「これはAE86のタイプRか!?」日米カスタムシーンの技術力を注ぎ込んだ最強K型ターボ仕様に迫る

FK8シビックタイプRのエンジンをFRでドライブ!

米国で活躍する日本人ドライバーが作り上げた珠玉の一台

話題の続編が全国公開されている映画『トップガン』。第一作の公開は1986年で、トム・クルーズ演じる型破りなF-14パイロットが繰り広げるドッグファイトに胸を熱くした読者も多いはずだ。

東京は八王子出身で、現在はロサンゼルスに拠点を置くレーシングドライバー、ダイ・ヨシハラこと吉原大二郎も、トップガンからの洗礼を受け、胸を焦がすほどアメリカへの憧憬を募らせた少年だった。「人よりドリフトがうまい」という信念だけを武器に23才で海を渡ると、2011年にフォーミュラ・ドリフトのチャンピオンを獲得。タイムアタックやヒルクライムでも実績を残し、アメリカンドリームを体現してみせた。

そんなダイがプロデュースし、2019年のSEMAショーで話題をさらったのが、TURN14のブースに飾られたAE86である。最大のトピックはエンジンで、なんとFK8型シビックタイプRのK20C型直4ターボを縦置き搭載。S2000の6速MTとドッキングしたFRレイアウトを実現している。

換装作業はEimer Engineering(アイマー・エンジニアリング)が担当し、S2000の6速MTと接続するアダプタープレートやエンジンマウントなどもワンオフで作られた。燃料タンク内にコレクタータンクを内蔵するRadiumのFCSTを備え、E85燃料を採用。

マネージメントは直噴を制御できるLinkのG4+ Force GDIで現車合わせを行ない、FK8同等の最高出力320ps、最大トルク40.8kgmを引き出している。黄色く輝くバブルカバーはスプーン製。GReddyのインタークーラー、CSFのタックドラジエターも備える。

N2ルックをモダンに再解釈したパンデムのワイドボディキットを世界初採用。カローラGT-Sと呼ばれる北米仕様のAE86は本来はトレノ顔だが、レビン顔へとコンバート。EVSのカーボンミラーもレーシーな演出に一役買っている。

KWの3ウェイコイルオーバーでローダウンを施し、ホイールはBBSモータースポーツ製の貴重なデッドストック品をリバレル。前後15インチで、フロントが9.0Jマイナス30、リヤが9.0Jマイナス75という設定だ。

軽量化のため内装を取り外し、カーボン製のダッシュパネルとフルカスタムのロールケージを装着。フルバケもカーボンケブラーシェル採用のスパルコ製QRT-Kの限定品だ。メーターはLinkのMXSストラーダを採用し、油圧のハンドブレーキレバーも装備。

「元々、AE86は一番好きなクルマで、最初は軽く走りを楽しめればいいくらいに思ってたんです。でも、定番のいじり方だと今さら感あるしと考えているうちに、だんだんプランが変わっていきました(笑)」

FK8はアメリカでも発売されたことで当時話題になっており、K20Cスワップもおもしろそうだと構想していたところ、レース活動のパートナーでもあるスプーンを通じてHPD(※北米ホンダのレース部門)からエンジンを入手できることに。

また、旧知の仲であるTRA京都の三浦慶さんからも、いつかはAE86用を作りたかったからとボディキットを製作してもらえることになった。ダイがアメリカで培ってきた人脈と名声がプロジェクトを雪だるま式に大きくしていったわけである。

K20Cの直噴システムをLinkのフルコンで制御するのには苦労したが、ひとまずFK8のストック同等のパワーを引き出すチューニングに成功。フーニガンの企画では本家FK8とゼロヨン対決を行い、完全勝利を収めてみせた。

現在は「一台でドリフトとグリップをこなせるAE86」という当初からのプランに従い、愛機“AE86R”をバージョンアップ中。その持てるポテンシャルを開放してスクランブル発進をキメるとき、ダイの脳裏に流れるBGMはきっとトップガンの主題歌『Danger Zone』に違いない!

Photo:Akio HIRANO Text:Hideo KOBAYASHI

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