「このS14シルビアは美しすぎる!」大クラッシュから蘇った最先端ドリドレ仕様

ロケットバニーBOSSキットを軸にしたフルカスタム仕様

心臓部はRB25DET改GT-RSタービン仕様で360馬力!

19歳で免許を取るやS15シルビアのNAを購入し、即ドリフトに開眼した井手川朋憲さん。NAの非力さにストレスを感じると、これまた速攻でS14のターボに乗り替え、ドリフト道を邁進していった。

そんな時に出会ったマイヒーローの一人が、愛知県を拠点に活躍するドリフトチーム、“あ〜ぼ〜ムーン”の佐津川旭伸さん。佐津川さんが乗る4ドアのR32スカイラインに憧れ、RBサウンドにも取り憑かれた井手川さんは「次は絶対RBじゃ!」と心に誓った。

そしてもう一人、井手川さんにとって欠くことのできないヒーローが、ロケットバニー/パンデムのデザイナーとして知られるTRA京都の三浦慶さんだ。ロケットバニーから待望のS14用ワイドボディキット、通称BOSSキットが登場したことで、井手川さんの本気度は頂点に達した。

また、幸運な巡り合わせとして、以前から知り合いだった大東英嗣さんが近所で“トータルクリエイトE.PRIME”を開業。RBの換装など、もろもろの作業を依頼することができた。鈑金塗装の経験がある井手川さん自身は、BOSSキットを装着したボディにオリジナルペイントを施すことを決意。エアコン付きで街乗りもできる、綺麗でカッコ良いドリ車を目指して製作に取り掛かった。

エンジンの換装を託されたE.PRIMEの大東さんは、ECR33の前期モデルに搭載されていたRB25DETと5速MTを入手。プロペラシャフトは前、中、後のサンコイチで製作し、R33GT-Rのデフとドッキングしている。

エンジン本体はHKSのハイカム(256度)を組み込み、コクピット館林のEXマニを介してHKSのGT-RSタービンをマウント。吸気系はインフィニティ用の90φスロットルとトラストのサージタンクを備え、パワーFCによるロムチューンも行っている。

なお、BOSSキットはフロントバンパーが短いため、インタークーラーとラジエター、さらにはエアコンのコンデンサーを取り付けるためのスペースが極めて狭い。そこはコンデンサーの厚みと同じ太さのコアサポートを製作し、インタークーラーの取り回しも工夫することで乗り切っている。

エンジンルームはサイクルフェンダー仕様となるが、これはE.PRIMEオリジナルで、何と土木作業で使う一輪車のバケットをカットして作られている。これでもかとラメが入った各部のペイントも、もちろんオーナーである井手川さんの手によるものだ。

ホイールは、TRA京都の三浦さんがデザインし、エンケイが製作した2ピースの“6666 wheels!”を装着。前後9.5J×17のオフセットはフロントがマイナス45、リヤがマイナス67という深リムを実現。

遠目にはステッカーかと思ってしまう車体のロゴも、全て井手川さんが自分の手でペイントしたものだ。少なくとも6層は塗っており、ロゴ部分の段付きもほとんど感じられない。バンパーレスのリアから突き出るマフラーはE.PRIMEで製作されたワンオフ。

ちなみに井手川さんはこのセットのままドリフトも行っているが、255幅のタイヤはさすがによく食うので、ドリフトの時は内圧を4〜5キロくらい高めに設定する。サスペンションやステアリング系にはメーガンレーシングの車高調とアーム類、イケヤフォーミュラのタイロッドを使用。

インパネには追加メーター、ナビゲーション、純正の空調パネルを備えたワンオフのセンターパネルを装備。6点式のワンオフロールケージにも塗装が施さているが、後席をデリートしたスペースに交換用のタイヤを積みたいので、リヤ側のクロスバーを高い位置にマウントしているのがポイント。

室内側も一度ドンガラにしてから徹底的にペイントされており、紫、黄色、青のレイアウトがエクステリアとは逆の並びになっている。

こうして完成した渾身のS14は、2018年のWekfest JAPANとドリフト走行会イベントのドリドレ走にエントリー。アメリカの専門誌であるスーパーストリートにも取り上げられ、大きな話題となった。

と、そこまではまさに絵に描いたようなハッピーエンディングであるが、実は話には続きがある。Wekfest JAPANの直後に行われたドリドレ走でシェイクダウンを迎えたS14。何と完成からわずか1週間だというのに、ウォールにヒットする大クラッシュにより、廃車寸前のダメージを喰らってしまったのである。

では、今こうして写真で見ているS14は、そのクラッシュの前に撮影されたものかというと、さにあらず。何と井手川さんと大東さんは、S14をイチから作り直し、ほぼ同じ状態まで復活させたのである! そして2019年のWekfest JAPANに不死鳥の如くカムバックするや、事情を知っていた人が腰を抜かして驚く程のインパクトを与えたのであった。

「直す自信はありましたし、直す気しかなかったです(笑) 三浦さんや佐津川さんへのリスペクトを自分流の色で表現できたかなあと思いますが、ドリ車=ボロっていう固定観念はこれからも覆していきたいので、まだまだ頑張ります!」。

Owner Tomonori Idekawa
PHOTO:Akio HIRANO/TEXT:Hideo KOBAYASHI

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