「USDM、ここに極まれり!」EJ1シビックと共に成長を続ける若きオーナーの情熱

正統派USDMの極地

あくまで走り優先! B18Cエンジンを拘りスワップ

「前のクルマがエンジンブローして、手頃なクーペを探していた時に出会ったんです。最初は車高ベタベタで峠を攻めてましたけど、徐々にUSDMへの興味が芽生えていきました」。

オーナーである山崎さんとEJ1型シビックの出会いは今から9年前、20歳の時だった。しばらくは灯火類のUS化など、USDMの定番メニューを展開していたそうだが、アメリカっぽいイジり方に傾倒するほどカスタム熱が加熱。ついにはエンジンスワップにまで手を染めることとなる。

「Wekfestジャパンに出たいなって。それで、エンジンの載せ換えと同時にオールペンと内装のリニューアルを決めました。エンジンは、“1.6Lから1.8Lに純正ボアアップ”というイメージでDC2インテグラSiRのB18Cを選択。他の部分もいかに純正っぽさを残すかが大きなテーマでした」。

そんな山﨑さんの意向を踏まえ、ビルダーとしてEJ1の製作に携わったのが、山﨑さんも所属するチーム『UP START』のメンバーである細川勇樹氏だ。

「エンジンスワップに関しては、ハスポートのマウントやライワイヤーのハーネスなど、アメリカ製の便利パーツもありますけど、あえてそれらに頼らず、純正然とした仕上がりを目指しました。ワイヤータックも闇雲にはしなかったのに対して、逆に内装のフルタックは徹底。リヤシートやトリムを外すと、おのずと燃料系とか配線類が剥き出しになるけど、それらをいかに隠して美観を保つかに時間と手間を割きましたね」。

そのように作り手の矜持を語ってくれた細川氏も、じつは同じくEJ1を所有するオーナーであり、無限のパーツを好んで使っている。「だったらこっちはスプーンにしようか?」といったノリで、山﨑さんのEJ1には可能な限りスプーンのパーツを使用することに決定。排気系から足回り、そしてエアロなどをスプーン製で固め、一体感のある王道スポーティルックスを実現した。

マシンメイクを見ていく。心臓部には、DC2型インテグラのSiRのB18C型が美しく鎮座する。ヘッドカバーがUS純正というのも気付く人だけが気付くおしゃれポイントだ。ちなみに、エアコンとパワステはデリートしているが、細川氏の言葉通り必要以上のワイヤータックは行わず「要所を隠す」作業を徹底している。

一方、元々が峠を走る目的で手に入れたクルマであるからこそエンジンの性能向上には労を惜しまず、スプーンのエキマニ、N1マフラー、エアクリーナーなどで吸排気をファインチューンしてある。

ホイールはもちろんスプーンのSW388。6.5J×15の小径サイズに、むっちりとしたアドバンネオバAD08Rを組み合わせて走れるスタンスを実現。フロントブレーキもスプーンなら、車高調もスプーンと、EJ1に転用可能なEG用パーツをふんだんに使用している。

コーナーライトを除き、ヘッドライトとテールランプはUS純正にコンバート。スプーンのカーボンリップスポイラーやカーボンボンネット、ドアミラー、GTウイングなどを装着し、ボディはUS純正色のホライゾングレーメタリックでペイント。その上でSPOONストライプも施され、アメリカのホンダ系イベントにそのまま置いてあってもおかしくない雰囲気を実現した。

室内は、マイル表示のUSメーターやNSXの純正シフトノブを備える他、スプーンのバケットシートやステアリングも装着。

ロールケージやスプーンの前後タワーバーによるスパルタンな雰囲気も見ものだが、じつは見るべきポイントは“見えなくなっているものたち”だ。トリムを剥がしたことで露となる配線類や燃料系の配管類などを巧みに隠し、バッテリーはセンターコンソール下、ヒューズボックスはグローブボックスの中に移設。シール類も綺麗に打ち替えてからペイントするなど、徹底して美観に拘った。

「ひと通り完成して、初めてWekfestジャパンに出展したのが6年前。ちゃんと自走で会場まで行くという目標も達成できて嬉しかったですね。あくまで走れる造りに拘ってきたので、今も乗るたびにワクワクします」。

USDMのエッセンスを核としながら、チューニングカーの速さとショーカーの美しさも兼ね備えたEJ1。日米を問わず、シビックに憧れる若いユーザーの模範ともなりそうな一台だ。

PHOTO:土屋勇人 Hayato Tsuchiya/TEXT:小林秀雄 Hideo Kobayashi

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