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フロントにSR20VETを、リヤにK20Aを…


栃木県日光市でドリフトに特化したスペシャルショップとして活動する“サーキット&ドリームスCLR”。東京オートサロン2025に出展したのは、なんとトヨタ・セラのフロントに日産のSR20VET型直列4気筒ターボ、リヤにホンダのK20A型直列4気筒ターボを搭載したツインエンジン車両だ。
将来は運転席でリヤEg、助手席でフロントEgを操作するツインコクピット化を構想!

そもそも、CLRがツインエンジン車両を作ろうと思った最初のきっかけは、かつてモンスタースポーツがパイクスピーク・ヒルクライム参戦車両として開発したV6ツインエンジンのスズキ・エスクード。そのカッコ良さに憧れ、いつかはツインエンジンを自分で製作してみたいという夢を抱いていたそうだ。そのベースとしてセラを選択した理由は、「ドアが上に開いてカッコ良いから」というシンプルなものだ。

前後に搭載するエンジンにSR20DETにVEヘッドを備える通称「SR20VET」と、現行の直列4気筒ではチューンドベースとして最強の呼び声が高いホンダのK型から「K20A」のターボ仕様を選んだ理由も聞いてみた。
「まず前後とも同じエンジンを使うツインエンジンは他にも例があるので、恐らく世界初だと思われる前後で違うエンジンで作ることにチャレンジしたかったのが理由です。もうひとつは、前後とも可変バルブ機構付きエンジンで統一したかったので、SR20VETとK20Aターボの組み合わせとなりました。ホンダと日産の合併には驚きましたけど、単なる偶然です(笑)」

フロントに搭載されるSR20VETは、CLRオリジナルの86φ鍛造ピストンとH断面コンロッド、パルサーVZRカムなどを組み込み、トラストのTD07-25Gで過給。前後のエンジンはフロントがMoTeC M800、リヤがMoTeC M400で個別に制御されており、SR20VETは最高出力550psを誇る。

フロントのトランスミッションはK20A用の6速MTで、アメリカのMazworx(マズワークス)製アダプタープレートを使ってSR20とドッキング。フロントのエンジンメンバー、サスペンション、ホイールハブなどはFD2型シビックタイプRから流用しており、ドライブシャフトはホンダ純正をそのまま使用している。前後ともに鋼管サブフレームを製作しているが、エンジンのセンター出しには相当苦労したそうだ。

リヤに搭載されるK20Aも、ワイセコの86φ鍛造ピストンとK1のH断面コンロッド、戸田レーシング296度カムなどで内部を強化。こちらもTD07-25Gで過給され、最高出力は500psを発揮する。風量の増大に伴い、インジェクターは前後エンジンともに1000ccへと増量されているが、燃料タンクはセラの純正を使用。そこからツインポンプで前後用として別々に設けた2個のコレクタータンクにガソリンを送り、各コレクタータンクにもツインポンプを設ける燃料系を構築している。


リヤのサスメンバー、サスペンション、ホイールハブなどは、DC5型のインテグラタイプRから流用。トランスミッションもK20A用の6速MTで、当然ながらドライブシャフトもそのままホンダ純正を流用している。ほぼインテRのフロントをセラのリヤにごっそり移植しているようなイメージだ。「リヤサスペンションにフロント用のマクファーソンストラットを継承していますので、将来的にはダブルウィッシュボーンとか完全に作り替えるのもアリだと考えています」とのこと。

現状はまだ第一形態とのことで、タイヤもリヤのサイドラジエターも剥き出しの状態。これから外装を整えて、クルマらしい格好になるところまで完成させていくそうだ。
「ドリフト用に作ったつもりだったんですが、あまりに速くてコントロールもしにくいので、ヒルクライムやタイムアタックで使うのも良いかなと思っています」と言う。外装とディテールがカッコよく決まれば、かなり海外ウケも良さそう。実際にオートサロン会期中はSNSでもかなりバズっていた。


前後のエンジンは個別に制御されているため、セルスタートスイッチやメーターも個別に用意。「前後で引きずりなどが発生しないようギヤ比だけは揃えたかったんです。なので同じK20A用のトランスミッションで統一することにしました」。
シフターはK Sport製ビレットショートシフターを使用し、Hパターンの操作で前後のMTが同じギヤに入るようリンケージを製作したが、それもかなり苦労したポイントのひとつだそうだ。

実は将来的にはリヤに後輪操舵システムの4WSを導入し、それを助手席に設けたステアリングで操作できるようにするという構想も練っているのだとか。同時にフロントエンジンを操作するペダルも設けて、助手席の乗員がフロントエンジンと後輪操舵、運転席の乗員がリヤエンジンと前輪操舵を担当する「ツインコクピット」の実現も目標のひとつだと語る。
「パシフィック・リムっていう映画でロボットを二人一組で動かすんですけど、それにシビれてツインコクピットの構想が浮かびました。しかも映画では人間の脳とロボットを接続する方法を「ドリフト」って呼ぶんですよ(笑)。いつか二人で協力しながら操作するドリフトマシンを作ってみたいです!」。まだ第一形態に留まるセラだが、未来にはもっと破天荒な進化を遂げているかもしれない。
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