ヤマハ・WR155R……53万4600円


※こちらの車両はオートサロンオギヤマが取り扱う並行輸入車となっております。
WR155Rの初登場は2019年。これまでに日本で正規に販売されたことはないが、今回お借りしたオートサロンオギヤマなどのショップが独自にインドネシアから輸入している。当媒体では過去に何度も取り上げており、ご記憶の方も多いことだろう。なお、これを執筆している2026年1月中旬現在、車両価格は125より4400円安い。
車体色はブルーとブラックの2種類。フレームはスチール製セミダブルクレードルで、ホイール径はフロント21インチ、リヤ18インチというフルサイズトレールだ。
2026年1月30日発売のWR125R ABS(53万9000円)は、WR155Rをベースに設計された。ホイールトラベル量はフロント215mm、リヤ187mmで、ブレーキディスク径はフロントφ267mm、リヤφ220mmだ。メーターは155とほぼ同一デザインながら、スマホとの連携機能を組み込んでいる。シートとテールカウル以外の外装は125専用設計で、ABSやチャコールキャニスター、エバポレーターを追加するなど、変更点は多岐にわたる。

低中速重視としたセッティングにより非常に扱いやすい

ヤマハの「WR」は、エンデューロレーサーからスタートしたブランドゆえに、コンペティティブな香りを求めるベテランも多いだろう。かつてラインナップされていた「WR250R」や「WR250X」は、公道用とは思えないほどスパルタンな性格であったのは事実であり、販売が終了した現在では半ば神格化された感もある。

そんな歴史を持つWRブランドは、ヤマハの説明によると、徐々にコンセプトが「勝つ」ことから「走りを楽しむ」へと変化したという。2009年、欧州市場向けに「WR125R」が、2019年にはASEAN市場向けに「WR155R」が登場し、WRはオフワールドの裾野を広げることに成功した。

今回、筆者が試乗したWR155Rは、生産国であるインドネシアからオートサロンオギヤマが独自に輸入した車両だ。2019年のデビュー時から大きな変更はなく、今年で8シーズン目を迎えたロングセラーモデルである。

エンジンは、YZF-R15やXSR155と同系の155cc水冷シングルだ。最高出力は16.7PSで、これは先の2台のインドネシア仕様より13%ほど少ない。付け加えると、つい先日発表されたWR125Rが15PSなので、その差はわずか1.7PSということになる。

YZF-R15と同系の155cc水冷SOHC4バルブ単気筒エンジンを、やや起こし気味にして搭載。吸気バルブ側に可変バルブタイミング機構“VVA”を組み込むのも同様だが、最高出力はR15の19.3PS(インドネシア仕様の場合。日本仕様は19PS)に対し、16.7PSに抑えられる。ヤマハインドネシアの公式サイトによると、これはオフロードでの走破性を高めるための仕様変更とのこと。トランスミッションは6段だ。

ただ、実際に走らせてみると、筆者がつい先日試乗したXSR155よりも明らかに低中回転域でのトルクが厚く感じられる。具体的には、2000rpm付近からギクシャクせずにグンッと発進でき、勾配が10%を超えるような峠道もグイグイと上っていく。加えて、林道で足を着きながら進むようなシーンでは、意外なほどエンストしにくいのだ。筆者はWR125Rに試乗した経験がないため比較はできないが、この粘り強さは未舗装路で大きな武器となるだろう。難点を挙げるとすれば、アシスト&スリッパークラッチの非採用によるレバー操作力の重さだが、これについてはカスタマイズパーツなどで軽減できる可能性は大だ。

今回の試乗車は登録したばかりのド新車だったため、上限回転数を6000rpm付近に設定。7400rpmで吸気カムが切り替わるVVAについては、試乗中に何度かスロットルを大きめに開け、その作動を確認するにとどめた。いわゆる慣らし運転を実施したわけだが、そうした条件下においてもWR155Rは街乗りに足る動力性能を発揮し、勾配のきつい峠道でもそれほど力不足を感じなかった。低中速重視としたセッティングは、通勤通学から林道走行まで多くのシーンにおいて大正解であり、実はXSR155のようなネイキッドにも合うのではないかと思ったほどだ。

VVAが切り替わるとエンジン付近からカシャッという小さな作動音が聞こえ、メーターに「VVA」の文字が表示される。だが、パワーフィールに大きな変化はなく、極めてシームレスに高回転域へと突入する。最高出力こそYZF-R15やXSR155に及ばないが、そこに至るまでの勢いがあるので、全体的な速さ“感”としては大差はない。

フルサイズトレールならではの操安性、サスの動きも良し

WR155Rでまず評価の対象となるのが足着き性だろう。シート高は880mmと高く、しかも乗車1Gでの沈み込み量は少なめ。フルサイズのトレール車として本格的に設計されていることが分かる。オートサロンオギヤマでは、車高が約40mm下がるロワーリングキットや、座面が約25mmダウンするローシートを販売しており、この二つを装着すると計算上ではシート高が815mmとなる。これは最終型セロー250(DG31J)よりも15mm低いのだ。

ハンドリングは、フルサイズのトレール車に共通するもので、フロントタイヤの舵角の付き方は穏やかだ。スロットルのオンオフで車体がスムーズにピッチングし、それを利用することでクイックに向きを変えることも可能。ペースを上げてもフレーム剛性に不足はなく、それでいて硬すぎないことから、先日試乗したスズキ・DR-Z4Sよりも取っ付きやすい印象がある。

ブレーキについては、慣らしが進んでからは十分に効力を発揮するようになり、コントロール性の高さを確認することができた。絶対制動力はセロー250を上回り、急勾配の下り坂でも不足を感じなかった。なお、ABSは装備されていないので、その点はご注意を。

さて、このWR155Rを試乗している際にふと頭に思い浮かんだのが、カワサキのKLX230 シェルパだ。ローダウン仕様のKLX230 Sをベースに、外装と車体色をアウトドアテイストとしたモデルで、2025年9月にはさらにシート高を20mm下げた「KLX230 シェルパ S」がラインナップに加わった。

2025年1月に試乗したカワサキ・KLX230 シェルパ。こちらもフルサイズのトレール車で、232ccの空冷シングルは18PSを発揮する。車重はWR155Rと同じ134kgで、シート高は845mmとなっている。63万8000円。試乗インプレッションはこちら

このシェルパと同様の手法で、WR155Rをベースに車高を下げ、外装をアウトドアテイストとした車両を「WR155R セロー」として売り出すのはどうだろうか。かつてのセローの復活を望む声が大きいことは重々承知だが、筆者のようにキャンプツーリングの相棒として使うなら、こちらの方が優れていると感じるからだ。

WR155Rのシャシーはセローよりも剛性感があり、これなら100km/h巡航中に横風を喰らっても恐怖を感じることはないだろう。エンジンは水冷のためメカノイズが少なく、スロットルレスポンスにも張りがあり、ミッションが6段(セローは2005年に225から250となり、6段から5段へ)というのもうれしい。液晶ディスプレイにはタコメーターや燃料計、ギヤポジションインジケーター、そして瞬間&平均燃費計があるので非常に便利だった。そして、ブレーキが十分以上に利く上に、ライディングポジションが窮屈ではないというのも印象を良くしている。

かつて筆者が新車から所有していたヤマハ・ツーリングセロー。これだけ積載するとフレームが大きくしなることから速度を落とさざるを得ず、高速道路では後続のトラックにプレッシャーをかけられながら走ることに。加えて、これだけ荷物を積むと峠道の下りで減速しきれないこともしばしば。足着き性の良さが注目されがちだが、相対的にステップが高くなり、身長175cmの筆者にはスーパースポーツ並みに膝の曲がりがつらかった。結果、1万7000kmを走行した時点でスズキ・Vストローム250SXに乗り換えた。

唯一、シートの座り心地だけがネックで、常に痛みが少なくなるような座り方を模索していた。ローダウンシートはさらにウレタンが薄くなることから、導入を検討されている方はそのことを頭に入れておいた方がいいだろう。

通勤通学からちょっとした林道遊びまで、幅広く使えることをコンセプトに誕生したWR155R。その狙いは見事に達成されていることを確認できた。こういう立ち位置の軽二輪デュアルパーパスが少ないだけに、ぜひ多くの人にこのモデルを知ってもらい、バイク遊びの幅を広げてほしいと思う。

ライディングポジション&足着き性(175cm/68kg)

最低地上高や目線の高さを確保するために、シート高は880mmと高めに設定。両足を着こうとするとご覧のとおりカカトが大きく浮くが、片足接地に慣れてしまえばこの弱点を克服できるだろう。ハンドル位置は低めで、街乗りでは操縦しやすいが、スタンディングをメインにするならもう少し高くしたい。

ディテール解説

トレール車では珍しく左出しのアップマフラーを採用。これはエキパイレイアウトのコンパクト化と左右重心位置のバランスを考慮した結果だ。樹脂カバーで覆われているため、乗降時に足が触れても熱さを感じることはない。
フロントフォークはφ41mm正立式。ホイールのリムはアルミ製だ。フロントブレーキはφ240mmソリッドディスクと、ニッシン製ピンスライド片押し式2ピストンキャリパーの組み合わせだ。ちなみにWR125Rのディスク径はφ267mmで、これはABSとの組み合わせで大径化が可能になったという。
スイングアームは角断面のスチール製。リヤブレーキはφ220mmディスクとニッシン製シングルピストンキャリパーのセットだ。ABSや前後連動システムは非採用。
リヤサスペンションはリンク式モノショックで、プリロート調整機構あり。インドネシアではデイトナ製のロワーリングキットが純正アクセサリーとして用意されており、これをリヤサスに組み込むと車高が約40mm下がるという。オートサロンオギヤマでは1万4520円で販売している。
ハンドルバーはスチール製で、クランプはラバーマウントとなっている。燃料タンク容量は8.1Lだ。
必要最小限のスイッチボックス。ハザードランプが設けられているのはうれしい。
バーグラフ式のタコメーターと燃料計、ギヤポジションインジケーターを持つLCDマルチファンクションメーター。ボタンを押すたびに積算計、トリップ1、トリップ2、時計、瞬間燃費、平均燃費と表示が切り替わる。
着座位置の移動がしやすいスリムなシート。短時間の試乗においても硬さが気になったので、ロングツーリングに使うなら対策は必至だろう。オートサロンオギヤマでは座面が約25mm下がるローダウンシート(1万4300円)を販売中だ。
左側のシュラウド内にはバッテリーがレイアウトされている。ここを覆うカバーはキーロックの解除だけでなくプッシュリベットを外す必要があるので注意。125ではバッテリーをエアクリーナーボックスの右側に移設し、この空いたスペースにABSユニットをレイアウトしている。
灯火類はすべてフィラメント球だ。昨今はLEDが主流なので、ハロゲン球のヘッドライトは暗く感じるかもしれない。なお、兄弟車のWR125RはクラスDを満たす配光性能のLEDユニットを採用している。

ヤマハ WR155R 主要諸元

全長/全幅/全高 2,145mm/840mm /1,200mm
シート高 880mm
軸間距離 1430mm
最低地上高 245mm
車両重量 134kg
原動機種類 水冷, 4ストローク, SOHC, 4バルブ, VVA
気筒数配列 単気筒
総排気量 155.09cm3
内径×行程 58.0×58.7mm
圧縮比 11.6:1
最高出力 12.3kW(16.7PS)/10000r/min
最大トルク 14.3N・m(1.46kgf・m)/6500r/min
始動方式 セルフ式
潤滑方式 ウェットサンプ
エンジンオイル容量 1.10L
燃料タンク容量 8.1L
吸気・燃料装置/燃料供給方式 フューエルインジェクション
点火方式 TCI(トランジスタ式)
バッテリー型式 YTZ4V
クラッチ形式 湿式, 多板
フレーム形式 セミダブルクレードル
タイヤサイズ(前/後) 2.75-21 45P/4.10-18 59P
制動装置形式(前/後) φ240mm油圧式シングルディスクブレーキ/φ220mm油圧式シングルディスクブレーキ
懸架方式(前/後) φ41mmテレスコピック/スイングアーム(リンク式)
乗車定員 2名
製造国 インドネシア