冒険と洗練を併せ持つ新世代クロスオーバー

スズキはEICMA 2025で世界初公開となる新型「SV-7GX」を発表した。排気量650ccクラスに投入されたこのモデルは、ネイキッドスポーツとアドベンチャーツアラーの中間に位置する“クロスオーバー”として開発された。

会場となったミラノ・ロー展示場6号館での発表会には、スズキ株式会社代表取締役社長・鈴木俊宏氏、そして500cc世界チャンピオンのケビン・シュワンツが登壇し、華やかな雰囲気のなかでその全貌が明らかにされた。スズキが長年築いてきたVツイン技術と最新の電子制御を融合させたこの新モデルは、都市から長距離ツーリングまで幅広いシーンでライダーに新たな体験を提供する。

SV-7GXが描く「走りの多面性」

SV-7GXの開発テーマは、“With every beat, the experience expands(鼓動とともに体験が広がる)”。その名のとおり、SV650の信頼性あるVツインエンジンを核に、V-Strom 650XTの実用性とGSX-S1000GXのスタイルを融合した一台だ。

外装デザインは風洞実験を重ね、スポーティでありながら高い防風性能を両立。LEDデイライトとプロジェクターライトは、バンク角に応じて照射範囲を変化させる設計で、夜間走行時にもカーブ内側を明るく照らす。3段階調整式スクリーンとハンドガードを標準装備し、ツーリング時の快適性も追求されている。

ライディングポジションはSV650よりもわずかにアップライトで、V-Strom譲りの余裕を持たせた姿勢を実現。17.4リットルの燃料タンクと795mmのシート高が絶妙なバランスを保ち、足つき性と航続距離を両立する。パッセンジャーシートはやや高く設けられ、同乗者の快適性にも配慮されている。

信頼のVツインと先進電子制御の融合

搭載されるエンジンは652cc水冷Vツイン。最大出力54kW(73.4PS)、最大トルク64Nmを発揮し、欧州最新排ガス規制Euro 5+に適合。燃費は4.2L/100km(23.8km/L)を実現し、満タンで400km超の航続距離を誇る。街乗りでは軽快に、高速道路では余裕のある伸びやかさを見せる。

電子制御系はスズキ最新の「S.I.R.S.(Suzuki Intelligent Ride System)」を採用。3段階の走行モードを選択できる「Drive Mode Selector」、トラクションコントロール、双方向クイックシフター、スロットルバイワイヤ、さらに発進を容易にする「Low RPM Assist」と「Easy Start System」を統合。ABS制御も加わり、快適かつ安全なライディングを支える。

シャシーはスチール製トラスフレームにリンク式リヤサスペンションを組み合わせ、7段階プリロード調整式モノショックとφ41mmテレスコピックフォークを採用。ブレーキは前290mmダブルディスクと後240mmディスクの構成で、安定感と制動力を両立する。

機能美とコネクティビティが拓く新境地

4.2インチのTFTカラーディスプレイは視認性に優れ、スマートフォン連携機能「Suzuki Ride Connect+」によりナビゲーションやメッセージ通知、天候・交通情報をリアルタイムで表示。アプリ上では燃料残量、走行履歴、駐車位置まで確認できる。USB-Cポートも備え、長距離旅でもモバイル機器を快適に利用可能だ。

カラーバリエーションはブルー・ザンテ、グレー・バッファロー、ブラック・ドバイの3色。純正アクセサリーには45Lトップケース、拡張式サイドバッグ、タンクバッグ、25mmアップのコンフォートシート、80mm延長スクリーンなどが揃う。汎用性と個性を両立する構成は、まさにクロスオーバーの本質を体現する。

SV-7GXはスズキが培ってきた技術と感性を結晶化した新たな基準点である。都市を軽やかに駆け抜け、果てしない道を旅する。そのどちらにも応える懐の深さこそが、このモデルの真価だ。スズキはEICMA 2025で、“ライダーの鼓動に寄り添う次世代クロスオーバー”という新たな章を切り開いた。

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