連載

自動車エンブレム秘話

BENTLEY

1919年、伝説が誕生

ベントレーのエンブレムは、創業当時から一貫して中央のBと両翼という構成を守っている。初代のデザインを手がけたのは、創業者ウォルター・オーウェン・ベントレーの友人で、自動車画家であったフレデリック・ゴードン=クロスビー。中央にブランドの頭文字「B」を置き、その両脇に“動きの高揚感”を表す一対の翼をあしらった。この翼には、戦闘機用エンジンの設計者でもあったベントレーの経歴に対する敬意も込められているとも言われる。なお、羽根の本数を左右非対称にすることで、個性と偽造防止を両立させたという。

ロールス・ロイスによる買収からVWの傘下へ

VW傘下で登場したコンチネンタルGT。
VW傘下で登場したコンチネンタルGT。

ベントレーがロールス・ロイスに買収された1931年、エンブレムは最初の変更を受けて左右対称のデザインに変わった。左右の翼は直線的にデザインされ、「B」の文字もシンプルな形状に変更された。このエンブレムは、1996年に2度目のリニューアルを受けるまで60年以上の長きにわたって使われ続けた。

1996年には3代目に進化。クロスビー時代のニュアンスを取り入れた、曲線的な翼と装飾的な「B」が復活する。

1998年、ベントレーはフォルクスワーゲン・グループの傘下に入り、2002年のコンチネンタルGTの登場とともにエンブレムもアップデート。初代同様の非対称デザイン(左10枚、右11枚)が復活し、クラシックとモダンが融合した新しいウイングド Bが誕生した。

5代目はよりシャープでモダンに

2025年7月1日、ベントレーは次世代のコンセプトカーとともに5代目となるエンブレムを発表した。新デザインは、翼の内側に描かれるダイヤモンドパターンや「B」の“センタージュエル”といった象徴的要素を継承しつつ、よりシャープで力強いラインへと進化している。

従来は柔らかな曲線で表現された翼は、ハヤブサを思わせる鋭角的なフォルムに変わった。Bの下に描かれていた羽根は廃止され、視覚的に洗練された印象を与えている。また、センタージュエルは単独でもブランドアイコンとして使用できるよう再設計され、高級時計を思わせるディテールが施されている。

新しいウイングドBが描く未来

「ラグジュアリーブランドの本質は、その歴史が紡いだ物語にあります。そしてエンブレムは、その物語にサインする署名です。新しい“ウイングドB”はシンプルでシャープ、そして力強く — ベントレーの未来を象徴する存在です」と、エンブレム変更プロジェクトを率いたベントレーのロビン・ペイジ デザインディレクターは語っている。

エンブレムは、ブランドの象徴としてクルマの最も目立つ場所に掲げられる。ベントレーの場合、それは1世紀を超えるクラフツマンシップと革新の証であり、未来のベントレー像を予告するデザイン哲学のシンボルでもある。2025年7月8日には、この新しいエンブレムを冠したフル電動のコンセプトカー「EXP 15」がデビューした。新しいウイングドBとともに、BEVを含む新世代のベントレーが今後どのように展開されていくのか。その行方から目が離せない。

ブランドの誕生110周年を記念して2019年に発表された特別限定モデルのCentodieci(チェントディエチ) "。後ろには1990年代前半に短期間だけ存在した"EB110"が見える。"

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150グラムものスターリングシルバーを贅沢に使用。精緻なエンボス加工、艶やかなエナメル仕上げ、そして立体的な造形によって、ブガッティのエンブレムは工芸品のような輝きを放っている。マカロンと呼ばれるこの楕円形バッジは、ブランド創設以来、ブガッティのラグジュアリー、デザイン性、クラフツマンシップ、唯一無二の存在感を象徴してきた。単なるロゴではなく、クルマそのものの価値を語る“ジュエリー”である。(ブガッティのプレスリリースより)

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