Porsche 911 Turbo S

システム最高出力は61PSアップの711PSを実現

回生した電力をエンジンとトランスミッションの間に挟まれた電気モーターに加え、eターボの駆動に用いる「T-ハイブリッド」システムをカレラGTSに続き採用している。
回生した電力をエンジンとトランスミッションの間に挟まれた電気モーターに加え、eターボの駆動に用いる「T-ハイブリッド」システムをカレラGTSに続き採用している。

ポルシェ911シリーズ初のハイブリッド車となったカレラGTSが搭載する「T-ハイブリッド」は、回生した電力をエンジンとトランスミッションの間に挟まれた電気モーターに加えてeターボ、すなわち電動排気ターボチャージャーの駆動にも用いるのが特徴である。その効能は高出力化と過給ラグの解消の両立。実際、システム最高出力541PS、最大トルク610Nmは、シングルターボで実現されている。

まず「S」のみの登場となった新型ポルシェ911ターボSのパワーユニットは、予想通りこのT-ハイブリッドをツインターボ化したものだ。システム最高出力は61‌PS増しの711PS。最大トルクの800Nmは変わらないが、発生回転域が特に高回転側に大きく拡大されている。

2基掛けになるeターボはコンプレッサー径が83mmから73mmに、タービン径が80mmから65mmにそれぞれ小径化。これにより過給、そして減速回生の一層のレスポンス向上を実現しているという。

Cd値は先代モデルよりも10%改善

電装系は400Vで、ハイブリッドバッテリーの容量も1.9kWhで変わらず。エキゾーストはチタニウム製で、これは6.8kgの軽量化に繋がっている。少しでもリヤヘビー傾向を軽減するためだが、それでも車重は先代より85kg増となる。

結果としてその動力性能は、0-100km/hが従来比0.2秒短縮の2.5秒、そして0-200km/hが0.5秒短い8.4秒となる。最高速度は322km/hである。

驚かされたのがニュルブルクリンク北コースでの7分3秒92という先代より約14秒も速いラップタイムだ。パワーとレスポンスの向上だけでは、そうはいかないだろう。その通り、実は新しい911ターボSはシャシーにも入念に手が入れられている。

驚異的な制動力を誇るブレーキシステム

リヤのブレーキディスク径は390mmから410mmに拡大。新開発のブレーキパッドを採用したことで強力な制動力を発揮する。
リヤのブレーキディスク径は390mmから410mmに拡大。新開発のブレーキパッドを採用したことで強力な制動力を発揮する。

トピックと言えばehPDCCだろう。可変スタビライザーのポルシェダイナミックシャシーコントロールが400V電装系を用いる電気油圧制御式となり、レスポンスを向上させたのだ。さらに、リヤタイヤは10mmワイドの325/30ZR21サイズに拡大され、リヤブレーキディスク径も20mm大きな410mmとされた。

忘れてはならないのが空力だ。アクティブエアロダイナミクスは、垂直レイアウトのクーリングエアフラップ、アクティブフロントディフューザーと組み合わされ、Cd値は最大10%低減されているという。

試乗の舞台はスペインのマラガ近郊。まずはサーキットで、クーペのステアリングを握った。コースに出てまず圧倒されたのが、そのレスポンスだった。もちろん期待はしていたが、アクセルを踏み込んだ瞬間の間髪入れないトルクの立ち上がりとその分厚さは想像以上で、正直なところ感動だけでなく畏怖も一気に襲ってきたほどである。

リヤシートは無償で設定可能

それでも踏み込んでいくと、高回転域に至るまでとにかくトルクが分厚く、加速の勢いが衰えない。むしろパワーを炸裂させながらトップエンドまで、そのまま離陸しそうな勢いで吸い込まれていく。

けれど心配は要らない。進入が速過ぎたかと思った時も、ブレーキペダルを思い切り蹴飛ばしたらみるみる速度が落ちて、あっさりターンインできたのには呆気にとられてしまった。強化されたブレーキ、効きもタッチもさすがポルシェである。

コーナリングはコントロールの幅が一層広がった印象だ。鼻先の軽さを活かしてコーナーに飛び込んだら、あとはアクセルで軌跡をどのようにも調整できる。正確無比なアクセルレスポンスは、こういう場面で大きな武器になる。また、サスペンションはしなやかに動き、縁石で弾かれるようなこともない。

一緒にコースインしたのがCTCC(中国ツーリングカー選手権)のドライバーで、とんでもないペースでの走行となったのだが、おそらくGT3だったら無事ではなかったはず。懐深い911ターボSだからこそ、超ハイスピードドライビングに、どこか余裕を感じながら没頭できたのは間違いない。

官能的なエキゾーストサウンドにも注目だ

圧倒的な速さを見せる新型911ターボSだが、エキゾーストサウンドも非常に官能的だ。チタニウム製エギゾーストが素晴らしいサウンドを奏でる。
圧倒的な速さを見せる新型911ターボSだが、エキゾーストサウンドも非常に官能的だ。チタニウム製エギゾーストが素晴らしいサウンドを奏でる。

続いては911ターボSカブリオレで一般道に出た。ここで一番感心させられたのは実は乗り心地で、ノーマルモードでは、ソフトと思えるくらい脚が動くのだ。これはehPDCCの効果。必要な時に瞬時に引き締められるので、普段は至極快適な乗り心地を実現できるのである。

とてつもなく速いのは言うまでもないとして、今度の911ターボSはサウンドも良い。カレラGTSでも感じたが、新エンジンはノイズが少なく、排気音も濁りが少なく感じられる。チタニウム製エギゾーストの心地良いサウンドを楽しめた。従来同様、ボディの剛性感などにも不足は一切なし。サーキットを走らないならカブリオレをお勧めしたい。

正直、eターボはカレラGTSで経験済みということもあり、乗る前には「大体こんな感じだろう」と勝手に想像している部分もあった。しかし実際の新型911ターボSは、パワートレインだけでなくトータルで一段上の高みに達した、事前の想像のはるか上を行く圧巻の1台に仕上がっていた。それはそうだ。911ターボSとは、常にそうあることを宿命づけられた存在なのだから。

REPORT/島下泰久(Yasuhisa SHIMASHITA)
PHOTO/Porsche AG
MAGAZINE/GENROQ 2026年1月号 

SPECIFICATIONS

ポルシェ911ターボS

 ボディサイズ:全長4551 全幅1900 全高1305mm
ホイールベース:2450mm
車両重量:1725kg
エンジン:水平対向6気筒DOHCターボ
総排気量:3591cc
最高出力:471kW(640PS)/6500rpm
最大トルク:760Nm(77.5kgm)/2750-5000rpm
モーター最高出力:60kW(82PS)
モーター最大トルク:188Nm(19.2kgm)
トランスミッション:9速AT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前255/35ZR20 後325/30ZR21
最高速度:322km/h
0-100km/h加速:2.5秒
車両本体価格:3635万円

 

【問い合わせ】
ポルシェ コンタクト
TEL 0120-846-911
https://www.porsche.com/japan/

「ポルシェ 911 ターボS」の走行シーン。

911史上最強の711馬力を発揮する「ポルシェ911ターボS」がデビュー「強力なT-ハイブリッド搭載」

ポルシェはドイツ・ミュンヘンで開催中の「IAAモビリティ 2025」において、911シリーズのトップグレードとなる新型「911 ターボS」を発表した。これを受けて、ポルシェジャパンは、革新的な電動ツインターボパワートレイン「T-ハイブリッド」技術を採用した新型「911 ターボS」と「911 ターボS カブリオレ」の予約受注を、全国のポルシェ正規販売店において9月8日からスタートしている。