
ヤマハ発動機の二輪車組立工場見学が2024年秋に再開され、2004年以来の累計参加者数が3万5,000人を突破。AGV自動搬送車など最新技術を間近で体験できる。
4年間の休止を経て工場見学ツアーが復活
ヤマハ発動機の企業ミュージアム「コミュニケーションプラザ」で実施される工場見学ツアーが、コロナ禍による約4年間の休止を経て2024年秋から再開された。児童や生徒を対象とした学校単位の見学受け入れは2004年以来続く人気プログラムで、累計参加者数は3万5,000人を超える実績を誇る。
主に小・中学校の総合的な学習(探求)の時間の授業として活用されており、時には高校や大学等からの申し込みも舞い込むという。地域の教育機関から高い評価を受けている工場見学の魅力を探ってみよう。
AGV自動搬送車による最新の生産システムを見学
再開後の組立工場では、AGV(自動搬送車)によるバイパス方式の生産が新たに導入されている。二輪車は1台あたり約1,000~3,000点の部品で構成され、この工場では連日約9,000種・計60万点もの部品が集まってくる膨大な物量を効率的に処理している。
コミュニケーションプラザの上平万裕紀さんは「作業者の体格によって可変する作業台、部品の組み忘れ防止のための管理体制、また渋滞を避けて次の工程まで自ら移動するAGVなど、組立におけるさまざまな課題をどのように解消しているのかを実際に見てもらいたい」と話す。

モノづくりの現場で技術革新を体感
工場内を一望できる高所から、AGVバイパス方式で組み立てられる様子を見学できるのが大きな特徴だ。同時に複数のモデルが組み立てられる現場では、異なる複数の製品を少量ずつ、かつ同時に効率よく組み立てるための綿密な計画と設備の工夫を目の当たりにできる。
人の感性を重視する完成検査工程がクライマックス
工場見学のクライマックスとも呼べるのが、100項目以上を1台ずつ検査する完成検査場である。中学2年生から「この検査をAIなどに置き換えることはできないか? 」との質問が出ることもあるが、ガイドを務める生産統括部のスタッフは丁寧に説明する。
「完成検査は、定められたルールで正確に行うことはもちろんですが、ヤマハ発動機では人の感性をとても大切にしています。オートバイは人が操作するものですし、豊かな経験を持つ検査員にしか見つけられないことがあると考えています」
製造業への印象が大きく変化
見学後の生徒からは「(二輪車の組立は)重労働というイメージを持っていたが、作業環境が整っていて、実は技術的なスキルが求められる仕事ということがわかった」「将来、この工場で働いてみたいと思った」など、製造業に対する印象が変化したとの感想が多く寄せられている。

企業ミュージアムでの展示見学も充実
工場見学後は、企業ミュージアム「コミュニケーションプラザ」での展示見学も楽しめる。ヤマハ発動機の歴史や技術、製品の変遷を学べる貴重な機会となっている。
後日、レポートなどを送ってくれる学校もあり、「そうしたものは、生産に関わる社員の励みにもなっています」と上平さんは語る。本社近隣の学校を中心に、すでに秋口から年末にかけての予約も入り始めているという。
製造業の担い手育成に貢献
広報グループの徳留弥生さんは「少子高齢化や製造業の労働環境のネガティブなイメージから、近年、工場での働き手不足が課題になっています。今回生徒の皆さんにAGVバイパス方式などを実際に見ていただいたことで、印象刷新を図れたのではと感じることができました」と手応えを語る。
当社の工場見学が将来の製造業の担い手増加の一助になればとの思いが込められた取り組みだ。
