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他には無い後輪駆動の楽しさは変わらない
テクノプロスピリッツ熊倉代表が語る新旧ハチロクの魅力!
18歳で運転免許証を取得し、TE27トレノに始まったテクノプロスピリッツ熊倉さんのクルマ人生。その後、TE37レビン、初めて新車で買ったKP61と乗り継いでいった。
「ニイナナもサンナナも2T-G改2.0L仕様でさ。サンナナはキャロッセでラリーメカニックをやってた時に買ったんだけど、当時イギリスのRACラリーに参戦したマシンだったんだよ。そんで出たばっかのハチロクに乗りたい!!って思ったんだけど、その頃の給料じゃとても手が届かなくてKPを買ったわけ。4速MTのDX-Aっていう安いグレードね。新車で込み77万円だったな」と熊倉さん。

メカニック時代、全日本ラリーやジムカーナに参戦する仲間達と夜な夜な秩父の峠に通い、そこで今につながる走りの基礎を覚えたと言うけど、面白いのは、「自分はクルマをイジる方で、乗る方ではない」と思っていたこと。ハチロクやMR-Sで精力的にサーキットアタックを続ける今の姿からは、ちょっと想像がつかない話だ。
転機になったのはKP61だった。足回りを換えてLSDを入れ、峠だけでなく筑波サーキットを走るように。また、ワンメイクレースにも参戦し、走る方に力を入れて行くようになった。
熊倉さんが言う。「オレらが運転免許を取った頃って、最も身近なモータースポーツがラリーだったわけ。当時、WRCではダルマセリカやフォードエスコートRS、フィアットアバルト131なんかが走ってたんだけど、カウンターステアを当てながらコーナーを飛び出してくる姿がカッコ良くてさぁ。それに憧れて、“やっぱクルマは後輪駆動だ!!”って思ったんだよ」。
1988年にテクノプロ・スピリッツを創業し、当初はお客さんのクルマのメンテやチューニングに専念。本格的に自分でも走るようになったのはショップが軌道に乗り始めてからだ。

そこで手に入れたのが憧れていたAE86だった。それも、「サーキットを走るためのツールとして買った」と熊倉さんは言い切る。もちろん、ナンバー付き車両を所有していたこともある。けど、これほどハチロクのイメージが強い熊倉さんが、街乗りはほとんどしなかったというのが意外だ。
「ニイナナやサンナナの2T-Gに比べて、ハチロクの4A-Gはまずエンジンが軽い。だから、操縦性は格段に良くなってたよね。当然、足回りやブレーキも進化してたし。サンデーレースが盛り上がり始めた頃、日光サーキットで勝ちたくて、“軽くてコンパクトで後輪駆動”のハチロクを買ったんだよ」。

中でも、今の時代だからこそ大きな武器と言えるのが“軽さ”だ。乗り始めて25年になるN2仕様のデモカーは車重が780kgまで絞り込まれている。それでも、ドアパネルは交換不可といった規定に合わせたものだから、ドライカーボンパネルなど今時のパーツや技術を投入すれば700kgを目指すことも可能だったりする。

「あとハチロクの魅力と言ったら、フロントエンジンってことだね。吸気音とか振動とかが前からワーッと飛び込んでくるから。それがメカチューンの4A-Gなら、なおさら。チューニングレベルが上がるほど、五感を震わせてくれるのがハチロクというクルマで、オレとしてはそこがすごく重要なのよ。MR-Sも好きだから、デモカー作ってサーキットアタックしてるけど、こっちは後輪駆動でもリヤミッドシップでしょ。どんなにイジっても、ハチロクみたいなあのワクワク感はないんだよなぁ」。
そんな熊倉さんに、続けてZN系の印象を聞いてみる。
「なんせ車名が“86”だからさ。発売前から大きな話題にもなってたんで、そりゃZN6には期待したよ。でも、実際に乗ってみたら、“えっ、こんなもん!?って思わず拍子抜け。それだけでなく、旧いハチロクを知ってる人達と同じように、“なんで86って車名にしたの?”という思いもすごく強かった」。
とは言いつつもデモカーを導入。時代を見据えて敢えて6速ATモデルを選び、スポーツ走行とイージードライブの両立を狙った。足回りとデフ、冷却系に手を入れ、最終的にはボルトオンスーパーチャージャーへと進化。ATはマニュアルモードでのレスポンスが良く、サーキットでのタイムも目標に達するなど目的は果たせた。

それに対して、第一印象から良かったのがZN8だ。
「足回りを含めてシャシー性能が上がっただけでなく、排気量が2.4Lになって、はっきりと体感できるくらいパワーもトルクも向上。サーキットで遊ぶには良くできたクルマだし、今時のスポーツカーらしい雰囲気も上手く演出できてると思う」。

ZN8はライトチューンでもパフォーマンスが高く、筑波サーキットのバックストレートエンドでの終速は170km/h前後に到達する。これは、ボルトオンスーパーチャージャー仕様のZN6や2ZZ-GE換装のMR-Sに匹敵するものだ。

あまりにも設計年次が離れすぎていて直接比較するのはナンセンス。それでも、「AE86とZN系に共通点を見出すとすれば?」という問いに対して、3世代のハチロクに携わってきた熊倉さんはこう即答した。
「後輪駆動、FRってこと。それが振り回して乗れる楽しさに繋がってるし、そこは旧くても新しくても関係ないと思うから」。
●取材協力:テクノプロ・スピリッツ 埼玉県川越市小中居945-1 TEL:049-235-4886
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