「ディーラーマンですら見たことがない!?」初代カリーナEDの最下級グレード1.8Lを捕獲!

車重がアンダーパワー感を解消! スタイリング同様に走りも軽快だ

しかも奇跡のフルノーマル車!

セリカと基本コンポーネンツを共用し、全高を抑えたセンターピラーレスの4ドアハードトップとして1985年に登場したST160系初代カリーナED。それまでの4ドア車の概念を覆したエポックメイキングな1台で、後に同様のコンセプトを持つペルソナやユーノス300フォロワーをも生み出したトヨタ会心のヒット作だ。

搭載エンジンは2L直4DOHCの3S-GELU(140ps/17.5kgm)と、そのハイメカツインカム版3S-FE(120ps/17.2kgm)、1.8L直4SOHCの1S-iLU(グロス105ps/16.0kgm)という3種類。グレードは上からGリミテッド、G(3S-GELU搭載)、X、S(3S-FE/Xには1S-iLUも搭載)、F、L(1S-iLU搭載)で、いずれもミッションは5速MTと4速ATが用意された。

取材車両は最廉価グレードLの5速MTという、新車価格が最も安かったモデル。1S-iLU型エンジンはかなり後方に傾けて搭載される。ボア径φ80.5に対してストローク量90.0mmというロングストローク型で、実用トルクを重視した設計だ。燃料供給は、エアクリーナーからのインテークパイプ直後に1本のインジェクターが設けられたシングルポイントインジェクション仕様。シリンダーブロック側面には点火ディストリビューターが確認できる。

標準13インチスチールホイールに被せられるのは、フルキャップでなくハーフキャップとなりFF以上のグレードにはもれなく装備されているパワーウインドウや集中ドアロック、マップランプ、助手席バニティミラー、前後調整式フロントヘッドレスト、トランクルームランプ、油圧計、ツイントリップメーター、テール&ストップランプ断線警告灯などが徹底して省かれるという、思わずか可哀想になってしまうくらいの内容。要するに、“L”は古い時代のクルマで言えば、“スタンダード”に相当するグレードだ。

センターパッドに車名ロゴが入る3本スポークステアリング。GリミテッドとGのみ合成革巻きで、X以下のグレードはウレタンとなる。最廉価グレードLというだけでも珍しいのに、取材車両はなんと5速MT仕様。搭載エンジンによってギヤ比とファイナル比が変更されるなど、真面目な設計がうかがい知れる。

スピードメーターとタコメーターを中心として右側に燃料計、左側に水温計を配置。さらに、水温計の左側には上級グレードだと電圧計と油圧計が並ぶが、Lでは簡略化されて警告灯に置き換えられている。

エアコンはグレードに関わらず、オート式もしくはマニュアル式がディーラーオプション扱いとなっていた。オーディオは、Lに標準装備される1DINのAM/FM電子チューナー付きラジオ+2スピーカー。当時のまま残っているのが凄い。

ヘッドレストの前後調整機能は省かれるものの、座面の高さを前後個別に調整できるデュアルハイトアジャスターが備わる前席。また、後席は座面、背もたれともにセンター部が大きく盛り上がってるため、車検証上は5人乗りでも実質的には4人乗りだ。

前後サイドウインドウを全開にすると、大きな開放感を得られるセンターピラーレスハードトップ。オプション装着されたステンレス製サイドバイザーには車名ロゴも確認できた。

外装におけるLの特徴がここ。他グレードではリヤアンダー部がブラック塗装となるが、ボディ同色とされているのが大きな違い。Lと遭遇することはまずないだろうが、ここを見ればひと目で判断できるのだ。

カリーナEDのグレードLは、新車当時を知るトヨタのディーラーマンでさえ「売ったことがないし、売れたという話も聞いたことがない」と言うほど。

そんなクルマが目の前にある。しかも、新車で購入したオーナーの手に渡った時と変わらないフルノーマルの状態で。この世の中にLが存在したというだけでマニア連中を震撼させる大ニュースなのに、スチールホイールのセンター部にしか装着されないハーフキャップも、AM/FMマルチ電子チューナー付きラジオ+2スピーカーも当時のままなのだから、その衝撃たるや計り知れるはずもない。

呼吸を整えてから運転席に収まる。全高は今時の4ドア車に比べると極端に低い1310mmだが、着座位置も低いから圧迫感はない。むしろAピラーが細く、肩まわりにあるはずのBピラーもないため、開放的な雰囲気すら漂っている。

シフトレバーを1速に入れ、アイドリング回転のままゆっくりクラッチを繋ぐと、ギクシャクした動きをまるで見せることなくスルリ…と走り出した。というか、タイヤの転がり始めが軽い! それもそのはず、車重はたったの1040kgしかないのだから。最上級グレードのGリミテッドに対しては実に110kgも軽かったりする。

エンジンは完全な実用トルク型だ。無理に回しても仕方がないので2500~3000rpmでシフトアップしたが、それでも走りに不満はない。さらに、ハンドリングも軽快。ワイドな185幅のタイヤでこれだから、標準165幅ならもっとフットワークが軽いのではないか…と妄想も膨らみまくりだ。

スポーティとは言えないエンジンに必要最低限の装備。カリーナED 1.8Lは、ベーシックグレードならではの良さがあることを教えてくれたのだ。

■SPECIFICATIONS
車両型式:ST160
全長×全幅×全高:4475×1690×1310mm
ホイールベース:2525mm
トレッド(F/R):1455/1420mm
車両重量:1070kg
エンジン型式:1S-iLU
エンジン形式:直4SOHC
ボア×ストローク:φ80.5×90.0mm
排気量:1832cc 圧縮比:9.0:1
最高出力:105ps/5400rpm
最大トルク:16.0kgm/3000rpm
トランスミッション:5速MT
サスペンション形式:FRストラット
ブレーキ(F/R):ベンチレーテッドディスク/ドラム
タイヤサイズ:FR165SR13

●TEXT&PHOTO:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)

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