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比類なきVIPドリフト!
ドリフト性能を求め足まわりやタイヤハウスも大加工!
贅を尽くした車両設計がバブル景気のシンボル的存在となり、「いつかはクラウン」のキャッチフレーズとともに90年代のVIPカスタムで圧倒的人気を誇った130系クラウン。心臓部も4.0L・V8の1UZ、7Mに1JZなど走りに余裕をもたらすモデル展開だったが、ラダーフレームボディだったこともあってチューンドベースに選ばれることはなかった。

しかし、そうしたレアさをオリジナリティに結びつけようと、VIP×ドリフトの融合に取り組んだのが、セダン一筋でドリフトを楽しんできたオーナーの田中さん。
以前の愛車JZX90クレスタは、2JZ-GTEへのエンジンスワップに加えてグラインダータトゥやオールペンも施していたが、リメイクを考えた際にボディカラーの変更などよりも、ライバル達と被らないベース車のほうがインパクトは絶大と判断。「1JZ搭載モデルをベースにすれば簡単だろう」と、VIPカー全盛期の象徴であるJZS131クラウンへの箱替えを決意した。

エンジンは、JZX90クレスタに搭載していたブーストアップ仕様の2JZ-GTE(JZA80スープラ前期用)をそのまま換装。サスメンバー類は無加工だが、パイピングなど一部の補機類は現車合わせで作り直している。

性能面でも十分なことに加え、ブロー時の補修パーツが安価なことから純正タービンを愛用。走りにクセがない常時ツインターボ仕様で最高出力380ps、最大トルク51.3kgmを発揮させている。

制御はF-CON Vプロ3.4が担当。3.0Lツインターボの2JZ-GTEは、ブーストアップ仕様でも街乗りからドリフトまでストレスフリーの走りを楽しませてくれる。

VIPスタイルにチューニングが雑味とならないよう、前置きインタークーラーのコアは黒でペイント。エクステリアは前期用リップスポイラーのみ与えたシンプル仕上げだ。

本来、2JZ-GTEのパフォーマンスを発揮させるための排気環境は100φのメインパイプがベストだが、ラダーフレームゆえにロードクリアランスは少ない。そこでオーバル形状のワンオフマフラーを使って対処した。

ミッションはJZX90クレスタで使用していた5速MT(トヨタR154)を投入し、サイドブレーキも仕様変更。シフトレバー位置が後方へオフセットしてしまうため、A70系スープラのリンケージを使って調整しているそうだ。


VIPセダンらしい高級感あるインテリアを重視し、走りの要素はステアリングや運転席側シートといった最小限の手数に抑制。ブーストコントローラーをメーター代わりに、ブースト圧と水温のみを管理している。

予想外だったのは車高調の選択肢が皆無に等しかったこと。何とか適合品を見つけ出したものの、シャコタン仕様ではストローク量が全く足りないため、現在、仕様変更を検討中だ。

マシンメイクを進める過程で、最も苦労したのがドリフトを楽しむために欠かせない切れ角の確保。ボールジョイント式からラック&ピニオン式への変更、タイヤハウスの拡大加工まで実施しているが、それでもドリフト時のフロントは215サイズ&8.0J×17インチが限界とのこと。
「ラダーフレームなので、映える車高まで落としていくと地上高がきつくなったり、セミトレーリングアームのリヤはタイヤの内減りがヤバかったり、思っていた以上に苦労は多いですね。ただ、ゼロクラ(180系)のドリフト仕様は定番ですけど、130系はほぼいないので注目度も抜群。大満足ですよ!」とは田中さん。

VIPカー全盛期の記憶を呼び起こす堂々たる風格から、2JZ-GTEのパフォーマンスを武器に繰り出していく頼もしき走り。まさに、スーパースワップセダンという称号が相応しい唯一無二の存在だ。
●取材協力:H.D.O 広島県福山市引野町273-1 TEL:084-945-0856
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