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NAチューンを極めるロスや抵抗の徹底排除!
ZN8/ZD8の速さと楽しさを引き立てる技ありチューニング
サーキットでのタイムアップを目指して有力チューナーの多くが過給機チューニングへと移行する中、あくまでも自然吸気に拘り、「エンジンノーマルのストリート仕様」という当初のコンセプトを貫いているのが“近藤エンジニアリング”のBRZだ。

主なチューニングポイントは足回りとクラッチ、ブレーキ、エアロ、そしてエキゾースト環境のみ。デフは純正のトルセンLSDで、ブレーキもパッド交換だけという非常にライトなアプローチながら、ホームコースの岡山国際サーキットでは1分43秒台前半で駆け抜けるパフォーマンスを発揮しているのだから恐れ入る。
「エンジンはNAのままが、このクルマのキャラクターに合っています」。そう話すのは、チューニングを手掛ける近藤秀一工場長だ。さらに「タイム的にも、サスペンションのセットアップや空力、ギヤ比の最適化で、まだまだ詰める余地は残っています」とも語る。
ストレートではなくコーナリングで、パワーではなく腕で勝負したいBRZ&GR86乗りにとって、近藤エンジニアリングのデモカーはとても参考になるのではないだろうか。細部を見ていく。

エンジンは排気系チューニングのみだが、ECU-TEKによる現車合わせでポテンシャルをフルに引き出す。レブリミットは7950rpmの設定だ。近藤エンジニアリングSPLとなるATS製のカーボンクラッチは、エンジンのレスポンスアップにも大きく貢献する。


エキゾーストマフラーは、センターパイプ以降を交換する匠プロジェクトの極フルチタンマフラーをセット。クローズドコース専用のスペックで、チタンならではの軽さやレーシーなサウンドも魅力だ。アペックス社の消音システム「ECV」や、排気圧力によって消音バルブが自動で開閉する「ACTIVE TAIL SILENCER」の装着も可能という点も見逃せない。
足回りは、近藤エンジニアリングオリジナルの匠サスペンションキットを軸に構成。ストローク重視のセッティングで、タイヤを常に路面にしっかりと接地させる方向性だ。スプリングレートはフロント14.4kg/mmのリヤ13.5kg/mmで、リヤには伸び側のストロークを稼ぐヘルパースプリングを標準装備する。

ホイールは、匠プロジェクトのオリジナルサイズとなるボルクレーシングTE37 SAGA S-PLUS(17×9.0J+38×17:FACE4)で、アタック用のタイヤはアドバンA052を履く。なお、ボルクレーシングZE40の特注サイズ(18×9.5J+34:FACE3)もリリース予定とのこと。

ブレーキの強化はパッドのみで、オリジナルの匠ブレーキパッド(スポーツSPEC)をセット。デモカーの開発を担当するGTドライバーの阪口良平選手の好みに合わせた逸品で、踏力に合わせてリニアに力強く制動力が立ち上がる特性と抜群のコントロール性が自慢だ。



「ストリート最強スペック」がコンセプトのエアロボンネットは、ラジエターコアを通過したヒートエアを効率よく排出するべく両サイドに大型のアウトレットダクトを搭載。素材は、樹脂を浸透させたカーボンクロスを専用の型に積層、熱を加えて強度を高めた“第3のカーボン”と呼ばれるハードカーボンとなる。炭素繊維100%なので、レースカーに用いられるドライカーボンに匹敵する軽さと強度を獲得している。専用設計のボンネットダンパーも開発済みだ。

高い空力性能を発揮する匠プロジェクトGTウイング3D-LINEは、“カーボン製のウイング本体+翼端版+アルミ削り出しのブラケットステー+車種専用マウント”という4つのパーツから構成。主翼のデザイン、幅、マウントベースの長さなど、ベストな仕様を選択できるセミオーダー方式なので、ユーザーが思い描く仕上がりをそのまま提供できるのが強みだ。ステーと本体の接合部には、角度調整機能も持たせている。

リヤバンパー下部のカーボン製ディフューザーも匠プロジェクトの製品だ。バーティカルフィンが搭載され、確実な機能性アップを約束してくれる。

近藤さんがアドバイスしてくれた速いNAチューンの秘訣は、徹底した「ロスや抵抗の排除」。デフを機械式にせず、あえて純正トルセンLSDのままとしているのもその表れ。トラクション性能アップをLSDに頼るのではなく、足回りや空力でタイヤの接地性を高めることを追求しているのである。
ユーザー目線を忘れず、サーキットでの過酷なテストを軸に様々な高機能パーツを生み出し続ける近藤エンジニアリング。“無駄を省き、描く理想に近づけたい”GR86/BRZ乗りにとっては、マークしておくべきチューナーの筆頭と言えるだろう。
●取材協力:近藤エンジニアリング 大阪府和泉市上代町147-1 TEL:0725-24-0516
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