「4A-Gエンジンにバイク『ハヤブサ』のヘッドをドッキング!」AE86の究極形態に乗った!!

ハヤブサヘッドのAE86とAE85を所有する強者!

マニアック過ぎる3A-R&4A-Rエンジンの乗り比べ!

キャブ交換したサニトラに始まり、L28を載せた230セドリック、MZ12ソアラ3.0GTリミテッドの5速MT(換装ではなく裏カタログモデル!!)、B110サニークーペGX-5…と、33歳にしてマニアックな車種を乗り継いできた宮下さん。AE86前期型GTアペックスを手に入れたのは2022年のことだった。

「ハチロクに興味を持ったのは運転免許証を取ってから。えぇ、思いっきり『頭文字D』の影響です(笑)。拓海仕様を作りたかったので、実は5バルブ4A-Gも用意してたんですよ」。

ところが、エンジンをバラし、いつでもチューニングを始められる体制を整えながら、結局その4A-Gは日の目を見ることがなかった。なぜなら、3A-Uの腰下にスズキのリッターバイク、隼(ハヤブサ)のシリンダーヘッドをセットした魔改造エンジン、“3A-R”を組み上げたオフィストミタク代表、富松さんの動画『トミタクちゃんねる』を観てしまったからだ。

「そこで、“5バルブ4A-Gは決して速くはない”という話を聞いて。さらに、動画では“3A-Rをやったから次は4Aで…”みたいなことも言ってたので、トミタクさんならパワーがあるエンジンを作ってくれるんじゃないか? と思ったんですよ」。

そこからの行動は早かった。横浜で開催されるイベント、ノスタルジック2デイズ(N2D)に3A-R搭載のトミタクAE85が出展されると聞きつけ、会場まで足を運んで富松さんに直談判。4A-Rの製作を打診した。その時のことを富松さんが回想する。「若いオーナーだし、本気なんかな? と思ったんはよう覚えとる。それと難しい加工があるもんで、簡単にはできんよとも伝えたんよなぁ」。

5基が組み上げられた4A-Rのうち、3号機を搭載する宮下さんのAE86。ピストンは純正1mmオーバーサイズのワンオフ82φが組まれる。特徴的なのは燃焼室がコンパクトな隼ヘッドに合わせつつ、燃焼効率を徹底的に追求した結果、冠面が凹状になっていること。「フラットトップの先を行っとると思うよ」と富松さんは言う。ストローク量は77mmで純正と変わらず、圧縮比は12.8:1に設定される。また、インテーク側カムシャフト後端にトミタクオリジナルデスビをセット。そこにMSDが組み合わされる。この仕様で常時9000rpmを実現。

そこで宮下さんは考えた。「いかに自分が本気なのか」。それが伝われば富松さんは必ず動いてくれるはずだ、と。そうとなれば、できることから始めるのみ。鈑金業に就いていた弟を巻き込み、レストアを含めたボディメイクをスタート。進捗状況を撮影しては富松さんにメールで送り続けた。

「どれくらい時間が経ったか覚えてませんけど、ある日、富松さんから電話が掛かってきたんですよ!!」と宮下さんが言えば、「いや~本気度が伝わってきたもんでね。これはもうやるしかないなって」と返す富松さん。そこから試行錯誤を経て2年もの歳月をかけて組み上げられた4A-Rが、遂に宮下さんのハチロクに搭載されることになるのだ。もはや乗り手と作り手の情熱のぶつかり合い。珠玉のハチロク誕生には、そんなアツイ背景があった。

と、話はそこで終わらない。なぜなら、宮下さんのガレージには3A-R搭載のAE85も収まっているからだ。隼ヘッドを組み合わせた4A-Rは5基が送り出されたが、そのテストヘッドとも言える3A-Rはこの世に1基しか実在しない。それがなぜ宮下さんの手元にあるのか。その理由を富松さんが語る。

「4A-Rがひと段落した後、次は日産A型エンジンでツインカムヘッドをやってみようと思うてな。ベース車としてB110を探し始めたんよ。そしたら、程度のいいGX-5を宮下さんが持ってたもんで、3A-Rを載せたAE85とトレードしてもらうことになったわけ」。

一方の宮下さんは、「正直、B110は維持していくだけで精一杯だったんです。エアコンが付いてないから乗る時期が限られてるし、もし壊れたらパーツもないし。でも、旧車に慣れ親しんだ富松さんなら維持していってくれるだろうなって。ボクとしてはエアコン付きのAE85なら普段乗りできるし、何と言っても3A-Rを載せてますからね!! このトレード話は相思相愛だったのかなって思います」。

なるほど…と思っていたら、続けて、こう声を掛けられた。「4A-R、試乗してみます?」。「もちろん、ぜひ!!」と即答したのは言うまでもない。

3A-RのAE85は3年前だったか、仕上がってすぐ富松さんのもとを訪ね、点火が追い付かないからそれ以上回せないという1万1500rpmまでさんざん踏ませてもらった。内燃機関の常識を超えるべく、燃焼効率を突き詰める“トミタク燃焼理論”を実践した3A-Rは、パワーやトルク以上に、どの回転域、どのギヤから踏んでも右足の動きに即応するレスポンスに舌を巻いた。

それに対して、今回試乗した4A-RのAE86はどうだ。いわゆるチューンド4A-Gとは明らかに違う排気音。ツインプレートクラッチのミートポイントを探りながら走り出す。右足と直結したかのようなレスポンスはそのままに、全域で3A-Rを上回るトルクを稼ぎ出す。4000rpm以上はタコメーターの針が弾けたように跳ね上がり、天井知らずでパワーが追従する。その速さと、余りにも官能的すぎるサウンドに思わず鳥肌が立った。排気量は3A-Rが1.5L、4A-Rが1.6L。たった100ccの差でしょ? と思っていたことを恥じるほど、エンジンとしての出来栄えは別物だった。

思いは伝わり、願い続ければ叶う。それがまた、予期していなかった未来を切り拓く。宮下さんと富松さんが出会ったこと。それが、今に続くストーリーの発端だった。何かと閉塞感が漂うこのご時世、クルマ=ハチロクを媒介とした良い話に、ちょっと胸が熱くなった。

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●Special Thanks:オフィストミタク
●取材協力:オートテックプロスパー 山梨県山梨市南867-1 TEL:0553-39-8945

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オフィストミタク
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