽く、ロール感は最小限。深く回り込んだコーナーでは、バリアブルレシオのステアリングが活きる。追い込むほどに鼻先がグイグイとインに向かい、タイヤグリップの限界を超えない限り、終始オン・ザ・レール感覚で走れてしまう。

単に速さを求めるのではなく、本来の意味でのチューニング=調律が図られたRSタイプRA。メーカーワークス、STIの仕事ぶりに感服だ。

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PHOTO:岩島浩樹(Hiroki IWASHIMA)/TEXT:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)

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