リバイバルと未来戦略の幕開け

イタリアの老舗ブランド、Moto Morini(モトモリーニ)が2025年11月にミラノで開催された世界最大級のモーターサイクルショー「EICMA 2025」において、重要な新モデル群を発表した。中心となったのが、1980年代の伝説的デュアル・スポーツモデルの名称を現代に甦らせたKanguro(カングーロ)300だ。これは単に往年の名前を復活させただけではなく、Moto Moriniが今後のグローバル戦略においてどのような方向性を描いているかを示す象徴的なモデルとも言える。
Kanguroはコンパクトで軽量、そしてアクセスしやすい冒険仕様のデュアル・アドベンチャーバイクとして設計され、従来の大型アドベンチャーと異なる、新しい層のライダーをターゲットに据えている。このパッケージは性能と扱いやすさのバランス、そしてブランドの本質である「走る楽しさ」を両立することを目的としている。
Moto Moriniはこの新型を中心に、ブランド全体の成熟と多様性をアピールすることを狙っており、伝統的なデザイン哲学と現代的なエンジニアリングの融合を試みている。EICMAのプレスカンファレンスでは、Kanguroをはじめ、他にも複数の注目モデルが並び、国内外のメディアや業界関係者の注目を集めた。
新生Kanguro 300|走りに満ちたデザイン
新型Kanguro 300は、300ccクラスの単気筒エンジンを搭載するデュアル・アドベンチャーバイクとして登場し、21インチフロントホイールを備えた本格的なオフロード走行能力を持つ。エンジンは約33hpを発生するスペックとして設計され、日常の通勤/ツーリングから未舗装路まで幅広いシーンでの走破性を確保する。
車体はスチールフレームを基軸に、アルミ製のスイングアームとリアサブフレームを組み合わせた構造とされるなど、耐久性と軽量性の両立を図っているという。さらに前後サスペンションは十分なトラベル量を提供し、荒れた路面でも安定した走行が可能だ。またABSシステムはオフロードでの走行にも対応するためにスイッチで設定変更できる機能が導入される予定とされ、ライダーの走行スタイルに柔軟に合わせることができる設計となっている。
デザイン面では、1980年代に好評を博したオリジナルKanguroの印象を現代的なフォルムで再解釈し、スリムで機能的なプロポーションを維持している。その外観は古典的なエンデューロバイクの雰囲気を残しながらも、現代のライダーが求めるモダンさと快適性を両立したものになっている。
さらに、EICMA会場では標準仕様のほかにRallyバージョンも展示された。Rallyは低めのフロントフェンダーや小型ウインドシールド、専用のオフロード装備が与えられ、冒険心と実用性をさらに高めている。こうした派生モデルの存在は、Kanguroの多様な活用シーンを想定した柔軟性を示すものだ。
多角化するラインナップ|伝統と革新の共存
EICMA 2025においてMoto MoriniはKanguroだけでなく、他にも注目すべきモデルを披露している。たとえば歴史的に深いルーツを持つ3½ Sportは、1974年に登場したオリジナルの精神を受け継ぎつつ、現代の走行性能と扱いやすさを追求したモデルとして再解釈されている。エンジンは350ccのVツインを採用し、軽快なフットワークと高い回転 / トルク特性で幅広いライダーに対応するとされている。
また、Rumble(ランブル)のようなボバー調スタイルモデルも加わった。Rumbleはクラシックなアメリカンカスタム文化を尊重しながら、簡素なラインと筋肉質なフォルムによって独自の存在感を放つ。これはMoto Moriniが単なるスポーツ/アドベンチャーにとどまらず、多様な顧客の嗜好に応える戦略的なラインナップ構築を進めていることを示している。
さらに、ツーリング向けのクロスオーバーモデルであるCorsaro GTも展示された。大排気量Vツインエンジンを搭載し、都市部から長距離ツーリングまで快適な走行を提供する機体として設計されている。これらのモデル群は、Moto Moriniが単一ジャンルに依存せず、ブランド価値を多面的に広げようとする姿勢を象徴するものだ。
ブランドの成熟と新たな挑戦
Moto MoriniがEICMA 2025で見せたプレゼンテーションは、単なる新モデル発表を超えた戦略的な展開だったと言える。伝統的な名前を現代の市場に対応させるために再構築したKanguro 300は、軽量アドベンチャー市場に新風を吹き込む可能性を秘めている。
同時に、3½ Sport、Rumble、Corsaro GTといった幅広いモデルを一堂に示したことで、Moto Moriniが多様な顧客ニーズを捉えつつ、ブランドとしての存在感を再構築していることが明確になった。各モデルはそれぞれ別の乗り味と価値観を提供し、単一のスタイルに縛られない自由なモーターサイクル文化を提案している。
この種の多角化戦略は、イタリアブランドならではのスタイルと走りへのこだわりを土台に、現代の競争激しい市場で生き残るための重要な条件となるだろう。Moto Moriniが今後どのような進化を遂げるのか、そして新生Kanguroが世界中のライダーにどのような反応をもたらすか、注目が集まる。
