「令和に蘇ったN2無限シティ!?」オーナーが30年かけて仕上げたVTECターボ仕様が凄すぎる!

ボディキットは仲間たちと自作!

D15B改GT-SSタービン仕様で200馬力を実現

1984年3月より、鈴鹿F2選手権の前座レースとして開催された『シティターボレース』。これは、無限(ムーンクラフトがデザイン)の超ワイドボディキットを装着したシティターボ&ターボIIベースのN2車両で開催された“喧嘩レース”だ。翌年には『シティ・ブルドッグレース』と名称が改められた。

この取材車両のオーナー、根岸さんはそんな当時のN2仕様に強い思い入れを抱くカーガイだ。正確には、小学生の頃に熱中した『よろしくメカドッグ』に登場する主人公の同僚、“いっつぁん”こと中村一路のシティターボIIに憧れたのが原点だったそう。

「念願叶って、ターボIIを購入したのが20歳の時。そこから30年を共にしてきた相棒です」とは根岸さん。長い時間を掛けながら、より理想を追い求めて現在の仕様へとステップアップを重ねてきたというわけだ。

まずは何と言ってもワイドボディ。無限のボディキットは市販されたわけではなく、あくまでもレース用。ツインリンクもてぎのコレクションホールで実車を拝むことはできるが、当時の参戦車両は基本的に回収されてしまった。ところが、世の中あるところにはあるもので、実車を発見したシティ乗りの勇士達が採寸を行い、型を起こしてレーサーレプリカを製作したのである。

「このレプリカ仕様は5台が製作されましたが、自分がこのボディを組んだのは2010年。ボディに合わせてロワアーム延長などトレッド拡大も必要になりますし、フレームへの入力は想像以上のものになります。普通の鈑金屋では対応できないと思い、ご自身もレースに参戦されていて、チューニング技術も鈑金技術も高い、大阪の安岡車体製作所にお願いしました」と根岸さん。

そうなると気になってくるのが機関系。オーバーホールしようにも、ターボIIが本来搭載するERエンジンはすでにオリジナル部品が何一つ出ない状態だからだ。

シティ乗りは部品取り用に中古車を買って延命するのが通例となっていたが、「違う考えがあっても良い」という安岡車体のアドバイスを受けて、根岸さんはエンジンスワップを決意。選んだパワーソースは、2代目シティを始め、ホンダが80年代後半の小型/中型車の多くに採用したD型エンジンだった。

D型は非常にバリエーションが多いエンジンだが、その中からチョイスしたのがEG4シビックD15Bだ。NAシングルカムとはいえVTEC機構を持ち、カタログスペックは130ps。そこに安岡車体のワンオフEXマニを介してHKSのGT-SSタービンをセット。N2仕様の138psを完全に凌駕する、200psの強心臓を組み込んだのだ。

なお、すっきりと収められているが、一部のフレームを切った上で補強を入れるなど、スワップ作業は簡単ではなかったそう。もちろん、公認車検も取得済みだ。

エンジン制御はハルテック・エリート1500を使い、セッティングはインパクトが担当。最新のフルコンによる綿密なマネージメントにより、アイドリングの安定化が図られただけでなく全域での扱いやすさも実現している。

最高出力&最大トルクは200ps&24.7kgm(ダイナパック係数ゼロ)だ。フルコン制御化に合わせて点火系も強化され、アウディ用コイルによるダイレクトイグニッション化を敢行。撤去された磁石式クランク角センサー内蔵デスビに代えて、AEM社の光学式クランク角センサーを組み込んだ。

インタークーラーはS15シルビア純正をバンパー右側に搭載。ホンダビート用のアルミラジエターやセトラブ社のオイルクーラーなど、冷却系もきっちりと強化されている。

ホイールはボルクレーシングTE37でサイズはFR7.0Jプラマイ0。タイヤはディレッツァZIII(175/60R14)だ。ブレーキはフロントがFC3SキャリパーとEG6用260mmローターで、リヤは「アルミフィンドラムがカッコ良いので」と、初代インサイト用を流用している。

追加メーターがずらりと並ぶコクピット。2台のPSPはカーナビ用と音楽再生用で、音源はパワーアンプを介してBOSEのスピーカーシステムで再生する。ステアリングはNA1、シートはEK9とタイプR純正を流用しているのもポイントだ。

トランスミッションはワイヤー式クラッチに合わせたホンダ・ロゴ(GA3)用の5速MTを流用。クラッチはエクセディ製、フライホイールは戸田レーシング製で、それぞれZCエンジン用を使う。ドライブシャフトはホンダ・キャパ(GA4/6)用だ。

ボディは、一度フルストリップ状態までバラしてレストア&補強を実施。チタン材の補強バーやドア開口部のガセットプレートが只者ではないオーラを放つ。

「古いクルマですが、絶好調。アイドリングも安定していますし、扱いやすさは今時のクルマと変わらないレベルですよ」と根岸さん。

車齢は40年に近付こうとしているが、超軽量コンパクトなボディとデジタル制御のパワフルなターボエンジンのコンビは強烈。潜在的な戦闘力は、間違いなく格上の現行スポーツモデルを撃墜できるレベルだろう。まだまだ進化させたいと語る根岸さんの“ブルドッグレーサーのこれから”が非常に楽しみだ。

PHOTO:平野陽(Akio HIRANO)
●取材協力:安岡車体製作所 大阪府摂津市新在家2-31-26 TEL:06-6827-0591/京都府久世郡久御山町野村村東91-3 TEL:075-754-7405

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