ヤマハ・WR155R……53万4600円
※こちらの車両はオートサロンオギヤマが取り扱う並行輸入車となっております。




低中速重視としたセッティングにより非常に扱いやすい

ヤマハの「WR」は、エンデューロレーサーからスタートしたブランドゆえに、コンペティティブな香りを求めるベテランも多いだろう。かつてラインナップされていた「WR250R」や「WR250X」は、公道用とは思えないほどスパルタンな性格であったのは事実であり、販売が終了した現在では半ば神格化された感もある。
そんな歴史を持つWRブランドは、ヤマハの説明によると、徐々にコンセプトが「勝つ」ことから「走りを楽しむ」へと変化したという。2009年、欧州市場向けに「WR125R」が、2019年にはASEAN市場向けに「WR155R」が登場し、WRはオフワールドの裾野を広げることに成功した。
今回、筆者が試乗したWR155Rは、生産国であるインドネシアからオートサロンオギヤマが独自に輸入した車両だ。2019年のデビュー時から大きな変更はなく、今年で8シーズン目を迎えたロングセラーモデルである。
エンジンは、YZF-R15やXSR155と同系の155cc水冷シングルだ。最高出力は16.7PSで、これは先の2台のインドネシア仕様より13%ほど少ない。付け加えると、つい先日発表されたWR125Rが15PSなので、その差はわずか1.7PSということになる。

ただ、実際に走らせてみると、筆者がつい先日試乗したXSR155よりも明らかに低中回転域でのトルクが厚く感じられる。具体的には、2000rpm付近からギクシャクせずにグンッと発進でき、勾配が10%を超えるような峠道もグイグイと上っていく。加えて、林道で足を着きながら進むようなシーンでは、意外なほどエンストしにくいのだ。筆者はWR125Rに試乗した経験がないため比較はできないが、この粘り強さは未舗装路で大きな武器となるだろう。難点を挙げるとすれば、アシスト&スリッパークラッチの非採用によるレバー操作力の重さだが、これについてはカスタマイズパーツなどで軽減できる可能性は大だ。
今回の試乗車は登録したばかりのド新車だったため、上限回転数を6000rpm付近に設定。7400rpmで吸気カムが切り替わるVVAについては、試乗中に何度かスロットルを大きめに開け、その作動を確認するにとどめた。いわゆる慣らし運転を実施したわけだが、そうした条件下においてもWR155Rは街乗りに足る動力性能を発揮し、勾配のきつい峠道でもそれほど力不足を感じなかった。低中速重視としたセッティングは、通勤通学から林道走行まで多くのシーンにおいて大正解であり、実はXSR155のようなネイキッドにも合うのではないかと思ったほどだ。
VVAが切り替わるとエンジン付近からカシャッという小さな作動音が聞こえ、メーターに「VVA」の文字が表示される。だが、パワーフィールに大きな変化はなく、極めてシームレスに高回転域へと突入する。最高出力こそYZF-R15やXSR155に及ばないが、そこに至るまでの勢いがあるので、全体的な速さ“感”としては大差はない。
フルサイズトレールならではの操安性、サスの動きも良し

WR155Rでまず評価の対象となるのが足着き性だろう。シート高は880mmと高く、しかも乗車1Gでの沈み込み量は少なめ。フルサイズのトレール車として本格的に設計されていることが分かる。オートサロンオギヤマでは、車高が約40mm下がるロワーリングキットや、座面が約25mmダウンするローシートを販売しており、この二つを装着すると計算上ではシート高が815mmとなる。これは最終型セロー250(DG31J)よりも15mm低いのだ。
ハンドリングは、フルサイズのトレール車に共通するもので、フロントタイヤの舵角の付き方は穏やかだ。スロットルのオンオフで車体がスムーズにピッチングし、それを利用することでクイックに向きを変えることも可能。ペースを上げてもフレーム剛性に不足はなく、それでいて硬すぎないことから、先日試乗したスズキ・DR-Z4Sよりも取っ付きやすい印象がある。

ブレーキについては、慣らしが進んでからは十分に効力を発揮するようになり、コントロール性の高さを確認することができた。絶対制動力はセロー250を上回り、急勾配の下り坂でも不足を感じなかった。なお、ABSは装備されていないので、その点はご注意を。
さて、このWR155Rを試乗している際にふと頭に思い浮かんだのが、カワサキのKLX230 シェルパだ。ローダウン仕様のKLX230 Sをベースに、外装と車体色をアウトドアテイストとしたモデルで、2025年9月にはさらにシート高を20mm下げた「KLX230 シェルパ S」がラインナップに加わった。

このシェルパと同様の手法で、WR155Rをベースに車高を下げ、外装をアウトドアテイストとした車両を「WR155R セロー」として売り出すのはどうだろうか。かつてのセローの復活を望む声が大きいことは重々承知だが、筆者のようにキャンプツーリングの相棒として使うなら、こちらの方が優れていると感じるからだ。
WR155Rのシャシーはセローよりも剛性感があり、これなら100km/h巡航中に横風を喰らっても恐怖を感じることはないだろう。エンジンは水冷のためメカノイズが少なく、スロットルレスポンスにも張りがあり、ミッションが6段(セローは2005年に225から250となり、6段から5段へ)というのもうれしい。液晶ディスプレイにはタコメーターや燃料計、ギヤポジションインジケーター、そして瞬間&平均燃費計があるので非常に便利だった。そして、ブレーキが十分以上に利く上に、ライディングポジションが窮屈ではないというのも印象を良くしている。

唯一、シートの座り心地だけがネックで、常に痛みが少なくなるような座り方を模索していた。ローダウンシートはさらにウレタンが薄くなることから、導入を検討されている方はそのことを頭に入れておいた方がいいだろう。
通勤通学からちょっとした林道遊びまで、幅広く使えることをコンセプトに誕生したWR155R。その狙いは見事に達成されていることを確認できた。こういう立ち位置の軽二輪デュアルパーパスが少ないだけに、ぜひ多くの人にこのモデルを知ってもらい、バイク遊びの幅を広げてほしいと思う。
ライディングポジション&足着き性(175cm/68kg)
最低地上高や目線の高さを確保するために、シート高は880mmと高めに設定。両足を着こうとするとご覧のとおりカカトが大きく浮くが、片足接地に慣れてしまえばこの弱点を克服できるだろう。ハンドル位置は低めで、街乗りでは操縦しやすいが、スタンディングをメインにするならもう少し高くしたい。
ディテール解説










ヤマハ WR155R 主要諸元
全長/全幅/全高 2,145mm/840mm /1,200mm
シート高 880mm
軸間距離 1430mm
最低地上高 245mm
車両重量 134kg
原動機種類 水冷, 4ストローク, SOHC, 4バルブ, VVA
気筒数配列 単気筒
総排気量 155.09cm3
内径×行程 58.0×58.7mm
圧縮比 11.6:1
最高出力 12.3kW(16.7PS)/10000r/min
最大トルク 14.3N・m(1.46kgf・m)/6500r/min
始動方式 セルフ式
潤滑方式 ウェットサンプ
エンジンオイル容量 1.10L
燃料タンク容量 8.1L
吸気・燃料装置/燃料供給方式 フューエルインジェクション
点火方式 TCI(トランジスタ式)
バッテリー型式 YTZ4V
クラッチ形式 湿式, 多板
フレーム形式 セミダブルクレードル
タイヤサイズ(前/後) 2.75-21 45P/4.10-18 59P
制動装置形式(前/後) φ240mm油圧式シングルディスクブレーキ/φ220mm油圧式シングルディスクブレーキ
懸架方式(前/後) φ41mmテレスコピック/スイングアーム(リンク式)
乗車定員 2名
製造国 インドネシア






