「中古のFD3Sは底なし沼だ!」ロータリー地獄を楽しむ男の物語 Part.1【編集長コラム】

不定期連載でお届けするWEB OPTION編集長コラム。約20年ぶりにRX-7(FD3S)を購入し、再びロータリーチューニングカーライフを満喫しようともがく男の物語だ。

4年間で300万円以上が修理で消えた・・・!?

さかのぼること24年前、19歳の時に登場間もない5型のRX-7(FD3S)を新車で購入した。タイプRBだったので車両本体価格は280万円ジャスト。今考えると恐ろしいほどのバーゲンプライスなのだが、当時、大学生だった小僧にそんな大金を用意できるわけもなく、親に頭を下げて保証人になってもらい、頭金なしのフルローン(3万円×76回+ボーナス払い)を組んだ。

納車日の事はよく覚えている。独特の回転フィールでモーターのように加速していく13B-REWエンジン、戦闘機のコクピットのように包まれた室内、そして流麗なスタイリング…。都内を一日中走り回り、翌朝までFD3Sを堪能し続けた。

20年前に乗っていたFD3S。RE雨宮のAD-GTキットを軸に外装をモディファイ。ボディカラーは5型純正のイノセントブルーマイカからフェラーリレッド(ロッソコルサ)にオールペンした。この時の仕様の再現を目指していたりする。

それから自分好みにチューニングしながら8年間乗り続け、外装は真紅のRE雨宮フルエアロ仕様で、エンジンは2回のブローを経てサイドポート拡大+TO4Rタービンの500psスペックまで進化。何だかんだ1000万円近く費やした気もするが、自分の興味が輸入車に傾いた事を機にあっさり売却。我ながら無情の極みである。

以後、BMW M3(E92)やZ4Mクーペ、フィアットパンダ、シティカブリオレ、アウディS3、GT-R(R35)、86(ZN6)など、いまいち掴み所のない愛車遍歴を重ねていくのだが、その間、FD3Sを取材先や街中で見かけるたびに、昔の彼女に想いを馳せるような表現しがたい気持ちに襲われたりもした。

やっぱりセブンはカッコ良い。スタイリングは世界一だ。

「もう一度乗ろう!」。そう決心したのが2017年の年末。程度の良い個体が激減し、中古車相場が急騰している現実を知り、今買わなければもう二度と乗れないだろうと思ったからだ。そして2018年に入って間もなく、知人がTD06-25Gタービンを組んだサーキット仕様のセブン(4型)を手放すという話を聞きつけ、それに飛びついた。価格は160万円だった。

かくして第二のFD3Sライフが幕を開けたわけだが、それは同時に、底知れぬロータリー沼への入り口だったのである。いや、地獄の始まりと言ったほうが正しいかもしれない。

レストア&オールペイントは千葉県のトップシークレットIIに依頼。ここはスモーキー永田率いるトップシークレットの鈑金部門で、その技術力の高さはチューニング業界内でも広く知られている。
カラーは20年前と同じロッソコルサ、いわゆるフェラーリレッドだ。ちなみにロッソコルサは時代によって色味が違ったりもする。左側が新しい方(カラーコード322)で、右側が昔ながらのロッソコルサ(カラーコード300)だ。色見本で見比べると、古いロッソコルサのほうが圧倒的に明るくて、赤色というより朱色に近い。選んだのは300だ。
外装のリフレッシュ&オールペイントで蘇ったFD3S。

程度はそこそこ良かったものの、所詮は1997年式。純正の樹脂パーツやモール類、ハーネスの劣化は激しく、内外装も傷が目立つ。基本、愛車は綺麗じゃないと気が済まない性格だったため、納車直後に約100万円を費やして内外装のリフレッシュ&オールペイント(昔と同じ色!)を実行。同時にRE雨宮のフルエアロも組み込んだ。

これでようやく昔の愛車並みに…と思ったのも束の間、中古車ゆえのメカニカルトラブルが次から次へと襲いかかってきたのだ。

これまでに交換した大物パーツだけでも、オルタネーター(リビルト:3万円)、エアコンコンプレッサー(リビルト:4万円)、エアコンコンデンサー(2万円)、パワステポンプ(リビルト:1万5000円)&高圧側ホース類(新品:2万5000円)、ヒーターコア(新品:2万円)、イグニッションコイル×3(新品:7万円)&プラグコード(RE雨宮製:1万9800円)、クラッチ(10万円)、タービン(修理:10万円)、ECU(LINK G4X:15万円)。

あまりのトラブル発生率の高さに、周囲からは「乗ってるよりも直してる時間の方が長いクルマ」と言われ、また、とあるショップの親父からは湾岸ミッドナイトになぞらえて「悪魔のセブン」と命名されてしまったほどである。

エンジンオーバーホールはRE雨宮に依頼。雨さん自らがエンジンの分解&組み付けを行なってくれた。

そして2021年秋。ついに13B-REWエンジン本体が点火系トラブルで不調に陥り、診断の結果オーバーホールが必要であることが判明。覚悟を決め、怪しいパーツ(エンジンハーネス、点火系、燃料系)の全交換も依頼し、200万円近くが吹っ飛ぶはめに…。

地獄である。相変わらず高騰が続くFD3Sの中古車相場だが、どんなに程度が良かったとしても各機関の経年劣化は避けられない。個体差があるとはいえ、好調を維持するためには、こうしたトラブルの数々に動じない精神力と、直すだけの体力(お金と時間)が必要なのかもしれない。

2022年1月末現在、エンジンオーバーホールから帰ってきた“悪魔のセブン”は、昨年までのトラブルが嘘のように快調そのものだ。ショップから3000kmの慣らし(エンジンのアタリつけ)を命じられたため、タコメーターの針と睨めっこしながら運転する日々を過ごしている。

今後もお財布と相談しながら少しずつレストア&チューニングを進めていくつもりなので、FD3S好きのマニアな方々のみ第二回にご期待あれ(不定期連載ですが…)!

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竹本雄樹