「A33で唯一5速MTが設定されたエクシモ」MTで乗るVQ20のフィーリングに悶絶!

豊かなトルク感と実測燃費23.6km/Lの経済性!

VQ20DEリーンバーン仕様の実力、恐るべし

通算3代目、FFでは2代目となるA33セフィーロが登場したのは、1998年のこと。2代目A32でマキシマと統合され、アッパーミドルクラスのFFサルーンに生まれ変わったセフィーロは、3代目A33でもそのコンセプトを踏襲。

マイナーチェンジは21世紀になって間もない2001年1月。海外仕様インフィニティI30と同じ前後バンパーが装着され、全長が前期型より140mm近くも延びて4920mmに達した。また、グレード構成も見直され、スポーティなSツーリング系を廃止。ラグジュアリー志向のエクシモ系に一本化された。

グレードは上から、直噴エンジンVQ25DD(210ps/27.0kgm)を搭載する25エクシモGと25エクシモ、リーンバーン仕様のVQ20DE(160ps/20.0kgm)を載せるエクシモGとエクシモの4つで、取材車両のエクシモだけに5速MTが設定されるのだ。

VQ20DEは1994年発売の先代A32セフィーロとともに登場。同年、稼働を始めた福島のいわき工場で生産されたエンジンだ。A33への搭載にあたってはリーンバーン(希薄燃焼)化が図られ、クラストップレベルの低燃費だけでなく、CO2排出量の低減も実現。同時に、低中速域におけるトルクも格段に向上させている。

探しても簡単には見つからないエクシモの5速MT車だが、オーナーは「北米仕様と同じ5マイルバンパーでサイドマーカーも付くから」という理由で後期型に絞り、しかもボディカラーもボルドーレッドに決めた。あまりにも狙いがピンポイントすぎて難航を極めるかと思いきや、半年後にはまさにその仕様が出てきたというから、中古車探しは面白い。

5速MTのギヤ比は1速から順に3.285、1.850、1.272、0.954、0.795。1~2速が大きく離れてて4~5速がオーバードライブになる。また、最終減速比は4.167だ。

『フルリラックスコンフォート』をうたうA33の室内は広く、ゆとりが感じられる。そして、全長5mに迫る大柄な4ドアセダンを5速MTで乗るという感覚が不思議だ。

純正オプションのDVDナビはダッシュボード中央にポップアップ式モニターが備わるが(未装着時はフタ付きの小物入れ)、取材車両はそこに2DINナビを装着。パーキングブレーキはAT車の足踏み式に対して、MT車ではサイドレバー式になる。メーターは中央にスピード&タコメーターが並び、右側に水温計、左側に燃料計を配置。

開発コンセプトの“フルリラックス性能”を最もよく表すインテリア。シート表皮には肌触りの良いラッセル地が採用される。運転席には、座面の高さを前後個別に調整できるデュアルシートリフターやランバーサポート機能を装備。

シートバックは後席の二―ルームに余裕を持たせる形状で居住性を高め、上部にはアシストグリップも設けられる。

トランクルーム容量は当時ライバルだったアバロンを上回る540L(VDA式)。9インチのゴルフバッグとスポーツバッグをそれぞれ4個ずつ積める広さを誇り、開口部が大きいため荷物の積み降ろしも楽にできる。また、6:4分割可倒式の後席背もたれによりトランクスルーも可能となっている。

4インチアップとなるフーガ純正19インチホイールを装着。リム幅8.5J、オフセット+50で、フェンダーに対する張り出し具合はワイドトレッドスペーサーで調整する。タイヤは、左右非対称パターンが特徴のATRコルサ2233をセット。225/35サイズを引っ張り気味に履く。足回りにはラルグス車高調が組まれ、ノーマル比約60mmのローダウンを実現。

エンジンは静粛性が高く、吹け上がりも上質かつスムーズ。回した時のパワー感は「こんなもんでしょ」と、取り立てて言うほどのことはないが、思いのほか低中速トルクがあるため2500rpm前後で早めにシフトアップして、3~4速でダラダラ走るのも全く苦にならない。

また、とくにインジケーター類は付いていないが、燃費を稼ぐためのリーンバーン(=希薄燃焼)状態は走っている感覚で分かるというから、さすがオーナーだ。とにもかくにも、クルマとエンジンの性格が一致しているという点でA33の印象は非常に良い。

というか、5速100km/hで3000rpmだからギヤ比は全体的に低め。それが低中回転域での扱いやすさに寄与していることは言うまでもない。クラッチペダルは軽く、これならばストップ&ゴーが続く渋滞でも、その操作を煩わしく思うことはなさそうだ。

たしかに、前後方向、左右方向ともにシフトストロークが大きくてスポーティ感はまるでない。しかし逆に今時、廉価グレードゆえの実用的5速MTという方が希少だし、そこに興奮してこそマニアだとも思うのだ。

■SPECIFICATIONS
車両型式:A33
全長×全幅×全高:4920×1780×1440mm
ホイールベース:2750mm
トレッド(F/R):1530/1510mm
車両重量:1390kg
エンジン型式:VQ20DE(NEO)
エンジン形式:V6DOHC
ボア×ストローク:φ76.0×73.3mm
排気量:1995cc 圧縮比:10.0:1
最高出力:160ps/6400rpm
最大トルク:20.0kgm/4400rpm
サスペンション形式(F/R):ストラット/マルチリンクビーム
ブレーキ(F/R):ベンチレーテッドディスク/ディスク
タイヤサイズ:FR205/65R15

TEXT&PHOTO:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)

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