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マルチリンク化した車体にRB25改を搭載!
頂点を揺るがすタイムアタックマシンを鋭意製作中
2026年に設立30周年、翌2027年には“31”周年という節目を迎える“R31ハウス”。これを機に「R31で原点回帰を図る」と語るのは、シバタグループ総裁の柴田氏だ。記念事業の一環として、長年にわたり蓄積してきた技術と経験を結集し、R31スカイラインをベースとしたタイムアタックスペシャルとD1GP仕様、2台のスペシャルマシンの製作が現在進められている。

ここ数年は、シバタイヤの開発・販売やD1GPへの参戦といった新規プロジェクトに注力していたため、R31ハウスとしての表立った活動はやや控えめな印象だった。しかし、全国で約3000台の顧客を抱える事業基盤は今なお健在。各部門に専任スタッフを配置し、車両製作からメンテナンスまでを自社完結できる体制が整った今、周年記念プロジェクトに本格的に乗り出すタイミングが到来したという。

まず第一弾として動き出したのが、筑波サーキットでのタイムアタックを視野に入れたR31スカイラインの開発だ。最初は、前後マルチリンク化などの基本的な補強を施し、RB25ベースのエンジンを搭載した仕様で進められていたが、「記念車両としては物足りない」との判断から方向転換。現在は、より高次元のスペックを目指し、仕様を抜本的に見直した開発が進められている。
柴田氏は、「筑波で52秒台を、シバタイヤを履いた状態で叩き出せなければ意味がない」と語る。さらに、ホームコースともいえる鈴鹿サーキットでも結果を残すことを目指しており、従来の車両製作とは一線を画す、本気度の高いプロジェクトであることが窺える。

このプロジェクトの骨格ともいえるシャシー構成について柴田氏は、「これはもう“改造用パーツ”ですよ(笑)」と語る。用意されたのはパイプや鋼板で構成された完全手作りのシャシーで、そこにR31の外板を被せていくスタイル。まるで別事業で展開しているラジコンカーのような構造で、各部をチューブフレーム化しながら製作が進められている。

当初はストラットタワーを残し、純正寸法のリヤメンバーを活かした構成で進んでいたが、「マルチリンクをただ移植する程度では、記録を狙えるマシンにはならない」として、方向転換。エンジンやメンバーの搭載位置を大胆に見直し、車高を大幅に下げるべくフロアをカット。さらに、リアクォーターのオーバーハング部分も潔く切除された。

R31のフロントはスピンドル式のストラット構造であり、走行中のアライメント変化が大きく、安定したハンドリングが難しい。そこで、R34用のパネルを用意し、フロントもマルチリンクへと換装する方向で作業が進められている。


足回りに関しては、シバタイヤの「R50(295/32.5R18)」をはじめとしたハイト&ワイドなタイヤの装着を前提に設計され、すでにインナーフェンダーの成形も完了。
しかしその後、エンジン・ミッション・デフといった機関類の搭載位置最適化のため、シャシー側もさらなるローダウンを実施。エンジン位置もバルクヘッド付近まで後退させる構想となり、現状のバルクヘッド自体を見直す必要が出てきたことから、成形済みのインナーフェンダーも再製作となる可能性が高くなっている。
なお、画像に写る鉄骨フレームは、ボディ架装時の位置決め用として仮設置されたものであり、設計変更に応じて今後の構造検討が進められている段階だ。

このプロジェクトとは別に、2026年シーズンのD1GP参戦に向けたR31の製作も予定されている。現在はGR86でD1GPに参戦中の柴田自動車だが、この新型R31には、それまでに蓄積された競技用ノウハウをすべて注ぎ込み、完全なドリフト仕様車として仕上げる予定だ。
30周年、そして“31”周年という象徴的な節目に向けて動き出したこの記念プロジェクト。グループの総力を結集し、その第一歩として進行中の2台のR31プロジェクトから、今後も目が離せない。
●取材協力:R31ハウス柴田自動車 TEL:0574-28-0899
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