「日本に存在するのは並行輸入の数台のみ」魅惑の『悪魔』ダッジチャレンジャーSRTデーモンに乗った!

元GENROQ編集長・田中達也が試す!

クライスラーが本気のドラッグ仕様として作り上げた過激な市販モデルにして、日本へは数台が並行輸入されただけという超希少な個体、それが今回紹介する「ダッジチャレンジャーSRTデーモン」だ。

欧州スーパースポーツとは一線を画す戦闘力

ダッジ・チャレンジャーSRTデーモンは2つの勲章を持つ。2.92フィート(約89cm)のウイリーを達成した生産車としてギネス世界記録に認定されたことと、ストック状態でクォーターマイル(0−402m加速)を9.65秒で走ったため、「10秒未満の場合に必要となる認定ロールケージを装着していない」としてNHRAの出場禁止を食らったことだ。

もちろん、デーモンはベースとなったチャレンジャーにメーカーによって相当なチューンが施されていることは言うまでもない。「SRT」とは「ストリート&レーシング・テクノロジー」の頭文字で、元々は排気量8.0Lのダッジ・バイパーを開発するために誕生したパワー技術軍団を指す。日産のニスモや、トヨタのTRDのような存在だ。

SRTは2009年に6.1L・HEMIエンジン搭載のチャレンジャーSRT8(430ps&57.8kgm)を登場させ、2015年には716ps&65.6kgmを発揮するスーパーチャージド6.4L・HEMIに8速ATを組み合わせたSRTヘルキャットを送り出した。「ヘルキャット」とは第二次大戦中の戦闘機グラマンF6Fヘルキャット戦闘機が名前の由来だが、「性悪女、悪女」という意味のスラングでもある。ヘルキャットは1/4マイル11.2秒、0−60mph加速3.6秒、最高速度320km/hと当時のハコ車最強を誇った。

そして2018年、ダッジ・チャレンジャーSRTデーモンが誕生する。デーモンはヘルキャットをベースにさらにファクトリーチューンが施され、吊るしの状態でドラッグレースに参加して勝利することを狙った量販マシンである。

エンジンはヘルキャットベースだが、スーパーチャージャーの容量は2.4Lから2.7Lへと大容量化され、ブースト圧も11.6psiから14.5psiに。レブリミットも6200rpmから6500rpmに引き上げられている。

心臓部は、6.2L・V8 HEMIエンジンを4.5Lの容量を誇るスーパーチャージャーで過給し、100オクタンガソリンで851ps&106.4kgmを発揮する。

その根底には、1994年のインディ500でデビューウィンを飾ったイルモア製メルセデス・ベンツ500Iエンジンがある。シャシーも、デーモンのベースとなった現行チャレンジャーがデビューした2008年当時は「ダイムラー・クライスラー」時代であったから、メルセデスの後輪駆動フルサイズ乗用車用として設計されたLXプラットフォームを改良したLCプラットフォームを使い、足回りには多くのメルセデスのコンポーネントが組み込まれている。

車両には赤と黒の2つのキーフォブが付属しており、黒のフォブは出力が507psに制限される。800ps超を望む時は、赤のフォブでエンジンをかける。

ヘッドライトは4灯式に見えるが、実は内側はエアインテークダクトとなっている。リング状のスモールライトを点灯すると、内側にデーモンのエンブレムが浮かび上がるという凝ったギミックが採用される。

ヘルキャットの2027kgのボディ重量から、助手席、後部座席、スピーカー、トランクトリム、パーキングセンサー、インシュレーターなどを取り外すことで105kgの軽量化を達成している。

ダッシュボード右端のエアコン吹き出し口の下に装着されたシリアルプレート。車名ロゴと通しナンバーが記される。限定発売された3300台の内訳はアメリカ3000台、カナダ300台で、日本は並行輸入のみだ。

「デーモンクレート」のコントロールモジュール操作により細かいシャシー&エンジン等の設定が可能だ。

SRTモードでは、サスペンション、ミッションなどの設定、DRAGモードではローンチコントロールの回転数設定やシフトタイミング、レース後のクーリング設定など、ドライバーが各項目を選択することができる。

標準装着されるのはストリートドラッグタイヤのニットーNT05R。315/40−18サイズを履かせるために、同じくチャレンジャーのハイパフォーマンスモデル、ヘルキャット(前後20インチ)よりもブレーキサイズが落とされている。

実際に走らせるとデーモンは従順で穏やかだった。100オクタンガソリンを使わず通常の日本のハイオクガソリンでもレッドキーで始動すればMAX819psを発揮するのだが、気温30度を超える猛暑の交通量の多い街中でもぐずつくそぶりは皆無だったし、空いたワインディングロードでは心おきなくアクセルを踏み込んでいけた。18インチサイズしかないストリートリーガルドラッグタイヤを装着するためにブレンボ製ブレーキのサイズがヘルキャットからダウンされているが、制動力は十分。

キュイーン!というスーパーチャージャー独特の低周波ながらも甲高い悪魔の囁きを発しながら、スルスルスル、バーン!と走るのだ。その走りっぷりからは、「800馬力ってこんなに扱いやすいの!?」と思ってしまうほど。タイトなワインディングが続く山道も、全長5022mm×全幅1923mmという巨大なボディサイズを全く感じさせることなく、キビキビとした走りを披露してくれた。800馬力は常に手の中にあった。

これこそがデーモンの名前の由来となった「邪悪な速さ」なのだろうか?

REPORT:田中達也
取材協力:エージェントオートモーティブ 長野県茅野市ちの横内3108-1 TEL:0266-78-9280

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