「生産台数はたったの380台!?」急ピッチな開発でモデル末期に投入されたダイハツ・リーザスパイダー!

2シーター化に踏み切った軽スペシャリティ

EF-JL型がもたらす圧巻のパフォーマンスは必見!

1986年11月に発売されたリーザは、2代目L70系ミラをベースに誕生したダイハツ初の軽スペシャリティカーだ。直線的なスタイルのL70系ミラとは打って変わって全体的に丸みを帯び、横から見るとまるでタマゴのようなフォルムが特徴だった。

それと、リーザと言ったらぜひ触れておきたいのがホイールベース。L70系ミラから120mmも短縮され、わずか2140mmしかなかったりする。実はこの数値、後に登場する“軽スポーツカー御三家”と比べると面白く、カプチーノ(2060mm)には及ばないが、AZ-1(2235mm)やビート(2280mm)よりも圧倒的に短いのだ。

ホイールベースが短ければ基本的に回頭性も良いわけで、かつてDCCSが主催してたジムカーナイベント、ダイハツチャレンジカップのL2/L2T(軽自動車2WDのNA/ターボ)クラスにはリーザが大挙エントリーしていたという話を聞いたこともある。

少し話が脱線してしまったが、その後、リーザは1990年に実施された軽自動車の新規格化に合わせてボディサイズと排気量を拡大。1991年1月には、ミラTR-XX譲りのEF-JL型660cc直3SOHCターボ(64ps/9.4kgm)を搭載するスポーツグレード、OXY(オキシー)-Rが追加された。それをベースにオープンボディ化を図って、1991年11月に発売されたのがリーザスパイダーというわけだ。

カブリオレでもコンバーチブルでもなく“スパイダー”を名乗るのは、かつてコンパーノスパイダーを市販化したダイハツゆえ。それと東京モーターショーに参考出品した時は2+2だったが、最終的にはそれを踏襲せず2シーターで発売されることになった。

いざ実車を前にする。以前から思っていたのだが、改めて眺めてみても、やはり取って付けた感が拭えないクローズド状態は少しいただけない。ソフトトップが安っぽく見えるというか、デザインや全体的なスタイリングを吟味しないまま、見切り発車で作り上げたとしか思えないのだ。

それがオープンになると印象は激変。ソフトトップがベルトライン以下に収納されるからリヤ周りはすっきりしているし、2シーターにしたおかげで前後の視覚的なバランスも上手く取れている。もっとも、オープンカーはオープン状態でカッコ良いのが当然で、逆にクローズド状態とのギャップがこれほどあるクルマは、リーザスパイダー以外に思いつかなかったりする。

室内では、フロントウインドウに対してダッシュボードを一段低めることで開放感を演出。グリップが太く、操作性に優れるMOMO製ステアリングホイールは標準装備で、パワーステアリングは電動タイプが採用される。スピードメーターは140km/h、タコメーターは1万rpmフルスケールで8000rpmからがレッドゾーン。右下に燃料計、左下に水温計が配置される。黒地に赤文字の色使いがスポーティだ。

センターコンソールは上からエアコン吹き出し口、エアコン操作パネル、ダイハツ純正CDプレイヤー、シガーライター&灰皿。その下のラゲッジボックスはディーラーオプション品で、上段が小物入れ、下段が2DINのオーディオスペースとなっている。

セミバケットタイプでサポート性に優れるシートは、表皮に人工皮革プリセームを使ったハイグレードなもの。スパイダーが特別なモデルであることを表現する。

前席の後ろ、ベースモデルでは後席があるところに設置されたキャビネット。本体はスピーカーボードも兼ねていて、上部は手荷物などを置いておくスペースとして活用できる。また、左右スピーカーの間にはロック機構付きのコンソールボックスも備わる。

サイドウインドウを降ろしたところ。三角窓のガラスまで一体で降りてしまうところに大きな違和感を覚える。この方式ならベース車とパーツを共用できるのでコストダウンになるが、一方で急造モデルだからこうなった…という見方もできる。

オーナーを隣に乗せて試乗に向かう。シートはサポート性に優れ、ドライビングポジションも低めでスポーティな感じ。気持ち手前でミートするクラッチに注意を払いながら発進だ。始めはおとなしく3000rpmを目安に早めのシフトアップ。それでも走らなくはないし、ストレスも感じないが、さすがにその回転域を常用する乗り方だと運転していて楽しくはない。

ならば…と、今度は信号待ちから全開加速を試してみる。1速7000rpmまではあっという間で、すぐ2速にチェンジ。タコメーターの針が4000rpmを超えたあたりから急激にパワーが盛り上がってきて、それが7500rpmまで右肩上がりに持続する。その感覚は3速でも衰えず、ギヤが高い分だけ上での伸び感が強調されるようだ。本当に速い!!

それと、ここまで年式が旧くなるともう個体差以外の何者でもないのだが、取材車両に関しては思いのほかボディがしっかりしていることにも驚いた。ハンドリングが正確でキレがあるのも、理由はもちろんそこにある。動力性能はズバ抜けて高く、オープン時のスタイルだって申し分なし。後はクローズド状態のフォルムさえ良ければ…と思うのは、多くを望みすぎなのだろうか?

■SPECIFICATIONS
車両型式:L111SK
全長×全幅×全高:3295×1395×1345mm
ホイールベース:2140mm
トレッド(F/R):1215/1205mm
車両重量:730kg
エンジン型式:EF-JL
エンジン形式:直3SOHC+ターボ
ボア×ストローク:φ68.0×60.5mm
排気量:659cc 圧縮比:8.0:1
最高出力:64ps/7500rpm
最大トルク:9.4kgm/4000rpm
トランスミッション:5速MT
サスペンション形式(F/R):ストラット/セミトレーリングアーム
ブレーキ(F/R):ベンチレーテッドディスク/ドラム
タイヤサイズ:FR155/70R12

TEXT&PHOTO:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)
●取材協力:Nostalgic Car’s Oka 愛媛県伊予市下吾川1594-2 TEL:089-950-4233

「競技ベース特有の割り切り感がたまらない!」ブーンX4は生まれながらのボーイズレーサーだった!!

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