Porsche 911 GT3 Cup
競技車両ならではのオーラ


正式名は911GT3 Cup。カップカーはタイプ996の時代にはじまり、997、991そしてタイプ992へと進化を遂げてきた。現在は前期型のタイプ992Iをベースとしたカップカーによってレースが行われている。カレラカップへの参戦車両は最新モデルであることが義務付けられており、市販車が992IIへとモデルチェンジしたことを受け、今後はカップカーもアップデートされることになる。ちなみに991など一世代前のマシンでもレースが楽しめるよう、2019年からは「ポルシェスプリントチャレンジジャパン」という新しいレースシリーズが始まっており、カップカーが992IIへと移行した際にも、このシリーズでは992Iでの参戦が可能となっている。
低く構えた車高、大きく張り出したフェンダー、大きなリヤウイングと、カップカーを間近で見ると競技車両特有のオーラが伝わってくる。ドアやウインドウなど、ボディは徹底した軽量化が図られている。インテリアも同様で、カーペットもアンダーコートもない鉄板むき出しの状態でドアの内張りはカーボン製、市販車と共通するのは、ダッシュパネルと3ペダルくらいのものだ。フルバケットシートは1脚のみで室内にはロールケージがはりめぐらされ、その隙間に制御系コンピューターなどが配置されている。エンジン本体は市販車と同じものだが、補機類は大きく異なる。組み合わせるトランスミッションも6速のドグミッションだ。クルマ好きならば誰しも、自分の手で運転してみたい、そんな衝動に駆られるはずだ。
購入はカレラカップ参戦者のみ



では、カップカーを購入するにはどうすればいいのか。一般的には担当ディーラーに相談することから始まるが、実際にはPCCJ(ポルシェカレラカップジャパン)事務局へ申し込みの上、選考に通過して初めて購入可能となる。ちなみにカップカーは車両単体での販売は行っていない。ガレージに並べるためのコレクションとしての購入は禁止されており、シーズンフル参戦が義務づけられている。車両価格は約3700万円と意外にリーズナブルなもの(市販版のGT3 RSは3378万円)。もちろんこれにエントリフィーやタイヤ代、メンテンス費用などが必要にはなる。
厳密なイコールコンディション



各ドライバーによって変更可能な箇所はアラインメント(キャンバーや車高など)とリヤウイングの角度くらい。ダンパーも減衰力調整式ではない。また、マシンだけでなくタイヤもワンメイクである。グローバルシリーズパートナーであるミシュランから提供され、路面状況によりスリックタイヤとレインタイヤを使い分ける。タイヤマネジメント戦略は、レースの勝敗を分ける非常に重要な要素だ。なおタイヤに予熱を加えることや化学的な処理を施すこと、機械的な加工をすることなどはレギュレーションによって一切認められていない。実力伯仲のレース展開は、参加しているドライバーも、そして観客も楽しめるものだ。カップカーの購入受け付けは基本的に年に一度、6月頃に行われるようなので、参戦を目論む方は来年に向けて準備を始めたほうが良さそうだ。
REPORT/藤野太一(Taichi FUJINO)
PHOTO/田村 弥(Wataru TAMURA)
SPECIFICATIONS
MY2025 Porsche 911 GT3 Cup(Type992)
全長:4585mm
全幅(フロントアクスル):1920mm
全幅(リヤアクスル):1902mm
ホイールベース:2459mm
車両最低重量:1260kg
エンジン:水平対向6気筒自然吸気
総排気量:3996cc
ストローク×ボア:81.5×102mm
最高出力:375kW(510PS)/8400rpm
最大トルク:470Nm/6150rpm
最高許容回転数:8750rpm
トランンスミッション:6速シーケンシャルドグミッション
車両本体価格:3702万500円(税込)
【取材協力】
コックス
〒259-0157
神奈川県足柄郡中井町405
TEL 0465-81-3034