「この顔が純正オプション!?」ネイキッドの660ターボフロントレーシングセット装着“珍”車を捕獲!

昆虫を思わせる特異なフロントマスク!

ヤリ過ぎ感すら漂う大胆フェイスリフト

L700系ミラをベースに設計、開発されたネイキッドは1999年に登場。シンプルなデザインに機能性と遊び心を盛り込んだ、ライトSUVテイストの軽自動車だ。

デビュー当時のグレード展開は、660cc直列3気筒NAのEF-VEを搭載するGと、同ターボのEF-DETを載せるターボGの2本立てで、それぞれに助手席エアバッグや後席ヘッドレストを標準装備したGパッケージもラインナップ。いずれもミッションは5速MTもしくは4速ATが組み合わされ、駆動方式もFFと4WDが用意された。

その後、2000年の一部改良で安全性の向上やGパッケージの標準モデル化、2002年のマイチェンで角型ヘッドライトを採用したF/ターボFの設定などが行なわれ、2004年に生産が終了。ダイハツ車によくある一代のみで消滅…というのがネイキッドの概略だ。

そして、今回の取材車両。前期型に純正オプションとして用意されていたフロントレーシングセット装着モデル。恥ずかしながら、こんなモデルがあったとは知らなかった。元々ネイキッドは丸目2灯ヘッドライトだが、ボルト留めでガバッと外せるフロントグリル&バンパーをそっくり交換した仕様だ。

ヘッドライトはロー/ハイビームが独立し、ウインカーとフォグランプ、ダメ押しにロー/ハイビームの間にあるデザイン処理まで含めるとフロントマスクには10個の“丸”が存在。そこにベース車両の面影はまるでなく、圧倒的な車種不明感と昆虫を思わせる不気味さ漂わせているのが第一のマニアックポイント。ロー/ハイビーム、フォグランプはいずれもシビエ製。なぜか左側フォグランプのレンズだけ白く曇るのが持病らしい。

さらに問題なのは、取材車両は本来フロントレーシングセットが設定されていない後期型がベースということ。ただし、パーツを取り寄せて装着すれば、後期型でもフロントレーシングセット仕様は作ることができたと推測されるわけで、それに気付いて実行してしまったオーナーもまた相当な変態だと思われる。ちなみに、パーツ単体で買うと定価14万6000円と結構高い。

そんな超個性的な外装に対して、内装は基本ネイキッドそのもの。ダッシュボードや丸型2眼メーター、エアコン吹き出し口などなど、ちゃんとデザインが考えられていて、軽自動車にしては質感も高い。

メーターと4つのエアコン吹き出し口が一直線に並んだダッシュボード。デザイン性の高さに加え、小物入れが豊富に用意されるなど使い勝手も考慮されている。後期型は運転席、助手席ともにエアバッグが標準装備。また、独立した2眼メーターは左がスピード、右がタコメーターで、下に水温計と燃料計も配置される。

センタークラスターは上から2DINのオーディオスペース、エアコン操作パネル、1DINのオーディオスペースが並ぶ。写真には写っていないが、その下には灰皿&シガーライターと引き出し式のドリンクホルダーがあったりする。

ポジション高めの前席。スクエアなボディデザインもあって、見晴らし&四隅の見切りが非常に良い。

後席は座面、背もたれともに50:50の分割式でリクライニングが可能だ。

4名乗車時と後席を取り外した2名乗車時の比較。4名乗車時でも荷室スペースは十分と言えるレベルで確保されているが、2名乗車時にはそれが一気に拡大。ラゲッジフロアが低く設計されていることもあり、26インチの自転車だって積めるというから、積載能力には目を見張るものがある。

見てくれは得体が知れないけれど、中身は優等生。今、立ち位置としては同じようなところにいるであろうスズキ・ハスラーの爆発的な人気ぶりを見るにつけ、「ネイキッドは登場が10年早かったのでは?」と思わずにはいられない。

実は助手席もシングルフォールディング可能。この状態なら2.1mまでの長尺物を載せることができる。この変幻自在ぶりはまさに特筆モノ。いざという時に困らないで済むわけだ。

取材車両は後期型ターボGのFF、5速MTモデル。「これで4WDだったら変態度も“役満”級だったんですけどね」とオーナーは笑う。

エンジンは直3DOHCターボのEF-DET。ダイハツは一時、660ccで3気筒のEF系と4気筒のJB系を並行してラインナップ。ネイキッドにはEF系しか搭載されなかったが、同世代の2代目オプティにはEF-DET搭載モデル(L800)とJB-DET搭載モデル(L802)を用意するなど、ダイハツの変態ぶりをいかんなく発揮している。

この仕様で唯一残念なのは、運転している当の本人がその走っている姿を見られないこと。明らかにファニーな顔したネイキッドが走っているのはなかなか衝撃的だと思うが、それを指さして楽しめるのは、端から見ているごく一部のマニアだけなのだから。まぁ、運転している本人は「周りに幸せを振り撒いている」とでも思って納得するしかないわけだ。

■SPECIFICATIONS
車両型式:L750S
全長×全幅×全高:3395×1475×1550mm
ホイールベース:2360mm
トレッド(F/R):1300/1280mm
車両重量:820kg
エンジン型式:EF-DET
エンジン形式:直3DOHCターボ
ボア×ストローク:φ68.0×60.5mm
排気量:659cc 圧縮比:8.5:1
最高出力:64ps/6400rpm
最大トルク:10.9kgm/3600rpm
トランスミッション:5速MT
サスペンション形式(F/R):ストラット/トレーリングアーム
ブレーキ(F/R):ディスク/ドラム
タイヤサイズ(FR):165/65-13

●TEXT&PHOTO:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)

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