「初代MR2伝説! AW10とAW11の比較試乗なんて今まであった!?」走りの違いをマジメに検証

相手は4A-G搭載のGリミテッドとGリミテッドスーパーチャージャー!

1.5Lの3A-LUに勝ち目はないのか?

新車当時の雑誌をひっくり返したわけではないから本当のところは分からないが、おそらくこの3台の比較をした記事は過去になかったと思う。

大きく取り上げられるのはいつだって名機4A-Gを載せたAW11で、1.5Lシングルカムキャブ仕様の3A-LUを搭載したAW10は、グレード展開を拡げたいトヨタが「とりあえず作っとく?」と考えて、ラインナップされたであろうモデル。正直、新車が売れなくてもトヨタ的には痛くも痒くもなかったはずだから、AW10は日の目を見ないどころか、その存在すら完全に忘れられた1台だったと言っていい。

そんなAW10が気にならないわけがない。大体、新車当時から見かけた記憶が全くないクルマだけに、「日本初のリヤミッドシップ車はAW11だけではない! AW10もあったのだ!!」ということを後世にしっかり語り継ぎたい思いもある。しかし、そこでAW10だけを綺麗に撮影して紹介するだけでは、芸がなさすぎる。

そこで、発売当初からAW11チューンを手がけ、未だに多くのユーザーを抱える埼玉は入間の老舗ショップ、“テクニカルサロンベースサイド”に協力を依頼。AW11後期型Gリミテッドと同スーパーチャージャーの2台を用意してもらい、AW10との計3台でディテールや走りを比べてみることにした。

AW10は、実用エンジン3A-LU型を搭載してるだけあって非常に乗りやすく、その走りは一言で平和そのもの。正直3000rpmまでは、AW11 Gリミテッドに載る4A-G型よりもトルク感があって断然走りやすかったりする。

4Aのボア径を縮小(φ81.0→77.5)し、排気量を1452ccとした3A-LU型エンジン。燃料供給はキャブレターが担当する。パワーやレスポンスは平凡の一言で、完全に実用エンジンのそれ。しかし、4A-Gより軽量でSOHCのため重心が低く、それが軽快なハンドリングを生み出すことに大きな影響を及ぼしているのは間違いない。

しかも、街乗りに限ればAW11 Gリミテッドスーパーチャージャーの4A-GZ型とタメを張るか、あるいはフィーリングにまで迫るなら、NAである分だけ3A-LU型の方が印象は良いかもしれないくらいだ。ただ、吹け上がりはモッサリしているし、頑張ってアクセルペダルを踏んでも5000rpm+αで目一杯目な感じだ。

3本スポークステアリングもシフトノブも純正。ステアリングのグリップ部はG/Gリミテッドの革巻きに対して、Sではウレタンとなる。メーターはタコメーターが8000rpmフルスケールとなり、油温計と電圧計が省かれるのがG/Gリミテッドとの違い。ちなみに、油温計の場所は“MR2”、電圧計の場所は“TOYOTA”のロゴ入りパネルでそれぞれ塞がれる。

GとSはヘッドレストが一体型となるハイバックタイプのシートを採用。運転席にはシートリフター機能が付く。ただし、色使いが黒と赤の2トーンとなるGとは異なり、Sは背もたれと座面がグレー系のグラデーションで赤いラインが入る。

ラゲッジスペースはフロントフード下とリヤエンドの2ヵ所。フロントラゲッジルームは前後方向に狭くフロア形状もフラットではないが、深さがあるからそれなりの容量を持つ。

一方、リヤラゲッジルームにはゴルフバッグを2つ入れられるなど、巧みなパッケージングを誇る。全長4m以下の2シーターリヤミッドシップ車だと思えば、実用性は十分だ。

Gリミテッドdに標準装備、GとSにはオプション設定されていた14インチアルミホイール。リム幅5.5Jで、前期型は6角形のデザインを採用する。タイヤには標準同サイズとなる185/60R14のナンカンNS-2Rが組み合わされる。

対してGリミテッドに搭載される4A-G型はレスポンスはが良く吹け上がりも軽快。4000rpmあたりから明らかにパワーが盛り上がってきて、7000rpmまでストレスなく回ってくれる。加速感も3A-LU型など比べものにならないほど鋭い。

後期型に載る4A-GELU型エンジンは、排気系の見直しや2ホールインジェクターの採用など各部のリファインを実施。スペックもグロス130ps/15.2kgmからネット120ps/14.5kgmへと改められた。

トップエンドでのキレやパワー感に限れば前期型4A-Gを推す声が多いようだが、全域バランスを高めた後期型は扱いやすさもプラス。

ステアリングホイールは永遠の定番、ナルディクラシックに、シフトノブも球状のジュラコン製に交換することで操作性を向上。タコメーターは7300rpmからイエローゾーン、7600rpmからレッドゾーンとされた9000rpmフルスケールタイプ。Sに比べて目盛りも細かく刻まれる。その左に電圧計と燃料計、スピードメーターの右には油温計と水温計が配置される。

シートのリフレッシュを兼ねて運転席、助手席ともにレカロSR-7Fに交換。SR-7の優れたショルダー&サイドサポートはそのままに、乗降性を重視してフラットタイプのシートクッションを採用。クッションの硬度、深さなども最適化されている。

エンジンルームに確認できた圧力センサー。4A-GELU型が4A-GZE型よりもレスポンスに優れるのは、燃料噴射をエアフロ制御(Lジェトロ)でなく圧力制御(Dジェトロ)としていることや、回転域に応じて吸気経路を切り替えるT-VISの採用も関係しているはず。また、エンジンフード形状の違いから、キャッチの位置もNAとスーパーチャージャーでは異なる。

横長のメインサイレンサーを持ち、テールエンドが右デュアル出しとなる純正マフラー。熱のこもりを防ぐため、バンパー下のリヤパネルにはスリット加工が施される。経年劣化による“抜け”もあるだろうが、加速時には快音を放つ。

すでにラインナップから落ちて久しく、今ではユーズド品が高値で取引されているボルクレーシングTE37の14インチホイール。タイヤは標準と同じ185/60R14サイズのアドバンネオバ。走り系のクルマでは鉄板と言える組み合わせだ。

ところが、それをさらに上回るのがGリミテッドスーパーチャージャーの4A-GZ型。シフトが何速に入っていようとアクセルオンと同時にスーパーチャージャーが過給を始め、トルクがスッと立ち上がる。2000~5000rpmの速さは、もう圧倒的だ。

ルーツ式スーパーチャージャーとトップマウント式のインタークーラーを備えた4A-GZE型エンジン。過給に合わせて圧縮比はNAの9.4:1から8.0:1に落とされる。また、最大トルクは4A-Gを4.5kgmも上回る一方で、その発生回転数は800rpm低下。低中回転域の特性を大きく改善することで、日常域での扱いやすさと実質的な速さを両立している。

しかし、スロットル操作に対するエンジンのピックアップはやや落ちる上に、5000rpm以上でエンジン回転の上昇も重くなる。速いことは間違いないが、少し切れ味が鈍いかも…というのが率直な感想だ。

走りをより楽しむため、ステアリングホイールとシフトノブをナルディ製に、ペダル類もレッツォ製アルミに交換。各メーターの配置は上のNAモデルと変わらないけど、スーパーチャージャーはイエローゾーンが7000rpmから、レッドゾーンが7500rpmからに変更される。また、4速ATモデルでは電圧計の代わりにATモード表示インジケーターが備わる。

タコメーター内に装備されるのは、緑色に点灯して作動を視覚的に知らせるスーパーチャージャーインジケーター。エアコンはグレードに関わらずディーラーオプションとされ、廉価グレードのSを除いてオートエアコンを選ぶこともできた。

ノーマルルーフの他、前期型では脱着式サンルーフ、後期型ではTバールーフが用意されたAW11。そのTバールーフも、1988年8月以降の最終型ではハーフミラーガラス(それ以前はスモークガラス)タイプとなる。取り外しはノブによるロック解除+レバー操作と簡単。外したガラスルーフは専用ケースに入れて運転席&助手席の後ろに収納できる。

前期型とはデザインが大きく異なる後期型アルミホイール。リム幅6JJの14インチで、標準装着品は表面が光沢感のあるポリッシュ仕上げとなるけど、Gリミテッドには写真のホワイトアルミホイールがオプション設定されていた。

速さだけに注目すれば、当然AW10に勝ち目がないのは分かっている。しかし、扱いやすさやフィーリングまで含めると、AW11にはない魅力があるのもまた事実だったりする。

それでいくと、車重もAW10の魅力のひとつ。AW10は前期型、AW11は共に後期型ということを差し引いて考えても、Gリミテッドより100kg、Gリミテッドスーパーチャージャーに対しては実に180kgも軽いのがAW10の大きなアドバンテージになる。

そしてその差は、ハンドリングに大きな影響を及ぼす。ステアリング操作に対するノーズの入り方やクルマの動きは、AW11よりもAW10の方が明らかに軽くてクイック。それは峠でコーナーを攻めるまでもなく、交差点を曲がるとか車線変更するとかでも分かるレベルだ。

もうひとつ言えば、前後重量配分でもAW10が有利。そもそもAW11での100kgや180kgという車重増加分は大半が後軸重に加わってリヤヘビー傾向を強めるが、AW10はエンジンが軽く、それがAW11にはない軽快感を生み出しているわけだ。

かつては「4A-G型や4A-GZ型を搭載したモデルがある以上、選択肢として3A-LU型を積んだ廉価グレードなどありえない!」と本気で思っていたが、自分が歳を取って志向や思考が変わってきたからだろうか。3台を試乗して、AW11よりもAW10の方がしっくりきたのだから面白い。

乗りやすくて、リヤミッドシップ独特の操縦感覚も味わえる。すでに旧車の仲間入りをしているが、どこかヤル気な雰囲気のAW11と違って、むしろAW10には良い意味でのユルさが感じられる。中古車のタマ数が皆無に等しく現実的でないのを承知で言うが、肩ひじ張らずAWに乗りたいなら、選ぶのは11ではなく絶対に10だ。

■MR2 1.5S
車両型式:AW10
全長×全幅×全高:3925×1665×1250mm
ホイールベース:2320mm
トレッド(F/R):1440/1445mm
車両重量:920kg
エンジン型式:3A-LU
エンジン形式:直4SOHC
ボア×ストローク:φ77.5×77.0mm
排気量:1452cc 圧縮比:9.3:1
最高出力(グロス):83ps/5600rpm
最大トルク:12.0kgm/3600rpm
トランスミッション:5速MT
サスペンション形式:FRストラット
ブレーキ:FRディスク
タイヤサイズ:FR185/60R14

■MR2 Gリミテッド
車両型式:AW11
全長×全幅×全高:3950×1665×1250mm
ホイールベース:2320mm
トレッド:FR1440mm
車両重量:1020kg
エンジン型式:4A-GELU
エンジン形式:直4DOHC
ボア×ストローク:φ81.0×77.0mm
排気量:1587cc 圧縮比:9.4:1
最高出力(ネット):120ps/6600rpm
最大トルク:14.5kgm/5200rpm
トランスミッション:5速MT
サスペンション形式:FRストラット
ブレーキ(F/R):ベンチレーテッドディスク/ディスク
タイヤサイズ:FR185/60R14

■MR2 Gリミテッドスーパーチャージャー
車両型式:AW 11
全長×全幅×全高:3950×1665×1250mm
ホイールベース:2320mm
トレッド:FR1440mm
車両重量:1100kg
エンジン型式:4A-GZE
エンジン形式:直4DOHC+スーパーチャージャー
ボア×ストローク:φ81.0×77.0mm
排気量:1587cc 圧縮比:8.0:1
最高出力(ネット):145ps/6000rpm
最大トルク:19.0kgm/4400rpm
トランスミッション:5速MT
サスペンション形式:FRストラット
ブレーキ(F/R):ベンチレーテッドディスク/ディスク
タイヤサイズ:FR185/60R14

●TEXT&PHOTO:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)
●取材協力:SKT TEL:042-519-9826/テクニカルサロンベースサイド TEL:04-2935-0376

【関連リンク】
テクニカルサロンベースサイド
http://www.tbs-motorsports.com/

キーワードで検索する

著者プロフィール

weboption 近影

weboption