「RX-7一筋20年!」有名ドリフトマイスターが手がけた珠玉のFC3S、その全容に迫る

バランスと扱いやすさ重視の350馬力仕様

スカイブルーと蛍光ホイールの組み合わせはこの男の特権!

ロータリーエンジン搭載車が全国から集結した“ロータリー魂2021”内のドリフトコンテストにて、D1GPクラスのマシン相手に一歩も引かない追走劇を披露し、見事に準優勝を勝ち取ったFC3Sの登場だ。

オーナーの“ムッシュ鈴木”こと鈴木智哉さんは、ドリフト歴25年、ロータリー歴20年という生粋のロータリストだ。近年は走行会でのエンジョイドリフトをメインにしているものの、かつてはD1GPをはじめとする競技シーンで暴れ回り、海外のドリフトイベントにも招待されるほどの大ベテランだったりする。

そんな男の現在の愛機は、2年ほど前に知人から譲ってもらったドリフト仕様がベース。スカイブルーと蛍光ホイールの組み合わせは、D1ストリートリーガル参戦時代から続く鈴木さんのシンボルカラーのようなものだ。

エアロパーツはメーカー不明のフロントバンパーに、ワンオフサイドステップ、Rマジックのリヤアンダーという構成。フロントフェンダーはワンオフ品で、リヤフェンダーはフォーサイトとなっており、それぞれ片側45mmワイド仕様だ。

エンジンはサイドポート加工された13Bで、点火系やインマニなどの補機類はFD3S用を使っている。なお、レブリミットはこれまで7500rpmの設定だったが、イベント直前に9000rpmまでアップ。「おかげで2速のままでも引っ張れるようになったので、走りの幅が広がりましたね」とのこと。

タービンは往年のKKK-K27MOJで、ブースト1.0キロ時に350psを発揮。走行会でストレスなく走れ、追走でも不満なく遊べて扱いやすいパワー特性になっている。

「FC3Sのボディって想像以上にしっかりしている」とのことから、ロールケージはボルト留めでスポット増し溶接なども行っていない。ステアリングは、エンジェルモータースというロータリー専門店を経営しているアメリカの友人からプレゼントされた逸品で、MOCHIというのはそこで飼われている犬の名前とのこと。シートはスラッシュレーシング製だ。

最近導入した唯一の“今時”パーツが油圧サイドブレーキ。絶対的な効きはもちろん、操作位置も大幅に改善(FC3Sは助手席側にサイドブレーキレバーがあるため引きにくい)したそうだ。

ナンバーレスのサーキット専用機ということで、不要な内装パーツは全撤去。バッテリーはリヤのストラットタワー間に移設している。

ドリフトに重要な切れ角アップは、自作のショートナックルで達成。切れ角増大にともなって干渉してしまうフロントスタビライザーを外しているのもポイントだ。車高調はHKSのハイパーマックス(F8kg/mm R4kg/mm)で「FC3Sは硬くしすぎると曲がらなくなる」との理由から、自由長が長くローレートのスプリングをリヤにセット。これが絶大なトラクションを生む鍵だという。

タイヤは前後ともFALKENのホワイトレターが施されているものの、実際にはWANLIのスポーツレーシング(235/40-17)をフロントに、VALINO TIRESのグリーヴァ08D(265/35-18)をリヤに履く。「白煙モクモクで走れるわけじゃないけど、パワーがないからこのくらいのタイヤがちょうど良い」と鈴木さん。

大会系のドリフト仕様としてローパワーの部類に入るが、トータルバランスを重視したメイキングを行えばFC3Sでもまだまだ戦える。それを証明してくれるようなチューンドだ。

●取材イベント:ロータリー魂2021
TEXT&PHOTO:Daisuke YAMAMOTO

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